第8話

 ──そして、ちょうどその時。

 勢いよく扉が開くと。

「ソラ!!」

 叫ぶように言ったのはララだった。すぐ後ろにアレクとレインの姿もある。


「あらあら、予想以上に早かったのね。……フフ、ネオちゃん。早く行ってあげなさい」


 私の隣にいる、ネオちゃんの姿を確認したとたん、ぶわり、とせきを切ったように泣き出したララの元へ、ネオちゃんが駆け寄る。

「ララ……良かった、無事で……」

「ネオこそ……」

 あらっ、ネオちゃんたら、人目もはばからず、ララのことを抱きしめたわ。



         ◇


 

 ──ネオちゃんは私達と旅を共にしていた時、最愛の相手であるララに起こる、最悪の未来を知っていたの。

 それは彼が冒険者でありながら、未来を予知する能力を持っているから。

 彼いわくその予知能力は限定的で、彼がなにかを行動すると、それによって引き起こされる未来が頭の中に描かれるんですって。


 アニメの中ではネオちゃんは最後まで私達と共に旅を続けていた。

 ──必ず、一番前を歩いたわ。

 それは、危険な状況になった時、身体能力が優れた自分が矢面に立つ為。張り巡らされた渦に対しての予知能力も働き、万全の状況だったはず。

 それなのに、アニメの中では悲劇が起きてしまった。


「ソラが助言してくれたから、あの未来を変えることができたんだ。ありがとう」

 そう、ララの死を絶対に現実のものにさせたくなかった私は、旅の始まりでネオちゃんにこう伝えたの。

『必ず、一番後ろを歩いて。皆の行動を、感情を敏感に感じ取って、それを踏まえて動きを変えるの』


「一番後ろを歩いたとたん、“ララの死”という未来が飛び込んできたんだ。……俺の脳裏にこびりついて離れないほど、ショックなものだった。結局、ちょっとやそっとの行動の変化ではあの未来を変えることは出来なくて。だって、あの未来はララが俺を渦に襲われそうになったのを、助けようとしたから起きてしまったこと。ならば、自分が襲われる状況を無くせばいい。一か八か渦に身を投げる瞬間、あの予知が消えてなくなったことを確認して、心底ホッとしたよ」

「渦といえば……さっきの強大な力を持つ渦だけど、ソラが飲まれた後、突然きれいさっぱり消えたんだ」

 ララが不思議そうに言う。


「唐突に、渦の魔法を掛ける意味を見失ってしまったんだよ」


 そう答えたのは、アレクだった。

 

 

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