第4話 奏多、注目される
シャルルたちと別れた俺たちは、委員会が用意したモニターに目を向けていた。
『さああああ!! やってまいりました。全世界の探検家の皆さん! 見ていますか~! とうとう始まりますよ~!』
今回のイベントは実況と解説つきで、全世界に配信される。
配信開始から十分ほどで同接は一千万人を突破していた。
『今回の実況を務めます。田中と申します。宜しくお願いいたします』
実況の田中が落ち着いた声で自己紹介をする。
『そして解説にはダンジョン委員会の本部長を務めている伊原さんをお呼びしております。伊原さん、宜しくお願いいたします』
『はい、宜しくお願いいたします』
伊原本部長自らが解説するとは……。
忙しいのによくやるな。
『開始まで少し準備がありますので、注目選手を数名紹介したいと思います』
モニターに数名の探検家が映し出される。
『一人目はこの方、大ベテランのお姉さん探検家の真奈美さん! 大きな鎌で数々のモンスターを倒してきました! そんな彼女のことを『悪魔の執行人』と呼ぶ! ちなみに年齢は非公開です!』
真奈美さんの顔が異名と共にでかでかとモニターに映し出される。
『そして、真奈美さんの活動は探検家だけではないんです。なんと最近は写真集を発売するほどの人気っぷりなんです! いやぁ凄まじい美貌ですね~!』
黒い水着姿で横たわる真奈美さんが映し出される。
胸にしか目がいかない。
『強さと美しさを兼ね備えた彼女を止められる者はいるんでしょうか! 要注目です!』
"うおおおおおおおおおお!!"
"えっど!!!!"
"これは買いですわ!!!"
"ポチリました"
コメントが盛り上がりをみせる。やっぱり真奈美さんは大人気だ。
「なんだか恥ずかしいわ……」
頬にを手に当て、恥ずかしそうにする真奈美さん。
少し顔が赤くなっている。
「……大きい」
芽衣が虚ろな目でボソッと呟くのを俺は見逃さなかった。
『さぁ、お次はこの方、シャルル・アンデルセンさん! 去年高ランクモンスターの討伐数ナンバー1を誇っています』
さっきの人だ、やっぱり凄い人だったんだな……。
『狙った獲物は逃さない! そんな彼女のことを『毒舌の祈り手』と呼ぶ!』
誰が考えたのか分からないが、ものすごくピッタリの異名だ……。
『お次は、霧切美鈴! SSランクの探検家だ! モンスターを倒した後に罵ることで有名です。そんな彼女のことを『煽りの天才』と呼ぶ!』
"美鈴ちゃんに罵られたい"
"モンスターが羨ましい……"
"美鈴ちゃんしか勝たん!"
"頑張れー!"
『そして、お次はイケメン探検家のドレイク!! 彼の人気っぷりはとどまることを知りません! 最近はアイドル活動に力を入れているようです。さすが『美男子探検家』と言われているだけはあります! いったい何人の女性たちを虜にしてきたんでしょうか!』
ドレイクの決め顔がモニターに表示される。
さっき百万回見た顔だ。
"きゃあああああああああ"
"ドレイク様~!"
"やっぱりかっこいい~!"
"かっこよすぎてやばい!!"
"ドレイク様が優勝するに決まってるわ!"
ドレイクのファンだろうか。
女性たちによるコメントが多く流れ始める。
「むー!」
「私、あの人嫌い……です!」
芽衣と暗女が鬼のような形相でモニターを見つめていた。
怖い怖い……。
『そして、最後はこの方……探検家に現れた超新星。北村奏多あああああああああああああああ!!!』
"うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!"
"俺らの奏多!"
"ダンジョン委員会タヒねええええええええええええええええ"
"優勝候補です!!"
"やっぱりこの人がいないと始まらないよな!!"
俺の名前が叫ばれると同時にコメントが盛り上がる。
『ワイバーンをソロで討伐したことで有名になったこの方は、数時間でチャンネル登録者数を一億人を突破。まさしく今一番世間をざわつかせている探検家です! 涼しい顔でモンスターを屠るその姿。『無敵』と呼ぶにふさわしいでしょう!』
「奏多さん、凄いです! 注目選手に紹介されてますよ!」
「さすが、奏多さん!」
芽衣と暗女が微笑む。
毎日配信してるからこういうのには慣れていると思っていたんだが、いざ注目されるととても恥ずかしいな……。周りの視線が熱い。
『注目探検家を紹介し終えたところで、さっそく第一種目を開始いたします!』
『田中さん、一人重要な方を忘れていますよ』
『あれ……? でももう注目選手の紹介はし終わったはずですが……』
トラブルだろうか……。田中さんがスタッフの人とこそこそ話をしている。
『私の娘を忘れてるぞ!!!』
『えぇ……!?』
『どうして俺の娘が紹介されてないんだ?』
伊原さんが田中さんに詰め寄る。
『えぇと、この注目選手はSNSや探検家による投票によって決められて――』
『そんなのは知らん! 芽衣を紹介しろ!』
放送事故だ……。
『そ、それでは、第一種目の準備が整いましたので、始めていきましょうか』
『俺の娘をしょ――』
伊原さんがカメラに向かって勢いよく喋ろうとしたその時、配信との接続が切れ、モニターにと象とお花畑の画像が映し出された。
"親バカすぎるwwww"
"子離れしろ!!"
"放送事故で草"
"これ全世界に配信されてるんだよな……"
"OMG"
"全世界に醜態を晒してて笑うわ"
"日本の恥"
コメントが勢いよく流れ始める。
恐らくさっきの様子も切り抜かれるんだろうな……。
「もう……お父さんったら……」
芽衣も呆れ果てている。こんな親を持つと苦労するだろうなぁ。
俺はそんなことを思いながら呆れ顔を浮かべるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます