第四章 イベントに参加する!

第1話 奏多、イベントに参加する

「なんだこんな時間に……」


 土曜日の早朝――

 スマホの着信音で目が覚めた。


 着信音の主をたしかず通話ボタンを押す。

 こんな朝っぱらから電話をかけてくるのはあいつしかいない。


「うい~」

『よっ! おはよーさん』


 ほら、やっぱり高橋だ。

 相変わらずの陽気な声だ。


「こんな朝っぱらからどうしたんだ?」

『お前、メール見てないの?』

「メール?」


 俺は意識がおぼろげな中、メールアプリをひらく。

 

『【重要】探検家一同様へ』


 という題名でダンジョン委員会からメールが届いていた。

 中身はダンジョン委員会が主催するイベントについて長々と説明が書かれていた。


「なんだこれ……「ダンジョン競技大会」……?」

『名前のとおりだよ。探検家みんなで競技大会をしようってさ!』

「ほー………………いやなんで?」

『詳しいことは分からないが、探検家同士の交流が少ないことを委員会は問題視してるんじゃないかって、色々言われてる。本当の理由は分からないけどな』


 交流をうながすためっていうのは分かるが、

 別にわざわざ大会なんてしなくても……学生じゃあるまいし……。ダンジョン委員会は何を考えてるんだろう。もしかして何か狙いが……?


『なっ? 面白そうだろ。もちろんでるよな!』

「いや、出ないけど……」

『はっ!? もし出場して優勝すれば、もっと有名になれるかもしれないんだぞ?』

「いや、別にいいよ。元々有名になりたかったわけじゃないし。今で十分」

『優勝すれば金一封と温泉旅行付きだぞ!』

「別にいらない」

『おいおい、お前相変わらずノリ悪いな……そんなんでいいのか? 最近、ダンジョンに潜ってばっかりで代り映えのない配信ばっかりしてるだろ』


 ギクッ……。こいつ、俺の配信観てるのかよ……。


『たまには違う配信しないと視聴者が離れていくぞ~』


 高橋の言う事も一理ある。最近はとくにやることがないのでダンジョンに潜ってはモンスターを屠る毎日。

 同接が落ちているわけじゃないが、俺が視聴者なら同じ配信ばかり続けられたら飽きちゃうかもな……。


『な? こういう機会滅多にないし、もちろん配信はして大丈夫だってさ』

「うーん」

『どうせ暇なんだろ? こういうイベントに積極的に顔を出すことも大事だぞ。それに、お前、友達少ないだろ』

「何を言う。俺だって知り合いはたくさんいるぞ」

『誰だよ』

「芽衣ちゃんに暗女ちゃんに、あと……」


 やばい。全然出てこない。


『それだけか?』

「別に数は重要じゃないだろ!」

『いやまぁ、悪いとは言ってないけどさ。少しは色んな人と交流することによって刺激になるんじゃないのか?』

「まぁな……」

『今回のイベントには多くの探検家が参加表明を出してる。このビッグウェーブに乗らないとお前、置いてかれるぞ?』


 たしかにな……色んな探検家とパイプを持つことは大事だ。

 師匠はエレノアさんや伊原本部長など、色んな方面とのつながりをもっていた。少しは見習うべきかもな……。

 しょうがない。今回は参加するか。


「分かったよ。やるよ」

『よーし! 決まりだ! それなら仲間を集めないとな』

「俺ら二人だけで出るんじゃないのか?」

『んなわけないだろ! 待ってろ! 今集めてくるから』

「いまから? どういうこ――」


 プツ。

 言いかけて通話が切れる。


「あいつに知り合いっていたかな……」


 すると数分後にまた着信。


『お待たせ! 集めてきたぞ』

「随分早かったじゃないか、で、誰誘ったんだ?」

『芽衣ちゃんと暗女ちゃん』

「はっ!? お前二人と知り合いだったのか?」

『いいや。ちょうど配信してたから、とりあえずお前の名前出したら、すぐオーケーしてくれたぞ』

「余計なこと言ってないよな?」

『言ってない』


 まぁ、いいか。


『ルールには「二人~四人のチーム」を作って参加って書いてあったんだけど、せっかくのお祭りだからな。知ってる人がいたほうが楽しめるだろ?』


 高橋なりに気を使ってくれたんだろうが、なんか二人を巻き込むみたいになってしまって申し訳ない。


『あとほかにだれかいるか?』

「他か……」


 俺はうーんと腕を組みながら考える。


「あっ、いるかも……」

『おっ! マジで? どんな人? 強いのか?』

「かなり強い」

『おー! じゃあその人は頼むわ』

「それはいいけど、断られても文句言うなよ」

『分かってるよ』


 あの人が来てくれたら戦力になるのは間違いない。


「そういえば、競技は何をするんだ?」

『メールには特に書いてないな……まぁ大会って言うぐらいだからな……ソーラン節とか?』

「それ運動会でやるやつだろ……懐かしいな」


 みんなでソーラン節を踊る様を頭の中で思い描く……。

 カオスだ。


『まぁ当日になれば分かるだろ! お楽しみってやつだよ』


 高橋は陽気に笑った。


「えーっと、当日は五日後か、結構急だな」

『委員会からこういったイベントを開くのっていままで初めてらしいからな』


 まぁ、何か意図があってこういうイベントを開いたと思うんだけど……。

 委員会の意図は分からない。


「お前、伊原さんから何か聞かされてたりしないの?」

「いや、知らんな……」


 最近は委員会の仕事で忙しいらしいし会ってすらいない。


『とりあえずせっかくのイベントだ。思いっきり楽しもうぜ』

「おう」

『それじゃあそろそろ俺は用事があるから切るわ。ちゃんともう一人誘っておけよ?』

「分かったって」

『じゃあな~!』


 プツ――

 高橋との長い通話が終わった。

 相変わらず騒々しい奴だった。


「さてと……あの人来てくれるかな……」


 俺は、さっそくとある人にメッセージを送信した。

 来てくれることを祈ろう。

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