第6話

 今日、信じられないことが起きた。


 山Bが白衣を着て回診にやって来た。

 回診に来るときは看護婦さんや若いお医者さんを引き連れて来るのだけど、山Bは一人だった。


 ドラマで見たまんまで、すごいイケメンだった。

 私のベッドの横にパイプ椅子を置いて座った。

 いい匂いがした。


「調子どう?」

「いいです!」

「よかった。いつも応援ありがとう」

「いえ。そんな。こちらこそ、ありがとうございます!いつも励まされてます」

「僕の方こそ…いつもファンの子たちからは勇気をもらってるんだよ」

「山Bさんは私たちの希望です」

 彼はにっこりした。イケメンなだけでなく、性格もいいのか。本当に素晴らしい人だ。


「山Bさん…今日はお仕事ですか?」

「え?今日はプライベートで来たんだよ」

「わざわざありがとうございます。お医者さんのふりまでして」

「ほら、面会時間が決まってるからね。空いてるうちに来たくて」

「あ、そうですか。ありがとうございます!」


 現実とは思えないほどのイケメンぶりだった。

 いいなぁ…。

 

「写真撮っていいですか?」

「うん。これでいいかな」

 彼はピースをした。

「待ち受けにします!夢みたい。もう、いつ死んでもいいです」

「ダメだよ。来週新作映画公開するから、それも絶対見てね」

「はい!」

「写真、ツイッターにあげてもいいですか?」

「恥ずかしいけど…どうしてもっていうなら」

「ありがとうございます!」


 山Bは私の頭をなでてくれた。


「今までよく頑張ったね」

「はい」

「駒子さんは、強い人ですね」

「いいえ。私弱いんです。強がっているだけで。今度生まれ変わったら、山Bさんの彼女になりたい」

「はは。本当にいいの?今度生まれ変わった時は、すごい不細工かもよ」

「絶対そんなことないですよ!」

「時間があったらまた来るね…ごめんね。具合が悪いところに」

「いいえ。とんでもない」

 

 山Bがいた場所は香水のいい匂いがした。しばらく匂いが漂っていた。私はにやにやしながらツイートをした。


『思いがけない人がお見舞いに来てくれた』


 そして写真をツイートした。


 みんな臍を噛んで羨ましがるだろう。私はほくほくしながら眠りについた。

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