子供達と神々の神楽 ～月の章～

子供同士の戦い

　　　　ガコン　

　　　ガコン　

　　ガコン

　遠（とお）くから近（ちか）付（づ）いて来（く）る臣器（おみき）達（たち）を、ソニックプテラの上（うえ）で目（もく）視（し）した緋（ひ）衣（い）は、見（けん）物（ぶつ）人（にん）の中（なか）に薫（かおる）が居（い）るのを確（かく）認（にん）すると、もう一（いち）度（ど）臣器（おみき）達（たち）に目（め）を向（む）ける。

（話（はな）しに由（よ）れば、結（けっ）界（かい）を張（は）られてしまうと人（にん）間（げん）は結（けっ）界（かい）の外（そと）に出（だ）されると聞（き）いています。まずは薫（かおる）君（くん）に……）

　そう考（かんが）えながら、緋（ひ）衣（い）はソニックプテラから離（はな）れ薫（かおる）に向（む）かって飛（と）んで行（い）く。

　緋（ひ）衣（い）が薫（かおる）の方（ほう）に向（む）かって来（き）たので、薫（かおる）を含（ふく）めた薫（かおる）の近（ちか）くに居（い）た人（ひと）々（びと）は、逃（に）げ出（だ）し始（はじ）めた。

（「不味（まず）い、薫（かおる）よ私（わたし）が少（すこ）しでも……？」）

　薫（かおる）にそう念（ねん）話（わ）を送（おく）ったオモイカネだが、姿（すがた）を現（あら）わす事（こと）が出（で）来（き）ない。

　更（さら）にオモイカネは気（き）付（づ）いていないが、念（ねん）話（わ）も薫（かおる）には通（つう）じていなかった。

（これは如何（どう）なっている？）

　オモイカネがそう考（かんが）えてる一（いっ）方（ぽう）で、薫（かおる）は緋（ひ）衣（い）の顔（かお）を確（かく）認（にん）しないまま、背（せ）を向（む）けて緋（ひ）衣（い）から逃（に）げている。

　しかし緋（ひ）衣（い）の飛（ひ）行（こう）速（そく）度（ど）のほうが速（はや）く、薫（かおる）は緋（ひ）衣（い）に捕（つか）まってしまう。

「わっ！　放（はな）して……」

　暴（あば）れ出（だ）しそうな薫（かおる）の耳（みみ）元（もと）で、緋（ひ）衣（い）は囁（ささや）く。

「私（わたし）ですよ薫（かおる）君（くん）」

　そう言（い）って緋（ひ）衣（い）は薫（かおる）を放（はな）す。

（！）

　薫（かおる）は、緋（ひ）衣（い）の顔（かお）を確（かく）認（にん）して驚（おどろ）いた後（あと）言（い）う。

「ひ……――」

「喋（しゃべ）らないで下（くだ）さい。すみませんが少（すこ）し待（ま）っててもらいますよ」

　あ前（ぜん）としている薫（かおる）を他所（よそ）に、緋（ひ）衣（い）はそう言（い）ってソニックプテラの所（ところ）へ戻（もど）って行（い）く。

　ソニックプテラの所（ところ）へ戻（もど）った緋（ひ）衣（い）の目（め）の前（まえ）には、臣器（おみき）達（たち）が立（た）ちはだかっていた。

　臣（おみ）器（き）の中（なか）で緋（ひ）衣（い）の姿（すがた）を見（み）た葉（よう）司（じ）は、驚（おどろ）いて声（こえ）を上（あ）げる。

「お前（まえ）！」

「この前（まえ）は、恥（は）ずかしい所（とこ）をお見（み）せして申（もう）し訳（わけ）ありません」

　葉（よう）司（じ）と緋（ひ）衣（い）の会（かい）話（わ）を、太（たい）耀（よう）は不（ふ）思（し）議（ぎ）に思（おも）い葉（よう）司（じ）に聞（き）く。

「二（ふ）人（たり）共（とも）、知（し）り合（あ）いか？」

　すると北（ほく）斗（と）が、通（つう）信（しん）機（き）能（のう）を使（つか）って太（たい）耀（よう）に説（せつ）明（めい）をする。

「薫（かおる）君（くん）の従兄姉（いとこ）だよ」

　太（たい）耀（よう）へのこの説（せつ）明（めい）の最（さい）中（ちゅう）、辺（あた）り一（いっ）帯（たい）に鎮（しずめ）守（まもり）の結（けっ）界（かい）が張（は）られた。

「お待（ま）たせ、皆（みんな）」

　鎮（しずめ）守（まもり）の結（けっ）界（かい）が張（は）られ、半（はん）径（けい）50メートル四（し）方（ほう）に自（じ）分（ぶん）達（たち）以（い）外（がい）居（い）無（な）い事（こと）を確（かく）認（にん）した葉（よう）司（じ）は、そう言（い）ってやって来（き）た汗衫（かざみ）姿（すがた）の恵（え）理（り）花（か）に説（せつ）明（めい）をする。

「恵（え）理（り）花（か）、あいつは薫（かおる）の従兄姉（いとこ）だ」

　葉（よう）司（じ）の説（せつ）明（めい）に恵（え）理（り）花（か）は驚（おどろ）き、緋（ひ）衣（い）は前（まえ）に小（こ）太（た）郎（ろう）が名（な）前（まえ）を出（だ）していた事（こと）を思（おも）い出（だ）す。

「どうして、宮（みや）本（もと）君（くん）の従兄姉（いとこ）がこんな事（こと）を？」

　恵（え）理（り）花（か）がそう緋（ひ）衣（い）に聞（き）くと、緋（ひ）衣（い）は言（い）う……

「それは……」

　いや……言（い）おうとした緋（ひ）衣（い）だが、ふっと疑（ぎ）問（もん）が浮（う）かぶ。

（フォルテス星（せい）人（じん）は何（なん）で、恵（え）理（り）花（か）さんの事（こと）を知（し）らなかったのでしょう？　光（ひか）る女（おんな）の子（こ）の話（はな）しは私（わたし）も聞（き）いた事（こと）有（あ）りますし、確（たし）か葉（よう）司（じ）君（くん）達（たち）とは幼（おさな）馴（な）染（じ）みのはずなので、気（き）付（づ）かないとは……）

「おい、黙（だま）ってないで何（なん）か言（い）えよ！」

　葉（よう）司（じ）の言（こと）葉（ば）で意（い）識（しき）を葉（よう）司（じ）達（たち）に戻（もど）した緋（ひ）衣（い）は、疑（ぎ）問（もん）から考（かんが）えを逸（そ）らし思（おも）う。

（細（こま）かい事（こと）は後（あと）にしましょう、今（いま）は……）

「基（き）本（ほん）、臨（りん）機（き）応（おう）変（へん）にソニックプテラは龍（リュウ）蛇（ジャ）丸（マル）を機（き）動（どう）力（りょく）で翻（ほん）弄（ろう）。ライトニングブラキオは狼（ロウ）王（オウ）丸（マル）をパワーで押（お）して下（くだ）さい。ガイアステゴは鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）を牽（けん）制（せい）しつつ、プテラとブラキオのフォローを！」

　　ガコン　ガコン　ガコン

　緋（ひ）衣（い）の言（こと）葉（ば）に従（したが）い、ロボット達（たち）は臣器（おみき）達（たち）に突（つ）っ込（こ）んで来（き）た。

　それと同（どう）時（じ）に、緋（ひ）衣（い）は結（けっ）界（かい）の外（そと）に移（い）動（どう）した薫（かおる）を探（さが）す為（ため）に飛（と）び回（まわ）る。

「足（あし）止（ど）めは頼（たの）みましたよ」

「待（ま）って！」

　そう言（い）って、その場（ば）を離（はな）れる緋（ひ）衣（い）を恵（え）理（り）花（か）は追（お）い掛（か）けて行（い）く。

　一（いっ）方（ぽう）北（ほく）斗（と）達（たち）は、緋（ひ）衣（い）のロボットと戦（せん）闘（とう）に入（はい）っていた。

「おい太（たい）耀（よう）、この赤（あか）いのを光（ひか）りの力（ちから）でどうにかしろ！」

　ソニックプテラの機（き）動（どう）力（りょく）は高（たか）く、葉（よう）司（じ）と龍（リュウ）蛇（ジャ）丸（マル）では動（うご）きを捉（とら）えきれない。

「そんな近（ちか）くに居（い）たら、巻（ま）き添（ぞ）えを喰（く）らっうわっ！」

　　ドガ　ドガ　ドガ

　　ドガッン

　意（い）識（しき）が葉（よう）司（じ）の方（ほう）に向（む）いていた太（たい）耀（よう）は、ガイアステゴの背（せ）中（なか）の骨（こつ）質（しつ）の板（いた）を模（も）した飛（と）び道（どう）具（ぐ）をモロに受（う）け、鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）を墜（つい）落（らく）させてしまう。

「太（たい）耀（よう）君（くん）」

　北（ほく）斗（と）はそんな太（たい）耀（よう）を、ライトニングブラキオからの追（つい）撃（げき）から防（ふせ）ぐ為（ため）、鳳（ホウ）皇（オウ）丸（マル）とライトニングブラキオの間（あいだ）に、狼（ロウ）王（オウ）丸（マル）の力（ちから）で作（つく）った金（きん）属（ぞく）製（せい）のシールドを生（せい）成（せい）するが、そのシールドをライトニングブラキオは自（じ）分（ぶん）の首（くび）を鉄（てっ）球（きゅう）代（が）わりにして破（は）壊（かい）する。

　　ズガゴン

「狼（ロウ）王（オウ）丸（マル）、艮（こん）比（ぴ）良（ら）の刀（かたな）！」

　それを見（み）た北（ほく）斗（と）は鬼（おに）丸（まる）を斬（き）った刀（かたな）を生（せい）成（せい）し、壊（こわ）されたシールドを消（け）し去（さ）って、狼（ロウ）王（オウ）丸（マル）は艮（こん）比（ぴ）良（ら）の刀（かたな）を咥（くわ）え、ライトニングブラキオに向（む）かって振（ふ）り斬（き）ろうとするが……

　　ガチャゴン

　しかし振（ふ）り始（はじ）めをガイアステゴに受（う）け止（と）められ、狼（ロウ）王（オウ）丸（マル）はその隙（すき）に横（よこ）から突（つ）っ込（こ）んで来（き）たソニックプテラに突（つ）き飛（と）ばされる。

　　ドガシャン

「うわ！」

　北（ほく）斗（と）がダメージの衝（しょう）撃（げき）でそう叫（さけ）ぶと、ライトニングブラキオの上（じょう）空（くう）で葉（よう）司（じ）が言（い）う。

「転（てん）神（しん）、黄（よ）泉（もつ）黄（こう）剣（けん）！」

　葉（よう）司（じ）はソニックプテラが離（はな）れた為（ため）、ライトニングブラキオの上（じょう）空（くう）で龍（リュウ）蛇（ジャ）丸（マル）を人（ひと）型（がた）に変（か）えると、上（うえ）から斬（き）りかかろうとした……

「こんにゃっ、うわっ！」

　　ドガ　ドガ　ドガ　

　　ドガシャン

　しかし、空（くう）中（ちゅう）で動（うご）きが取（と）れずガイアステゴに撃（う）ち落（お）とされてしまう。

　★★★★

　一（いっ）方（ぽう）で恵（え）理（り）花（か）は橋（はし）の下（した）、鎮（しずめ）守（まもり）の結（けっ）界（かい）越（ご）しの薫（かおる）の目（め）の前（まえ）で、緋（ひ）衣（い）と対（たい）峙（じ）していた。

　結（けっ）界（かい）の外（そと）側（がわ）の様（よう）子（す）は、薫（かおる）の周（まわ）り50メートル程（ほど）は人（ひと）気（け）が無（な）い。

「緋（ひ）衣（い）さん、コ（・）レ（・）は一（いっ）体（たい）どう言（い）う事（こと）です？」

　薫（かおる）の質（しつ）問（もん）に、緋（ひ）衣（い）は恵（え）理（り）花（か）に目（め）を向（む）けたまま答（こた）える。

「その前（まえ）に薫（かおる）君（くん）、私（わたし）の質（しつ）問（もん）に答（こた）えてもらえます？」

「何（なん）でしょうか？」

　そう聞（き）き返（かえ）した薫（かおる）に緋（ひ）衣（い）は言（い）う。

「恵（え）理（り）花（か）さんを見（み）て驚（おどろ）かないと言（い）う事（こと）は、貴方（あなた）もしかして、葉（よう）司（じ）君（くん）達（たち）があのロボットモドキに乗（の）っている事（こと）を知（し）ってましたね？」

　そう言（い）われた薫（かおる）は、少（すこ）し申（もう）し訳（わけ）無（な）さそうに返（へん）事（じ）をする。

「はい……」

　緋（ひ）衣（い）は薫（かおる）の言（こと）葉（ば）を受（う）けて悔（く）やしさが沸（わ）く。

　自（じ）分（ぶん）が欲（ほ）っしたモノを薫（かおる）は持（も）っている。

　そして自（じ）分（ぶん）に隠（かく）していた。

　多（た）分（ぶん）理（り）由（ゆう）は有（あ）るのだろうが、やはり自（じ）分（ぶん）は蚊（か）帳（や）の外（そと）だったと確（かく）認（にん）した緋（ひ）衣（い）は、少（すこ）し考（かんが）えてから薫（かおる）と恵（え）理（り）花（か）に語（かた）り出（だ）す。

「私（わたし）はフォルテス星（せい）人（じん）と言（い）う宇（う）宙（ちゅう）人（じん）から、貴方（あなた）達（たち）がダマされていると聞（き）いたんです。ダマされているから子（こ）供（ども）達（たち）を説（せっ）得（とく）してくれと……」

　それを聞（き）いた恵（え）理（り）花（か）が驚（おどろ）いて反（はん）論（ろん）する。

「そんなはずは有（あ）りません。私（わたし）達（たち）はスセリと言（い）う女（め）神（がみ）にアラハバキの封（ふう）印（いん）を頼（たの）まれたんです」

「そうですよ緋（ひ）衣（い）さん。そのフォルテス星（せい）人（じん）と言（い）う奴（やつ）は、今（いま）どこに？」

　薫（かおる）もそう続（つづ）け、緋（ひ）衣（い）は言（い）う。

「今（いま）、アラハバキと戦（たたか）っているはずです！」

　緋（ひ）衣（い）は恵（え）理（り）花（か）と薫（かおる）の言（こと）葉（ば）が信（しん）じられず、力（ちから）強（づよ）くそう言（い）った。

　いや、信（しん）じたくないと言（い）った方（ほう）が正（ただ）しいのかもしれない……

　確（たし）かに考（かんが）え直（なお）すと、フォルテス星（せい）人（じん）にはおかしい所（ところ）が有（あ）る気（き）がすると緋（ひ）衣（い）は思（おも）う。

　それでも緋（ひ）衣（い）は、フォルテス星（せい）人（じん）を否（ひ）定（てい）したくは無（な）かった。

　話（はな）しに乗（の）った自（じ）分（ぶん）の為（ため）にも……

「私（わたし）がダマされていると言（い）うなら、その証（しょう）拠（こ）を見（み）せて下（くだ）さい！」

　少（すこ）し強（つよ）めにそう言（い）った緋（ひ）衣（い）の言（こと）葉（ば）に、薫（かおる）も恵（え）理（り）花（か）も悩（なや）む。

　流石（さすが）に自（じ）分（ぶん）達（たち）が、アラハバキの復（ふっ）活（かつ）する場（ば）面（めん）に居（い）たとは言（い）えない。

　壊（こわ）れた遮（しゃ）光（こう）器（き）土（ど）偶（ぐう）の事（こと）も有（あ）るし、誰（だれ）かが犬（いぬ）を止（と）められていればアラハバキは復（ふっ）活（かつ）しなかったからだ。

　悩（なや）んでいる二（ふ）人（たり）に緋（ひ）衣（い）は言（い）う。

「私（わたし）は貴方（あなた）達（たち）の言（こと）葉（ば）は信（しん）じませんよ！」

　そう言（い）ってその場（ば）を飛（と）び去（さ）る緋（ひ）衣（い）を見（み）ながら、恵（え）理（り）花（か）はスセリに薫（かおる）はオモイカネに尋（たず）ねる。

「スセリ、貴女（あなた）が説（せつ）明（めい）したら……」

「この姿（すがた）を解（と）くと結（けっ）界（かい）は消（き）えてしまう。声（こえ）だけの説（せっ）得（とく）で彼（かの）女（じょ）は納（なっ）得（とく）はしないでしょう」

　スセリが恵（え）理（り）花（か）にそう答（こた）える一（いっ）方（ぽう）、薫（かおる）の方（ほう）は異（い）変（へん）に気（き）付（づ）く。

「オモイカネ、私（わたし）はこう言（い）う時（とき）どうしたら……　オモイカネ？」

　薫（かおる）は、何（なん）度（ど）呼（よ）び掛（か）けても反（はん）応（のう）の無（な）いオモイカネを不（ふ）審（しん）に思（おも）い、スセリに少（すこ）し驚（おどろ）いた様（よう）子（す）て言（い）う。

「スセリ、オモイカネからの返（へん）事（じ）がありません！」

　それを聞（き）いたスセリは驚（おどろ）く。

（如何（どう）言（い）う事（こと）？　……とにかく）

「薫（かおる）、ちょっとオモイカネの宿（やど）った手（て）帳（ちょう）を見（み）せて」

　スセリは恵（え）理（り）花（か）の左（ひだり）手（て）を結（けっ）界（かい）の外（そと）に差（さ）し出（だ）し、薫（かおる）はズボンのポケットから手（て）帳（ちょう）を取（と）り出（だ）し恵（え）理（り）花（か）に手（て）渡（わた）す。

　手（て）帳（ちょう）を手（て）に取（と）ったスセリは、恵（え）理（り）花（か）の左（ひだり）手（て）を結（けっ）界（かい）の内（うち）に戻（もど）し、手（て）帳（ちょう）に封（ふう）印（いん）の力（ちから）が働（はたら）いている事（こと）を確（かく）認（にん）し、事（こと）の次（し）第（だい）を理（り）解（かい）した。

（「伯（お）父（じ）様（さま）、手（て）帳（ちょう）の結（けっ）界（かい）は如何（どう）言（い）う事（こと）です？」）

　スセリはそう念（ねん）話（わ）をツクヨミに送（おく）った。

　するとツクヨミから念（ねん）話（わ）が返（かえ）って来（く）る。

（「私（わたし）が必（ひつ）要（よう）と思（おも）ったまでだ。説（せっ）得（とく）は薫（かおる）本（ほん）人（にん）にやらせた方（ほう）が良（い）いだろうと思（おも）ってな」）

（「そう言（い）う事（こと）ですか……　分（わ）かりました」）

　そうツクヨミに念（ねん）話（わ）を返（かえ）したスセリは、念（ねん）話（わ）を切（き）り薫（かおる）と恵（え）理（り）花（か）に嘘（うそ）を付（つ）く。

「原（げん）因（いん）が分（わ）かりました。敵（てき）が今（こん）回（かい）の事（じ）件（けん）の為（ため）、オモイカネを封（ふう）印（いん）したようです」

「それではやはり、緋（ひ）衣（い）さんは何（なに）者（もの）かにダマされているのですね？」

　スセリの言（こと）葉（ば）に薫（かおる）がそう返（かえ）すと、スセリは言（い）う。

「そう、何（なに）モノかは分（わ）かりません。ですが……」

　そこまで言（い）ったスセリは、今（こん）度（ど）は恵（え）理（り）花（か）の右（みぎ）手（て）を結（けっ）界（かい）の外（そと）に差（さ）し伸（の）べ、薫（かおる）に言（こと）葉（ば）を続（つづ）ける。

「薫（かおる）、御（お）願（ねが）いがあります。緋（ひ）衣（い）の説（せっ）得（とく）を貴方（あなた）が行（おこな）って下（くだ）さい、私（わたし）達（たち）には彼（かの）女（じょ）を説（せっ）得（とく）出（で）来（き）るだけの信（しん）頼（らい）は有（あ）りません」

（スセリ？）

　恵（え）理（り）花（か）はスセリの言（こと）葉（ば）に驚（おどろ）いた。

　スセリは薫（かおる）に言（い）う。

「緋（ひ）衣（い）がああ言（い）ったと言（い）う事（こと）は、貴女（あなた）の事（こと）を心（しん）配（ぱい）していたと言（い）う事（こと）。血（ち）の繋（つな）がりの無（な）い私（わたし）達（たち）では、聞（き）く耳（みみ）を持（も）ってくれないかも知（し）れませんが、貴方（あなた）なら話（はな）しを聞（き）いてくれるかも知（し）れません」

　そう言（い）うスセリに、薫（かおる）は不（ふ）安（あん）そうに言（こと）葉（ば）を返（かえ）す。

「ですが私（わたし）には……」

「立（た）ち向（む）かい護（まも）る術（すべ）だけが力（ちから）だけではありません。貴方（あなた）の事（こと）は私（わたし）達（たち）で護（まも）ります、ですから御（お）願（ねが）い……」

　スセリはそう言（い）うと、恵（え）理（り）花（か）に念（ねん）話（わ）で確（かく）認（にん）を取（と）る。

（「恵（え）理（り）花（か）も良（い）いかしら？」）

　念（ねん）話（わ）でそう言（い）われた恵（え）理（り）花（か）は、少（すこ）し考（かんが）えてからスセリの意（い）見（けん）に賛（さん）同（どう）して薫（かおる）に言（い）う。

「やりましょう宮（みや）本（もと）君（くん）、緋（ひ）衣（い）さんの説（せっ）得（とく）！」

　恵（え）理（り）花（か）にそう言（い）われ、薫（かおる）は少（すこ）し戸（と）惑（まど）って考（かんが）える。

（僕（ぼく）に説（せっ）得（とく）なんて……いや、前（まえ）も皆（みんな）を体（たい）育（いく）館（かん）から移（い）動（どう）させる事（こと）が出（で）来（き）たんです。私（わたし）にだって大（だい）事（じ）な従兄姉（いとこ）の説（せっ）得（とく）ぐらいは！）

　心（こころ）に決（き）めた薫（かおる）は恵（え）理（り）花（か）の手（て）を取（と）り、スセリが薫（かおる）を結（けっ）界（かい）の中（なか）に引（ひ）き入（い）れた。

　そして恵（え）理（り）花（か）は薫（かおる）に手（て）帳（ちょう）を返（かえ）し球（きゅう）状（じょう）の防（ぼう）御（ぎょ）結（けっ）界（かい）を張（は）ると、スセリは戦（たたか）っている葉（よう）司（じ）達（たち）に念（ねん）話（わ）を送（おく）る。

（「皆（みんな）聞（き）いて、薫（かおる）が緋（ひ）衣（い）を説（せっ）得（とく）します。だから邪（じゃ）魔（ま）なロボット達（たち）の動（うご）きを止（と）めて！」）