第28話
「岡崎殿、お主何を投げた……」
「秘密です」
素っ気ない返事が返ってくる。岡崎にはまだまだ余裕が十分にあるようだ。
二人の頭上を何かが通り過ぎ、物を砕くような音が響いた。
岡崎は刀を鞘に収めると、脇差しと十手を引き抜いた。
すぐに別の方向から同じような音が近づいてきた。それを器用に受け止め、うまく脇差しに絡め、思いっきり引っ張る。
屋根の上から一人落ちてきた。受け身も取れずそのまま地面に激突する。
落ちてきた者の耳の裏側に素早く脇差しの切っ先を差し込み、
そのままの格好で二・三度痙攣すると動かなくなる。
ぴー・ぴー・ぴー
「引け!」
岡崎はまた東伯を抱え真後ろに飛んだ。轟音と共に賊の身体が飛び散る。後にはばらばらになった死体のみが残っていた。
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町方や岡っ引きが大勢集まっている。
東伯は町奉行所の検死医なのでそのまま検死を始めた。辺りには異様な臭いが立ち籠めている。それは一月程前に江戸に立ち籠めた臭いだった。
「
岡崎が倒した
「
突然、頭上から滅多に聞かない者の声が聞こえてきた。馬に跨がった男がいる。
「おや、お奉行様、お珍しい」
「で、
一月前の
この水から出る湯気やこの水を少し加工したものに火を付けると爆発的に燃え出す。しかも中々消えない。
「大体このようなものですな。
しかし、こうなると検死するのは難しいですなぁ。なにか、特定できる物が燃え残っていれば良いのですが」
「
「どうした、
慌てた様子で近づき、遺骸を見て目を背け、遠巻きに立ち尽くしている
若い者の顔色は悪い。
無理もない。
ここまでなる遺骸はそうあるものでも、見るものでも無いからだ。
「あ、すみません、ちょいとびっくりしやして。
ところで
うちの
居心地が悪そうだ。
焼けた遺骸のせいではなく、どちらかといえば役人の多さだろう。とくに奉行まで出張ってきている。
しかも、捕り手や同心だけではなく、
明らかに斬り合いを想定した人数だ。
「お奉行、ちょっと気になることがありましてな。
この者達について
ここまで酷いとすぐにはどうにもなりませんので、同心達にいったんこの場を任せようかと」
明らかに含みを持たせた言い方だ。
「……関係があるのか?」
奉行は重たい声を発する。
それに今回の江戸市中での
「わかった。
ここは
岡崎、こちらから連れてきた
わたしは城に行き、老中と
奉行はそう言うと、数人の
「久しぶりだな、岡崎。
それに近くに
「ほれ、早う先導せい」
若い者は顔色が真っ青だ。
言葉も発せず、ただこくこくと頷くと早足で歩き出した。その後ろを
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「失敗しただと!」
横に座っている
すでに使える手駒の七割を失っている。
「ふぅむ、
さすがの
「あ、う……」
そこへ突然、天井から紙が落ちてきた。中に石が包まれ落ちやすくなっている。
「
いつも声を荒げることのない
「
北町奉行所と南町奉行所が動き出しました。老中と大番頭にも話がいったようです」
そこで一度言葉を切った。
いくら吉原が隔離されているとはいえ、老中まで話が行くと別だ。当然
「
「「きき・せせ・やや・をを・おお・そそ・いい・しし・んん・でで・ここ・いい」」
「「じじ・ゃゃ・まま・もも・のの・はは・すす・べべ・てて・けけ・せせ」」
「さて、少し荒っぽいですが
ちょうど数名、
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