第8話
一応裏口はあるのだが厳重に管理されており年に一回しか開かない。夜間用の出入り口もあるがそこも厳重に管理されている。
また
時雨は、乱れた着物の
男達の一人が、異様な姿で走ってくる
「おい、そこの女、止まれ!」
気づいた
八人が扇形になって隙間を埋める。
しかし、
ぴー ぴっ ぴっ ぴっ ぴー
呼び子を吹いた
真横に伸ばされた腕の先には二振りの太刀がさらに間合いを伸ばすように握られていた。
つむじ風のような速度の回転は同時に三人の
扇状になっていたうちの半数がすでに吹き飛ばされ、意識を失っている。
残った
すでに
かん・かん・かん
かん・かん・かん
火災を知らせる
(ちくしょう。証拠を無理矢理消しやがった)
走り続けると、どんどん人が増えてくる。火事見物の野次馬と江戸の火消し衆が集まっているのだ。
次第に人混みをかきわけるようになると
狭い路地に積んである水桶を利用し、屋根の上にあがる。そのまま瓦の上を走り屋根伝いに目的地を目指した。目指す方向には煙が上がり、空は赤く照らされている。屋根の先にはちらちらと赤い炎が見て取れた。
(火の勢いが強すぎる……)
屋根伝いに走り、あと一町という距離に近づいたとき、
つんっと頭に響く匂いが周囲に立ちこめている。下を走る火消し達も濡らした布で口と鼻を覆っていた。
「なんだ? この匂い?」
「この火、消えないぞ!」
「水じゃあ駄目だ、周りの建物を全部壊せ!」
火消し達の怒号が飛び交っている。すでに消火は諦めたらしく、各々が斧や
一瞬、ぱっ と赤い光が走った。
凄まじい音とともに診療所の辺りから黒煙が上がり、強い衝撃が走る。一瞬、時雨は走っていた足を止めた。その後、熱風が辺り一面に渦を巻いた。
「……綺麗」
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「はぁ、やれやれ。この男と女だけで良かったんだよなぁ」
「しかし、ただの医者じゃねぇな。こっちは二人殺られた、誤算もいいところだぜ。これから大名屋敷を襲うってのにな」
五人は全員、
黒が良いように思えるが意外と目立つ。五人のうち二人は各々一人ずつ人を抱えている。
「さっさと引き上げ……」
五人のうちの一人が突然黙った。
他の四人は怪訝そうな目で黙った男の方を見ている。
「どうした?」
黙った男が前のめりになって倒れ込んだ。そのまま瓦を引きずりながら地面へ落ちた。派手な音が辺り一面に響き渡る。落ちた男が立っていた場所に長髪の女らしき存在が立っていた。手には反り返った
(こいつ……、やべえ)
戦い慣れた者達の本能が危険と判断していた。遠くで揺らめく炎の光りで、立っている存在の認識は出来た。とてつもなく背が高い女。手には
「行け。こいつは……、止めてみる」
一人が直刀を引き抜き、もう一人は鎌を取り出した。残りの二人は振り返りもせず地上に降りて走り出す。すぐに下の方で火の手が上がった。また、頭を刺激する匂いが立ちこめた。
時雨は一度、太刀を鞘の中に収る。
「逃がすか!」
収めて刹那、
見事な抜き打ちだ。
炎の赤い光りが刀身に光り、真っ赤な刀身は
鎌を持った
赤い刀身が
何かが闇夜を切り裂いてゆく。
しかし、狙った場所に女はいなかった。
慌てて左手に持った鎖を引き戻し円を
鎖を振った瞬間、腕が鎖ごと屋根の上に落ちたのだ。
その
からからという音が口の中から聞こえてくる。
それだけのことを済ませると鼻をひくひくとさせ、逃げた二人の行方を追って走り出した。
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