第29話

 祖竜が空の星になった。

「ふうぅっっ!!」

 盛大な溜息を吐いて、俺はその場にしゃがみこんだ。草がチクチクとおケツに刺さる。玉の裏にも刺さったようだ。そういえば俺は全裸に長靴一丁だったな。

 さて・・・これからどうすんべ。一人で生きるったって、全裸で道具なしのサバイバル生活なんてできそうもない。現代日本でアウトドア嫌いの俺じゃあ今夜生き残ることすらも怪しい。

 幸い時間停止スキルがあるから、どこにだって行くことはできる。でも全裸のオッサンじゃ、不審者にしか見えん。おまけに言葉も通じないし。

とにかく俺は今、全裸に白ゴム長だけという現代日本なら即逮捕の状況だ。どうにか服ぐらいは確保しないとな。

 ・・・待てよ。服の確保ということは、今の俺では盗むか奪うか貰うかしかない。盗む奪うは犯罪。貰うにしたって、くれるか?普通。俺だったら、全裸にゴム長だけのオッサンを見つけたら、逃げるか通報するかだな。綺麗なお姉さんが全裸にゴム長だったら、俺は何でも言うことを聞いてしまうだろうが・・・

 全裸にゴム長も問題だが、根本的に解決しなきゃいけないことがある。それは「この異世界のことについて何一つわからないこと」と「この異世界の言葉が何一つわからない」ということだ。俺の小粋なジョークも寒いおやじギャグも宝のもちぐされジャマイカ・・・

 少なくても誰かに言葉は習わないといけないよな。この異世界に日本語の通訳できる人なんていそうもないし・・・

「!!」

 ピコーン!

 新スキルを獲得したわけではない。いいことを思いついたのだ。全裸ゴム長も言葉も異世界知識も無事に解決できる至高の一手を。

 それは「俺時間巻き戻しスキル」を全開にして、赤ちゃんになって誰かに育ててもらう作戦だ。

 頭の中で科特隊のテーマが鳴り響いた。

「チャッチャララ~、チャッチャララ~、チャ~ッチャラ~♪」


 そうと決まれば作戦開始だ。気が付けば日が山に隠れようとしている。少し肌寒くなってきた。

 俺のスキルは「こうしたい」と思うだけで発動できる。でも勢いは大切なので、必殺技のように言葉にすることを推奨する。

「リバース!!」

 ・・・嘔吐ではない。


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