第27話

《慌てるでない。まずはおぬしの力の源、消し去ってくれるわ!》

 俺を左目に捕らえたまま、ドラゴンの顔が城を眼下に捉える。何をする気だ?

 ゴォォーッ!!

 城に向けてドラゴンのブレスが放たれた。すでに上部を失った城が跡形もなく崩れていく。さらに真っ赤な霧の炎ように広がっていたブレスが、徐々に中央に収束していった。同時にブレスの色が赤から青白く変化する。まるでバーナーの炎が高出力になるほど青白くなるように。ゴーという音がピーという甲高い音に変わっていった。

 レーザー光線かと見紛うほどに細くなったドラゴンブレスが、城の地下に向けて、城の土台に突き刺さる。

《隠れても無駄じゃ。そこに隠れておるのは知っておるわ!》

 ドラゴンが軽く首を振り、レーザー光線のようなブレスで大地を切り裂く。

《!!》

 悲鳴にも似た「黒」の意思。程なくして俺の中から「黒」の存在が跡形もなく消え去っていく。黒かった俺の肌が白くなった。

 ゴゴゴゴゴーッ!!

 地震のような地響きと地鳴りが発生する。城の周りに地割れが入り、周囲の地面の至る所が陥没していた。

 大地の振動は巨大なドラゴンの頭に乗っていても伝わってくる。やがて眼下の城が次第に遠ざかっていった。ドラゴンが動いたわけではない。城が崖を崩しながら土煙と共に湖に沈んでいったのだった。


《さて・・・次はおぬしの番じゃな》

 な?どういう意味だ?

 次の瞬間、俺は暗闇の中にいた。足元はヌルヌルしていて、かなりの湿気と生臭いところだ。拘束されていた右手は自由になっている。

《儂は儂に触れている者を、自由に飛ばす・・・ことができるのじゃ》

 急に明るくなった。周囲は上からも下からも、尖った白い岩が無数に並んでいる。 天井と床はピンクがかった赤で、透明な粘液に塗れていた。

《塵一つ残さぬようにしてくれるわ!!》

 あっ!!ここは・・・ドラゴンの口の中か!!振り返ると大きく窪んだ穴から、熱気が襲ってくる。ヤバい!!ブレスを放つ気だ!!

『儂は儂に触れている・・・・・者の「固有技能」を封じることが出来るのじゃ』

 先程のドラゴンの言葉を思い出す。

「要するに触れて・・・なきゃ、いいんだろ!!間に合え!!」

 穴の奥が光る。

 俺は天井に当たらぬように、小さくジャンプして「止まれ!!」と念じた。


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