第26話

グワァオォ~~~~~!!!!おのれ~、いい加減にしろっ!!

 けたたましい咆哮と共にドラゴニュートの目が光り、次の瞬間に全身も光り出す。

《いかん!!遠くに離れろ!!》

 俺の中の「黒」の焦り方が激しい。俺は慌てて時間停止スキルで城の塔の最上階のバルコニーに移動する。

 ドラゴニュートの全身から黒い煙が噴き出し、巨大な黒雲のように膨らむ。黒雲は急激に大きさを増していき、城の天辺付近にいる俺よりも遥かに大きく高くなった。やがて黒雲は何かの形を取り始める。「何か」なんて遠回しな表現は似つかわしくないな。黒雲は明らかに超巨大な「ドラゴン」の形をしていた。

 黒雲の隙間からは金色の鱗が見え隠れする。黒雲が完全に晴れたとき、現れたのは全高100m越えの巨大ドラゴン。1本首のキング〇ドラか?いやいや、さすがにこれはヤバ過ぎでしょ。左目が潰れ爛れていることから・・・

《あれがヤツの真の姿だ》

 「黒」が呟く。ドラゴニュートの真の形態。あんなんどうやって倒せ、と?

 呆気に取られる俺をよそに、巨大ドラゴンは俺をじっと見ていた。口がカッと開く。ま、マズい!!咄嗟に条件反射のごとく、俺は時間停止を発動させた。ドラゴニュートの形態の時のブレスとは桁が違う。俺は巨大ドラゴンの死角になるよう、後方の離れたところへと移動した。スキルを解除すると、ブレスは城を直撃し上部の大半を消してしまう。

 な、なんつー威力だよ。あんなのを喰らったら、俺時間巻き戻しスキルも間に合わんぞ。

 そうは言っても手をこまねいているわけにはいかない。俺はテイムして残った魔物全てに総攻撃を命じた。

《クハハハハーッ!!無駄無駄無駄無駄~!!》

 巨大ドラゴンが縦横無尽にブレスを撒き散らす。魔物どころか、城も街も燃え盛る炎に包まれた。あれじゃあ、地表にいるものは魔物も人間も全滅かもしれない。俺はドラゴンの顔の正面から、時間停止で避けまくるのが精一杯だ。地面に下りる場所なんてないから、空中に移動しては落下、空中に移動しては落下を繰り返していた。

《・・・この破壊神め》

 小声で「黒」が呟いた。言い得て妙だな。まさに破壊の化身だ。


 ・・・ええい!ビビるな!!「大男総身に知恵が回りかね」って言うしな!! 俺は意を決して、時間停止から巨大ドラゴンの左目の上に移動する。虎穴に入らずんば虎子を得ず。肉を切らせて骨を断つ。昔の人はいいことを言ったぜ。

 口から出るブレスにとって、ヤツの目の上は死角だ。俺は体の奥底からありったけの魔力を振り絞り、右腕に籠めた。

「喰らえ~~~っっっ!!!!!」

 俺の右拳が、巨大ドラゴンの左目に突き刺さる。だが、しかし。

《そんなチンケな魔力弾など、効かぬわ!!》

 ヤツが巨大すぎるせいなのか、俺のというか「黒」の魔力弾が吸い取られていく。しかも俺の右手は巨大ドラゴンの左目に埋まったまま、抜くことが出来なかった。押しても引いてもビクともしない。

 こうなったら奥の手だ。俺はスキルを使って逃げようとしたのだが。

「な、何故だ?・・・時間停止が出来ない!?」

 俺は時間停止スキルを発動させようとした。何度も何度も。しかし、あれほど面白いように発動させていたスキルが全く発動する気配すらない。

《クハハハハ。封印してやったわ。もう逃げられんぞ》

 何だと?封印?そんなバカな。

《足掻いても無駄じゃ。儂は儂に触れている者の「固有技能」を封じることが出来るのじゃ》

 固有技能・・・スキルのことか。いや、そんなことはどうでもいい。とにかくこの状況を打開せねば。

《慌てるでない。まずはおぬしの力の源、消し去ってくれるわ!》


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