第25話
いくら異形の魔物が強いからと言って、1対1では勝負にならないだろう。俺は時間停止で空中に上がり、状況を確認することにした。
戦場の趨勢は粗方決したようだ。立っている騎士や魔導士に比べて、魔物の方が圧倒的に多い。空を飛んでいるのは魔物しかいないしな。
だったらそいつら纏めて俺の手駒にしてやる。魔力がどれだけ持つのかわからないが、元々俺には魔力なんて無かったんだ。魔力が枯渇したところで問題ない。せいぜい俺の中の「黒」に頑張ってもらおう。
《・・・・・・》
俺を支配しきれないどころか、思ったように事が運んでいない状況に「黒」がイラついているのがわかる。お前の意図が何なのか、いまさら知りたくもないけど。
空中にいるついでに、俺は飛んでいる魔物を片っ端から支配することにした。グリフォンにキマイラなどの大型魔物から、ハーピィ、ワイバーン、名前もわからない翼の生えた蛇とか手あたり次第に。俺は時間停止と解除を繰り返して、手駒を増やしていく。テイムしたようなものか。ゲームと違って最大テイム数とか上限が決まっていないのはありがたいね。
数十体はテイムしたはずなのに、支配力は落ちていない。実は俺の中の「黒」って、相当凄い奴なんかな?
《我を見くびるでない。魂の弱い奴らなど、百だろうが千だろうが造作も無いことだ》
逆に言うと魂の強い者には効かないってことね。俺を支配しきれないところを見ると、俺の魂も満更ではないようだ。ちょっと希望が見えてきたぞ。
「や~っておしまいっ!!」
気分はドロ〇ジョ様だ。俺にテイムされた空飛ぶ魔物が、次々と上空からドラゴニュートを襲う。「ア~ラホ~ラサッサ」ぐらい言えんのか。
《小癪な!!》
ドラゴニュートが空に向けてブレスを放ち、空飛ぶ魔物の半数が塵となった。とはいえ、さすがに全部仕留めることはできない。今のうちに俺は、地上にいる魔物も時間停止を駆使してテイムしていく。
わらわらと魔物たちがドラゴニュートに群がるが、個体としての能力が低すぎて傷一つ付けることが出来ない。全く勝機が見えん。苛立たせることには成功しているみたいだが。
よく見るとドラゴニュートの左目は、刺さった剣は抜いたみたいだけど潰れたままだ。治癒能力ぐらいは持っているはずなのに、何故だ。・・・待てよ。ひょっとしたら濃塩酸でやられたってことが、わかっていないのかも。酸は希釈したところで酸気は無くならない。アルカリで中和しなければ無害化はできないのだ。ましてや異世界の塩酸なので、効果が強力になっているのかもしれない。
俺は時間停止でドラゴニュートの顔面に移動し、「黒」がやったように魔力を塊にして左目にぶつけた。
「ウガアアアッ!!!」
よし、効いてるぞ。すぐに時間停止で離脱。
《小僧!!》
ドラゴニュートがブレスを放つ。群がっていた魔物が駆逐された。まだだ。俺は再び時間停止を繰り返し、ドラゴニュートの左目だけを集中的に攻撃する。致命傷にはならないかもしれないが、効いているのは確かだ。
「
けたたましい咆哮が唸り、ドラゴニュートの目と共に全身が強烈な光を放った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます