第24話

《貴様は・・・一体・・・?》

 見事なまでに「黒」は狼狽えていた。時間停止も俺時間巻き戻しも「黒」にとっては初体験だったってワケだ。

《・・・寄越せ。その体を、我に、寄越せ!!》

 急激に体が重くなる。「黒」が支配力を高めだした。くっそ~、負けるかよ!!

 俺は必死に抵抗する。ここで乗っ取られたら、二度と自分の体は俺のものにならないと悟ったからだ。しかし気が遠くなりそうになる。何とかしなければ・・・イチかバチかだ。

(時間停止!!)

 音が無くなり浮遊感に包まれる。同時に「黒」からの圧迫も無くなった。思った通り、時間停止中だと「黒」は何もできないようだ。

(お前にはこのスキルは使えないようだな) 

《くっ・・・戯言を・・・》

 仮に「黒」が俺の体を支配して時間停止スキルを発動させたとしても、恐らく「黒」は動くことも出来ないだろう。確証はないが確信している。

(諦めるんだな)

《本体であれば、貴様など・・・》

 本体?まっ〇ろ〇ろすけは分体ってことか?まあ、いい。

(代わりに俺がお前の能力を使ってやるよ!!)

 俺は時間停止しながら、異形の魔物の眼前に移動した。「黒」がやったことは、俺の体が覚えている。俺は時間停止を解除して、魔力を目に集中させた。

「俺に従え!!」

 俺の目が赤く光り、異形の魔物の目が光を失った。よし、成功だ。俺の感覚がそう言っている。俺は異形の魔物の頭に手を添えて「黒」がしたように魔力を奪おうとして・・・やめた。

 支配したんなら、味方として使えばいいんじゃね?

 俺は異形の魔物の背に乗り「進め」と命じた。黒い異形の魔物は、俺の指示通りに動く。せっかく支配したのなら、魔力にするより戦力にした方が効率いいだろう。

 俺は異形の魔物に命じて、他の魔物たちを蹂躙しまくった。異形の魔物は高レベルの魔物なのか、リザードマンやツノトカゲの魔物などをあっさりと倒していく。騎士や魔導士たちが驚いたようにこちらを見ていた。心なしか視線が股間に集中しているような・・・言葉がわかれば説明できたのに。行動で味方だと知らしめよう。

 不意に異様な殺気を感じた。

《小僧、性懲りもなく舞い戻ってきたか。おとなしく逃げていれば、見逃してやったものを》

 ドラゴニュートからの念話だ。200mほど離れたところから、腕組みをしながら俺を見ている。

《しかも、けったいなヤツと手を組みおって》

 けったい?俺と同化しているコイツのことか?「黒」は黙ったままだ。ドラゴニュートはコイツの正体を知っているようだけど。

(お前を倒せるんなら、悪魔とだって手を組んでやるさ!!)

《フン、そやつと組んでも儂は倒せんぞ》

(やってみなくちゃ、わからねえだろ!勝負事は下駄を履くまでわからねえってな!!)

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