第22話

 俺の体を乗っ取ったまっ〇ろ〇ろすけが、俺の体を確かめるよう手足を小刻みに動かしじろじろ見る。俺の体の主人は俺じゃなくなったようだ。でも完全に切り離されたわけじゃない。全身から黒いオーラが出ているような肌感覚があるし、手足の動きもわかる。視界に入る俺の手足は、黒人の様に黒い肌となっていた。黒人にしては貧相なチ〇チ〇だけど。まあ、黒人なら真っ裸もそれほど気にならないかな。白長靴が目立つのはご愛敬。

 《貴様、魔力を持たぬのか?》

 (魔力?そんなものパンピーの俺にあるわけないだろ)

 だいたい魔力って何だよ。っと思ったら、即座に理解した。俺の体内から湧き出る力。これが「魔力」か。なるほどね。まっ〇ろ〇ろすけは魔力で出来た存在みたいだ。

 《まあ良い。魔力ぐらいどうとでもなる》

 (それじゃあ『力』とやらを見せてくれよ)

 《魔物と戦うときに見せてやる》

 モンスターのことを「魔物」って呼ぶんだな。モンスターも魔物も変わらない気もするが。

 俺の体を乗っ取ったまっ〇ろ〇ろすけが城の中を歩き出した。う~む・・・まっ〇ろ〇ろすけって呼びにくいな。

 (アンタ、名前は何て言うんだ?)

 《我に名は無い》

 なんだよ、名無しかよ。黒い霧の塊だから「黒霧」にしようかな。焼酎みたいだからやめるか。

 《好きにしろ。名など意味は持たぬ》

 あ、そ。んじゃ、気分で適当に呼ぶとするか。今のところ一心同体みたいになってるから、意志は伝わるだろう。逆に隠しておきたい感情とかまで筒抜けになるのは御免こうむりたいのだが。

 俺の考えていることがわかっているのか無視しているのか、「黒」が黙ったまま城門から外に出ようとしていた。

 

 薄暗い場内から城門を開けると、眩い光が差し込んでくる。同時に様々な爆音や金属音が耳に響く。人間と魔物が繰り広げる激しい戦闘の中へと、俺の体は無防備なまま歩いていった。

 体から湧き出る魔力の量が増していく。俺の内部から発する禍々しいまでの力を感じた。「黒」は魔力によって俺の体力筋力を増幅しているようだ。

 《行くぞ》

 俺の体が向かったのは、10体ほどで固まった魔物の群れ。トカゲの体で二足歩行し、剣や槍を持っている。リザードマンだな。ゆっくりと近づく俺に気付いたようで、リザードマンたちは奇声を上げながら威嚇してきた。

 俺の体内からさらに魔力が沸き上がり、手の方に集まっていく。俺は腕を振るい、ボールの様に魔力を飛ばした。魔力は黒い塊となり、リザードマンの顔面に炸裂する。

 「グギャアッ!!」

 断末魔と共に、リザードマンの頭が弾けた。頭部を無くしたリザードマンの首から、黒いもやのようなものが立ち昇る。黒いもやは俺の方に棚引き、俺の中へと吸い込まれていった。俺の魔力が増す。

 俺の体を支配した「黒」は次々と魔力を投げつけ、瞬く間に10体ほどのリザードマンを倒す。リザードマンから発生した黒いもやを吸収した俺の魔力は、全身から噴き出すほど溢れ出していた。

 《ふむ・・・》

 手足を小さく動かして、「黒」は自分の力を確認しているようだ。どうも満足はしていないようだが。

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