第12話

 「ちょっとタンマ!ストップ!ストーップ!!」

 しりもちをついたまま両の手の平を相手に向けて、顔をそむけて目を瞑りながら叫んだ。


 ・・・し~ん。


 何も起きない。いや、さっきと同じように体の痛みと感覚が消えた。

 ゆっくり目を開けてドラゴニュートの方を見る。自分の手が邪魔だな。

 少し上に動いてドラゴニュートを見てみると、やはり先ほどと同じようにヤツは止まっていた。三又の槍は俺の方を向いていて、槍の先が青白く光りだしている。間一髪といったところか?危なかった~。

 「ふぅ~~」

 とりあえず、この周囲が止まった状態なら少しは落ち着けるぞ。あ~タバコが吸い てぇ。

 今いる位置だと危険だから、一旦避難して状況を整理してみよう。

 俺はドラゴニュートから10mぐらい離れた、周囲に誰もいないところへと移動した。


 ふ~む・・・どうやらこの状況を作り出したのは、俺自身のようだ。魔法じゃないみたいだな。呪文を唱えてないし、一回目と二回目じゃ言っている言葉が違うし。「止まれ」とか念じるだけでできるんじゃなかろうか?多分そんな気がする。

 俺自身に魔力は一切感じられないが、魔力的なものや精神力を使ったわけではないな。特にどっと疲れが出るとか、眠気に襲われるとかも感じないし。止めていられる時間の制限みたいなものもなさそうだ。

 周りが動き出したのは、俺が「動け」と・・・


 ドバババババッッッ!!!

 あ、動き出しちゃった。


 「痛っ」

 少し浮いていたので、落ちた時に着地を失敗してコケた。

 元の場所にいた俺は消えて、そこにドラゴニュートの水魔法が炸裂する。あんなの喰らってたら、俺なんか肉片すら残ってないぞ(二度目)俺をどんだけ挽肉にしたいんだ?

 すぐにドラゴニュートのヤツは俺が消えたことに気が付いたようだ。迷うことなくこっちを向いたぞ?!何だアイツは?!化け物か?!

 ・・・ドラゴニュートは化け物だな、うん。


 って、呑気なことを考えている場合ではない。今度はドラゴニュートがこちらに翼を広げて飛んでくる。

 とりあえず「ストップ!」だ。

 思った通り、念じるだけでドラゴニュートが止まった。音もなくなり痛みも感覚も消えた。


 あっぶねえ・・・スキル解除につながるようなことは、思ってもいけないみたいだ。とりあえずは、まだ止まったままだ。今度は大丈夫。どうにかコントロールできそうだな。


 フフフ・・・ようやく手に入れたぜ、チート能力を。

 仮名「時間停止スキル」と名付けよう。

 「ここからは私のターンだ」

 時間停止スキルで反撃開始だ!


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