貴族の胎を手に入れた
「アタシ、この子を養子にするって決めたから!」
シューレイン家の邸宅に帰り着いたエリザは、俺の体を高く掲げてそう宣言した。
「名前はリュート! この子は今日からリュート・シューレインよ! アタシの息子として扱う事! いいわね!」
邸宅の使用人達は、ポカーンとした表情を浮かべていた。
『この汚いガキを養子にする? 奥様は正気か?』
とでも言いたげな顔だ。
まあ、そうなるよな……。
「エリザ! 何の騒ぎだいったい!」
慌てて書斎から飛び出してきたのはダンテ・シューレイン伯爵。
エリザの夫にして、名門シューレイン家の今代当主だ。
油によって撫でつけた総髪、高価そうな眼鏡、いじわるそうな目つき。
いかにも陰険エリートって感じの風貌をしてやがる。
「あ、ダンテ! ちょうど良かった、アタシこの子を養子にするって決めたから。あなたの息子でもあるんだから、ちゃんと可愛がること!」
「こんな時間まで酒場をほっつき歩いて、やっと帰ってきたかと思えば……庶民の子供を養子にしろだと? ふざけるのも大概にして欲しいものだね」
ダンテは妻を睨みつけながら、尊大な口調で使用人達に命じる。
「お前達、今すぐこのみすぼらしい子供を屋敷の外につまみ出せ!」
「ちょっと! アタシのリュートにひどい事言わないでくれる!? ――あんた達、リュートに指一本でも触れてみなさい! 顔面引っかいて眼球えぐり出してやるから!」
使用人達を鋭い声と目で威嚇するエリザ。
やっぱ猫っぽいなこの貴族。
「エリザ、いい加減落ち着いてくれ。そんなに子供が欲しいなら、僕の子を産めばいい話じゃないか。そうだ、子作りをしよう。人間も犬も、育てるなら血統書付きに限る」
「アタシは子供が欲しいんじゃないの! リュートを育てたいの! そこんとこ、勘違いしないでくれないかしら⁉」
俺をめぐる夫婦喧嘩はヒートアップしていく。
ちなみに、正しい事を言っているのは完全に旦那の方だ。
貴族が貴族でいられるのは、高貴なる血統を先祖から受け継ぎ、大切に守り続けてきたからだ。
そこに身元不確かな貧民の子の血を入れるわけにはいかない――ダンテの主張には理がある。
だから――
「テイム」
俺はダンテにテイムをかけて、理をねじ曲げる事にした。
俺のヒューマテイムは人の心をいとも容易く書き換える――貴族の凝り固まった選民思想や血統主義すらも。
「ダンテ伯爵、俺を養子に迎え入れる事を了承しろ」
「でかしたじゃないかエリザ! こんな美しい子を一体どこで見つけてきたのやら。是非とも我が家で引き取ろう!」
ダンテ伯爵は180度主張を変えて、俺を引き取る事を了承した。
「あなたもやっとリュートの魅力が理解できたみたいね! そう、リュートはどんな宝石よりも尊い存在なの。まさに神様からの贈り物よ」
俺に頬ずりを繰り返すエリザ――ああ、いい気分。
使用人達は夫婦のやりとりを見つめながら、終始ポカーンと口を開けていた。
何がなんやらって感じだろう。
いやほんと、お騒がせして申し訳ない――そしてこれからよろしくな、使用人共。
どうも、俺がお前らの新しい主人です。
こうして俺は、エリザに出会ってほんの一時間で、貴族としての地位と大きな家を手に入れたのだった。
さて、お次は――
「ねえ、母さん母さん」
俺はエリザのスカートをくいくいと引っ張る。
「どうしたのリュート。アタシに甘えたいの?」
「ねえ母さん、俺そろそろ眠くなってきちゃったな。母さんと父さんと、一緒のベッドで眠りたい!」
いよいよ、貴族の女の胎を手に入れる時がやってきた。
**
窓から差し込む月の明かりに照らされた、豪奢な寝台。
その中心に、裸の女が座っていた。
「どう? ママの裸は。好きなだけ見てもいいのよ」
エリザは自慢げにそう言って、大きな胸を強調した。
貴族の臍が腹が胎が――そしてツンと上向く張りのある胸が、貧民の俺の目に惜しげもなく晒されている。
「母さん、できる限り脚を開いて……自分の手で脚を掴んで、V字に開脚して」
「もう、リュートはそんなにママの裸が好きなの? いいわ、好きなだけ見てね」
エリザは俺の注文通りのポージングを披露した。
蜘蛛のように長い脚を目いっぱい開き――俺に胎を見せてくれた。
「アタシ、けっこう体が柔らかいのよ。幼い頃にダンスを習っていたから。先生と喧嘩してやめちゃったけどね」
エリザはどんな無茶ぶりにも軽々と答えてくれる。
俺は様々な角度からエリザの胸と胎を鑑賞し――時には触って舐めたりしながら、その体を文字通り味わった。
「ああ、やっぱ貴族は最高だぜ……!」
村の女とは何もかも違う……生まれ持った体のポテンシャルが違う、手入れの入念さが違う。
もはや、別の生き物のようだった。
素敵……これを俺専用の孕み袋にできるだなんて。
ちなみに、エリザの夫であるダンテが今どこで何をしているかと言うと――
「おい、ダンテ。お前はそこに立って俺とエリザの行為を見てろ。邪魔するんじゃないぞ」
「ああ、君達の邪魔をするつもりはないよ。存分にエリザを可愛がってやってくれ」
ダンテは大人しく部屋の隅で、俺とエリザの情事を鑑賞していた。
妻が他の男に――それも貧民の子供に奪われる様を、伯爵がじっと見ている。
なんだか、シュールな光景だった。
「いいか、ダンテ。今後お前は絶対にエリザと寝るな。エリザの胎に子種を撒いていいのは俺だけだ。わかったな?」
「ああ、承知したよ。エリザは君にこそふさわしい」
「もしもエリザに子供ができたら、お前が父としての役割を果たすんだぞ? 立派に育てて、シューレイン家の跡継ぎにしてやってくれ」
俺はダンテにそう言いつけてから――
「あ…リュート…リュートォ…!」
ついに、貴族の胎を一つ手に入れたのだった。
**
エリザにはまだ妊娠されると困るので(俺の世話をしてもらわなきゃ困る)、今回は避妊をしたが…他の貴族の女とする時は、そんな生ぬるい事はしないつもりだ。
最初から取りに行く――貴族の血筋を。
明日から貴族の女にどんどん種を撒きまくり、書き換えていくつもりだ。
貴族の血を、マシュー家の血に。
そして最終的には、
「王家の血を、俺の手に……!」
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~ 三浦裕 @miuraYOU
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