幕間 “ただひたすらに”

 彼は、ただひたすらに天を見上げていた。



「殺す」



 彼は、ただひたすらに恨みを抱いていた。



「絶対に殺す」



 彼は、ただひたすらに虚な気持ちだった。



「絶対に。何があっても」



 彼は、ただひたすらに男を見つめていた。



「ツキミの仇は、ボクが討つ」



 彼は、ただひたすらに彼女の死を嘆いた。



「お前だけは、ボクが必ず」



 彼は、ただひたすらに崩壊の街を眺めて、



「殺してやる」



 自らの頭上で意気揚々と浮かぶ『慎次キセイ』という青年あくまへ、強い想いを吐露した。

 その意思を曲げぬように。


 彼――朝原あさはらタイヨが、その約束を違わないように。

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神殺しの叛逆者たち 池下ジュン @ike_jun

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