data012...検知
『マリン。どうしてついてきたの?!』
「テレポートでバックパックの中身と入れ替わったんだけど、思ったより狭いし中から開けられなかったよの」
『いや、それはわかったけど、どうしてついてきたの?』
「ああ、あんな面白くもないところにいても、しょうがないでしょ? どうせジュドーはメンテナンスで動けないし」
あんな目に遭っても外にいる方が良いって、マリンは相当変わり者だ。このまま第七セクターに向かって、ボク一人で守り切れるだろうか、どう考えても戻った方が良いよね……。
『送っていくから、帰らない?』
「嫌よ。それに私がいた方が、タイムロスなく道案内が出来るわよ?」
『それはそうだけど……』
マリンとは短い付き合いだけど、こうと決めたら曲げない性格なのはわかっている。ボクが言ったところで意見は変えないだろう。
『危なくなったら、一人でも逃げたり隠れたりしてよ?』
「もち」
満面の笑みを浮かべたマリンは、嬉しそうに手を叩くとエアバイクの後ろに飛び乗った。
『ムサシ、ヘルメットになる機能なんてないよね?』
【 もちろんあるでござる 】
あるんだ……。
【 《機能act》メットモード でござる 】
浮遊していたムサシがメキメキ変形すると、あっという間にヘルメットになって、ボクの手元に落ちてきた。
『ムサシ、ありがとう。マリン、これ被っててね』
「「このドローンなに? ゼロハチの機能の一部?」」
マリンがムサシを被りながら話したら、マリンの声が二重に聞こえた。
『ん? あ、これインカムの機能もあるんだ。便利だね』
「これなら走行中も会話出来るし、離れていても問題なさそうね。ちなみに第七セクターは、こっちじゃなくてあっちよ」
マリンが指を刺した方向は、ボクが向かおうとしていた先よりだいぶズレていた。
『え、そうなの? こっちから逃げてきてたよね?』
「私たちは、第七セクターから真っ直ぐ逃げてきたわけじゃないからね」
早速、マリンが来てくれていてよかったと実感した。うろ覚えで進むと、さっきみたいに敵性メタリアルに遭遇する可能性も高いし。
「ほら乗って乗って、あそこに先端の折れたタワーが見えるわよね? あのタワーから右に15度の位置に、第七セクターがあるわ」
『わかった。よっと』
エアバイクに跨ってスイッチを入れると、フゥイイイと機体が浮遊した。マリンの靴がロックされてるのかもう一度確認して、一気にアクセルを握り締め、エアバイクは走り出した。
――『マリン、第七セクターの人はどうやって何百年も生きてきたの?』
ボクはエアバイクを走らせながら、この世界の疑問について聞いてみた。こんな荒野の中、何百年も人間が生きていけるとは到底思えない。
「人が生きるためには、衣食住が必要だけど、それら全てを第七セクターは内部の設備だけだ維持してきたわ」
『つまり、第七セクターの中で食糧も作ってるって、ことだよね』
「そうよ。雨水と高密度LEDで栽培した植物を原料に、サラダはもちろんのことバイオミートや洋服、一部ではエネルギーの代わりに使っていたわ」
2000年代でもそれらの技術はあったけど、それには広大な土地や大量の電気を必要としていた。たった一つの設備でそれらを補えるってことは、未来の技術が使われてるのかな。
「見えたわ。あれが第七セクターよ」
【 生体反応確認 敵性確認 でござる 】
瓦礫の山を飛ばしていたら、マリンの報告とムサシの警告が同時に発せられた。
「……いた。ゼロハチ! 左15度の方角! 誰か襲われてる!」
『わかった!』
ブォン! ブォォォン!
ボクはエアバイクのハンドルを、思いっきり握り込むとマリンの指示した方角へ全速力で駆けた。
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