data011...ドローン

 ボクはロレア極東支部を飛び出した。

 もっと話を聞いてもよかったかもしれない。


 でも、人間の集落であるあの場所に、ボクみたいなロボットはいない方がいい……。その思いから、ろくにマリンやジュドーに挨拶せずに、ボクはロレア極東支部を飛び出した。


 ブイィィーンとエアバイクが軽快な音を鳴らし、ボクはマリン達と歩いた廃墟を戻っていた。


 エアバイクはその名の通り、地面から20cmほど浮いて走行するタイヤのないバイクで、アンチグラビティ装置と呼ばれる強力な磁力により、地球の磁力を反発させて浮いている。


『確かこっちで……。あ、合ってるね』


 瓦礫の山の中に、ボクの破壊した蜘蛛型メタリアルの残骸があった。


 イレーナさんがいうには、廃墟を歩きやすい蜘蛛型がメタリアルが大多数だけど。他にはたま空から攻撃をしてくる鷹型、俊敏性のある狼型、パワータイプのゴリラ型がいるらしい。


 どれもボクの記憶にある2000年代には、存在すらしなかったロボットだ。人間の世話をするのに、蜘蛛型やゴリラ型が必要なわけない。完全に戦うことを想定したフォルムだ。


 ピュン! ドガーン!


 どこからともなくビームが放たれ、ボクの進む前方に着弾し爆発した。即時に飛んできたビームの角度を計算して、上空へ視線を向ける。


 青空の遙か上空に、鷹型のメタリアルの機体がキラリと光った。


 次の瞬間、次々と降り注ぐビームの嵐。弾道計算を元にエアバイクを操り回避。反撃したいけど、上空からの攻撃にボクは手出しができない。


 メタリアルバスターなら当たれば倒せるけど、あれだけ早い速度で飛ばれると、当てるのは至難の業だ。


『どこか隠れるところは――』


 見渡す限りの廃墟。隠れたところで廃墟の山ごと破壊されるのが落ちだ。


『そうだ。確か機能の中に……』


 マリンとジュドーを助けるときに確認した機能一覧にあった見慣れない機能。誰が搭載したのかわからないけど、きっとメタリアルバスターのような戦える機能に違いない。


『《機能act》バディドローン!』


 ボクの背中がパカっと開くと、一体の小型のドローンが射出された。

 ドローンとは言っても2000年代のミニプロペラがついたものではなく、白い球体に二つの目が付いたUFOみたいな物体だった。


【 こんにちは 私はバディドローンです 】


 ボカンドカンと空爆されている状況とは裏腹に、ドローンは落ち着いた声で話しかけてきた。恐らくこのエアバイクと同じ原理で、宙に浮遊しているのだろう。


『あ、こんにちはー。じゃなくて! 助けてー!』


【 私は貴方を助ける高機能ドローンです 】

【 まず初めに 好みの会話タイプを教えてください 】


『あああ! もうもう! 早く早く! どれでもいいよ!』


【 ランダムを選択しました 】

【 会話タイプを サムライ になりました 】


『サムライ?!』


【 次は 拙者の名前を決めるでござる 】


 わぁ、本当にサムライっぽく喋ってる……。

 サムライって、ござる口調だっけ?


『って名前?! もう! なんでもいいってば! 早く!』


 こうしてる間にも、ビームの雨がボクに降り注いでいる。

 

【 モウナンデモイイヨ は文字数を超えておる 】

【 ちゃんと決めるでござる 】


『文字制限?! ええーっと、ムサシ! ムサシで!』


 自分の出したドローンと押し問答しているうちに、鷹型メタリアルが二体に増えてしまった。さらに攻撃は激しさを増す。


【 ムサシ 良き名前。承った 】

【 して主よ。何用でござる? 】


『あの空を飛んでるロボットを倒して!』


【 かしこまった。しばし待たれい 】


 ピピピピと音が鳴ると、バレーボールのような見た目のムサシは、物凄い速さで鷹型メタリアルに向かって上昇。


【 対象をロックオンしたでござる 】


 なんでも語尾にござる付ければ、許されると思ってない?!


【 《機能act》メタリアルソード 】


 急上昇したムサシの一部が開いて、光り輝く剣が出現。勢いそのまま、ムサシは剣で鷹型メタリアルに突進、貫通した。


 ドガーン! と爆発が起こると同時に、ムサシはもう一体の鷹型メタリアルへ向かって方向転換。その刃は飛んでくるビームを切り裂きながら鷹型メタリアルを貫通、爆破。


 ものの数秒で、ムサシは二体の鷹型メタリアルを倒してしまった。


【 対象の機能停止を確認したでござる 】


 ボクはエアバイクを停めて待っていると、スィーとムサシは降りてきて、ボクの肩付近に止まった。


『あ、ありがとう。助かったよ』


 それにしても、なんで鷹型メタリアルはボクを襲ってきたんだろう。分部位的にはどちらもロボットなのに……。その時だった。ムサシが意味不明なことを喋った。


【 酸素欠乏を検知 】

【 要救助者がいるでござる 】


『え? 酸素? 人間が近くにいるの?!』


【 距離0メートル以内なり 】


 え、どこ? すぐ近くに? その時だった。エアバイクのサイドについた救援物質ボックスから、ガタッと音がした。


『え? こ、この中?』


 ピッと、ボタンを押して開けてみると、信じられない事に中から女の子が現れた。その子は、青い髪の見知った顔……。


『マ、マリン?!』


「はぁー死ぬかと思った……。まさか中からは開けられないなんて思わなかったわ」

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