data009...ロレア極東支部

[ システム起動 ]

[ カーディナルチェック ]

[ 機能 異常なし ]

[ ゼクトネットワーク 接続エラー ]

[ GPS 接続エラー ]


 ウィィィンと唸りを上げて、システムが次々に起動していく。やはり外部との接続は全てエラーになっている。


「ゼロハチ? おーい。見えてる?」


 集音マイクが先に起動すると、マリンの声が聞こえてきた。まだカメラや発声システムは起動していない。


「壊れたんじゃねぇか?」


「まったく、めんどくさいものを持ち込んでくれたわね。ガルドナー、貴方の判断に任せるわ。危険だと判断したら攻撃して」


「イエッサー」


「もー! ゼロハチは危険じゃないってば! あ、起動したかな?」


 ぼんやりと視界が戻って来た。ボクの目の前には四人の人物がいるようだ。次第に鮮明になってくると、その姿がはっきりしてきた。


 一番前にいる小さいのはマリンで、後ろにジュドー。その横には見知らぬ白衣に金髪の女性と、さらにボクに銃を向けている坊主頭の迷彩服の男性。


『マリン。ここは――?』


 とりあえず安全確保のために視線を巡らせると、どこかの施設の中だと言うことはわかった。廃墟とは違う、しっかりとした作りの室内で、電気も付いている。


「ゼロハチ、大丈夫? どこか壊れてない?」


『うん。特に問題ないよ』


 答えながらボクは立ち上がると、頭に銃を突きつけられた。


「ふーん。確かに、理性を保っているわね。ガルドナー、下げて」


 白衣の女性が坊主頭の男性の銃を下げさせると、一歩前に出た。派手な金髪の髪にエメラルドグリーンの瞳、ボクの分析ではノルウェーと日本人のハーフだと分析結果が出た。


「ようこそ、ゼロハチ君。私はイレーナ。ここ、ロレア極東支部の支部長をやってるわ」


 差し出された手を握り返した。


『と言うことは、あの電撃は……』


「ごめんなさいね。うちの隊員が……。白い悪魔のメタリアルが蘇ったと思ったらしいわ」


 後ろに下がった坊主頭の男性がフンと、鼻息を飛ばした。


 確かに間違えるのも無理はない。ジュドーの話だと、世界を荒廃させる原因になった白い悪魔のメタリアルは、ボクに似てるって話だし。


「さ、ゼロハチ君は動いたわよ。何があったか話を聞くしてくれるかしら? マリン? ジュドー?」


 どうやら二人は、ボクが起動するのを待っていたらしい。


「わかったわよ。ゼロハチ、あなたも聞いてくれる?」


『え? うん。それは構わないけど……』


 マリンは、東京第七セクターで何が起きたか言いたくないんじゃないかな? ジュドーと話してる時にも、すごく元気がなくなったのを、ボクのセンサーも計測している。


「ゼロハチ君、悪いけどこれを被ってね」


 イレーナが渡してきたのは、黒くて大きな外套マントだった。


「施設の中には、まだメタリアルに忌避感がある人がいるからね。一応隠しておいて」


『わかりました』


 ボクは渡された外套を羽織ると、メカ部分が見えないように隠してフードも被った。


「こっちよ。いらっしゃい」


 イレーナに案内されて部屋を出ると、とても広い空間に出た。右を見ても左を見ても、人だらけ。そこでは驚くことに大勢の人が働いていた。


 あっちには、空中ディスプレイを操作している職員らしき人達。こっちには野菜を運ぶコックさん。あそこでは大きなレーダーの前で何やら作戦会議をする戦闘員。約150人近くの人がここでは働いていた。


『すごい……。こんなに大勢の人が……』


「ふふ、ロレア本部に行ったらびっくりするわよ? ま、ここの説明は後でするとして、こっちよ」


 そのままゾロゾロとイレーナについていくと、鍵のかかった会議室へ通された。


「さ、座って」


 大きなテーブルのある会議室は、ボクらが全員座っても余裕があるほどだった。順番に座るボクらを他所に、坊主頭の男性は銃を持ち入り口で待機した。


「単刀直入に聞くわ。やっぱりシルリアが原因?」


「ぅ……。まぁ、そうよ」


 マリンが罰の悪そうな顔をすると、下を向いてしまった。いつも元気なマリンらしくない。


「私、ちゃんと警告したわよね? シルリアは思想が危ないって」


『あの、シルリアってどなたです?』


 知らない人の事を中心に話されても、ボクはまったく話についていけない。


「ああ、ごめんね。第七セクターで作られた超能力者よ。世代的には、マリンの姉にあたるわ」


 マリンにお姉さんがいたんだ。でも、そのシルリアが原因って、まさか第七セクターがメタリアルに襲撃された事と、何か関係があるのかな。


「……今朝のことよ。突然シルリアが、第七セクターの防衛システムを破壊したの」

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