data003...同行者
銃を突きつけられたボクを、マリンが庇ってくれた。
「ジュドー、大丈夫よ。この子もナナロクと同じで、ネットにもGPSにも繋がっていない、スタンドアロン型みたい」
「どけ、マリン……。お前は知らないと思うが、俺がひぃじいさんから聞いた白い悪魔と特徴が同じだ! その額のVマーク!」
Vマーク? 鏡がないからボクの外見はわからないけど、手で触ると確かにV字型に凹んでるかも。
『あ! あの! 何かの間違えかと……。それよりも早く手当をした方が……。あれ?』
よく見ると、男性の負傷した右腕は機械だった。でも、どうみても人間だ。腕だけ機械……なのかな?
カチッと、ジュドーと呼ばれた男性が左手に持った銃のスイッチを入れると、ギュンギュンとなにやら銃の側面のゲージが緑に輝き出した。
「……お前は何者だ。答えろ。なぜここにいる」
ど、どうしよう?! 敵意がないことを示すために両手を上げて、ボクは必死に弁解した。
『え? えーっと、ボ、ボクは家庭用ロボットです。2300年に研究所で作られていたはずなのに、気付いたら1330年も経っていて……。それであの、白い悪魔とか世界がどうなったとか、あの……全然、わからなくて……その』
身振り手振りで必死にアピールすると、男性も怪訝な顔になってきた。
「……もしかして奴じゃない? 同型の別機種? ありえるのか?」
ジュドーさんは何やら思案すると、ふぅとため息を吐いてから銃を下ろしてくれた。
「……とりあえず敵対する意思は無いようだな。だが、怪しい動きをすれば直ちに破壊する。わかったな?」
『は、はい。あの、ごめんなさい。いまは何年なんでしょうか? 人間はどうなったんですか? この世界はどうして……』
「本当に何も知らないのか? だが、まずはここから離れる方が先だ。先ほどのメタリアルの信号を受けて増援が来るはずだ」
え? さっきの蜘蛛型ロボットがまた来る? ボクはエネルギーが切れてなんとか歩けるとは思うけど、さっきの兵器を使うのは無理そうだ。
『あ、近くにいないかサーチしてみますね』
「バッ! やめろ! 逆にサーチされるぞ! はぁ……余計なことはするな」
ジュドーさんに制止されて、ボクは機能を使うのをやめた。逆サーチなんてあるんだ……。危なかった。
「マリン歩けるか?」
「うん、平気だよ」
「おい、白い悪魔。お前は先頭を歩け」
「ジュドー。悪魔じゃないよ。ゼロハチって呼んであげて。私がつけてあげたの可愛いでしょ?」
「……ふん」
なんだかジュドーさんには、嫌われてしまったみたいだ。彼の銃で小突かれると、ボクはゆっくりと先頭を歩き始めた。
とにかく早急に離れた方が良いらしく、ボクらは無言でひたすら悪路を歩いた。それが原因なのか、途中でマリンが足の痛みを訴えたのでボクがおんぶする事になった。
『あの、どこに向かってるんですか?』
「いいから。俺の言った通りに進め」
「ロレアと合流するために、合流地点に向かってるのよ」
余計なことを言うなとジュドーがマリンを制したが「いいじゃない減るもんじゃないし」と背中のマリンが嗜めてくれた。
この二人の関係ってなんだろう? 親子? にしては似てない。
『あの、ロレア……? って、どなたですか?』
「人じゃないわ。ロレアっていうのは、レジスタンスの総称よ。対メタリアルのね」
『レジスタンス? って反抗勢力って意味ですよね? メタリアルっていうのは、さっきのロボットのことですか?』
「そうだよ。何百年もの長ーい間、私たち人間はメタリアルと戦争をしているのよ」
せ、戦争?! ロボットと人間が? どうして……そんなことに? ロボットは人間の生活をより良いものにする為に作られたのに……。
「チッ。本当に何も知らねえみたいだな。このポンコツは」
『ごめんなさい……』
それからしばらく歩くと、高い建物が無くなり風景が一変。辺りには少しだけど木が生えて来た。
それに伴って、ネズミなどの小動物がチラホラ姿を現した。人間が生きてるんだもん。その食料となる動物も生き残ってるはずだよね。
「待って、囲まれてるわ」
突然、背中に背負ったマリンが警告を口にした。
「チッ! マリン、何体だ?!」
「たぶん、二体かな。私たちの来た方角から一体。もう一体はこの側にいるわ」
え? 囲まれてるってさっきの蜘蛛型ロボットに? っていうか、マリンはどうしてわかったんだろ。
また戦闘になるのかな……。
ボクのエネルギー残量はほとんど回復したけど……。さっきの
って違う違う。ボクは家庭用ロボットなのに、何でこんな兵器が搭載されてるんだろ。もしかして他にも兵器が搭載されてるのかな?
「こっちだ」
内部のシステムを確認しようとしたら、ジュドーが一番近い建物へ入って行ったので、ボクもマリンを落とさないように慌てて後に続いた。
そこは、むかし飲食店だったのだろうか、広い空間にはいつくかの埃を被ったテーブルと椅子が乱雑に残されていた。
「……おい、ポンコツ。この道の先、屋上に木が生えてるビルがある。そこまでマリンをつれて逃げろ」
『え? それはどういう……』
「ちょっと! ジュドー! まさか、貴方一人で囮になるつもり?!」
「他に手がねぇ。このポンコツを囮にしたところで、俺らの足じゃ追いつかれるのは確実だ」
「そう、かもしれないけど……」
「いいな? 時間がねぇ。頼んだぞ!」
それだけいうと、ジュドーは銃を構えて建物の外に飛び出してしまった。
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