第19話 バンバーvsマーカス

当初の予定ではバンバ―とマーカスが戦う前に俺がバンバ―の代わりに戦う予定だったけど、バンバ―の経験のためにも多少の怪我をしてでも戦いを経験させるのは良い事なのではないかとの結論により俺たちは見守ることになった。


「(随分勝手で傲慢な考えだけどな。でも、最強を目指しているのは俺も同じだし俺だったら今の実力を知るためにも誰にも邪魔されたくないもんな。それにバンバ―なら何とかするんじゃないのか?)」


そんな直感で始まるバンバ―・ビバレンティノvsマーカス・スポルティフォ戦。


「ちゃんと1人で来たのは褒めてやる」

「で?こんなとこに俺を呼びだして何しようってんだよ?」

「・・・土下座しろ」

「は?」


マーカスの言う事が予想外だったバンバ―。


「土下座しろと言っている。平民風情が貴族様に盾突いて申し訳ありませんでしたと謝罪しろ」

「・・・王様がみんな平等だって言ってたじゃねえか?」

「うるさい!平民風情が貴族であるこの俺と対等なわけないだろうが!」

「・・・俺お前みたいな奴が何ていうか知ってるぞ。大物の陰に隠れる小物だろ?」


馬鹿にしたように挑発するバンバ―。するとその発言を受けたマーカスは怒り爆発。


「貴様ー!俺に盾突いたことを後悔させてやる!」


ダッ!


いきなりバンバ―に詰め寄るマーカス。その身体は身体強化をしているようだった。


ドン!


「ガハッ!?」


マーカスの動きについて行けずにモロに当たったバンバ―。


「バンバ―!?」

「レーオ!?」


ミリヤはバンバ―を心配しシェミールは俺に動かないのかを確認してくる。


ちなみに隠れているのでバレないように小声で叫んでいる。


「まだだ。あいつは防いでいた」

「ですね。ギリギリ両手で防御出来ていましたし」


だが、身体強化を使った3歳上の相手からの攻撃を身体強化を使わずに受けたバンバ―。


「へっへっへ・・・最初からそうすりゃあいいんだよ・・・でも、俺は騎士団長になる男だ!絶対負けねえ!」

「お前みたいな平民が騎士団長なんかなれるわけないだろうが!」


なんとバンバ―は何もなかったように立ち上がった。効いてないわけがない。おそらく初めての実戦でアドレナリンが出て気付いていないと言った感じだろう。


今度はバンバ―から攻めていく。


「おらあ!」


ドスン!


バンバ―がマーカスの腹にパンチ。バンバ―は他の生徒よりも随分早く魔力を動かせるようになっていたため身体強化も練習していた。だが、今までの練習よりも明らかに力が増していた。


「くっ!舐めるなよ!平民が!」


バンバ―の一撃を受けたマーカスは予想以上の威力に少しダメージを負うもすぐさま反撃。バンバ―の腹に向かって拳を振るう。


その至近距離からの一撃を喰らうもバンバ―は下がることで威力を軽減。さらに右腕に集めていたであろう魔力を瞬時に腹に集めることでさらにダメージは下がっていた。


「へっへっへ・・・なんとなく分かってきたぜ・・・身体強化ってやつがよ!」

「粋がるなよ!平民が!」


そのままバンバ―ののバトルは続いていく。しかしされてはいない。ついこの前に魔力を動かせるようになったバンバ―と魔物との戦闘などで実戦経験はあるだろうマーカスが劣勢という時点で本来ならあり得ない。


「すごいね!バンバ―!4年生相手に負けてないよ!」

「バンバ―くんには戦闘センスというものがあるんでしょう」

「・・・レーオはこうなることがわかってたの?」

「ただの直感だよ。だからこそいつでも動けるようにはしてる」


たださすがに予想以上ではある。セイレーレがさっきバンバ―には戦闘センスがあるって言ってたけど戦闘センスがあるなんてレベルじゃないだろう。


授業での練習と実戦を経験中のバンバ―では成長速度が段違いだ。普段でも階段を2段飛ばしで進んでいるのに対して、実戦中はまるでエレベーターを使っているかのようだ。


こうしている今もたった3~4分しか経っていないのに徐々にバンバ―の動きに洗練さが出てきて劣勢なのが互角になって来てる。


「すごい・・・すごいよ!もしかしたらこのまま勝っちゃうんじゃない!」

「がんばれー!バンバ―!」


純粋に小声で応援しているミリヤとシェミール。しかしセイレーレと俺はそうではなかった。


「・・・ですがあのプライドの高そうなが3つも年下の平民に互角の戦いをされてこのまま終わるでしょうか・・・」


確かにそれは俺も考えていた。しかしそれよりも。


「・・・セイレーレってみんなにとかとか付けるのにマーカスの事は呼び捨てにした?」


そんな場合じゃないっていうのは分かっているけどつい気になってしまった。


「うふふ・・・わたしもバンバ―くんのことはお友達に思っていますから・・・」


そう笑顔で言った。セイレーレは人一倍背が低いはずなのに誰よりも大きく見えた。


そんなことを言っていると事態は動き出す。


「・・・平民が・・・平民風情が・・・」


距離の離れている2人。


「平民平民うっせえんだよバーカ」


どうやらその発言が引き金のなったようだ。


「俺は!貴族だぞ!平民は黙って貴族の奴隷になっていればいいんだよ!火炎の大砲フレイムキャノン!」


ボガン!


子供を超えるほどの巨大な火の玉を放ったマーカス。


避けることも防ぐことも出来ないバンバ―はここで死が確定した。


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