第17話 学食にて

数か月がたった昼休み。学食でシェミール・セイレーレ・ミリヤ・バンバ―のいつもの面々で食事していた。


そう、いつも俺に突っかかっていた影響でいつの間にかバンバ―とは仲良くなってしまった。自称ライバルと言われている。


「なあ!レーオ!今日こそは戦おうぜ!」

「ダメだって言ってるだろ?先生にも危険だって言われてるし」

「そうだよ。それにバンバ―じゃ私のレーオには勝てないよ」

「そんなのはやって見なきゃ分かんねえだろ!まだ魔力も動かせないくせに男の世界に入ってくんじゃねえ!!」

「魔力はもう動かせるようになったもん!・・・ちょっとだけど・・・」

「へん!俺なんて1週間で動かせたし今では結構速く動くもんね!」

「むー!バカの癖に威張んな!」

「バカって言ったやつが馬鹿なんだぞ!」

「そんなわけないでしょ!バカンバー!」

「なんだと!バカール!」


ここ最近はずっとこの調子でシェミールとバンバ―がケンカをしている。さすがに学校の方針とは言え他のクラスメイトでさえこうまで面と向かって王女のシェミール相手に言ったりはしていない。


心が図太いというか何も考えてないというか。まあ、こうやってケンカをしてくれるバンバ―の事をシェミールも案外気に入ってるみたいだけどな。


「ふ!?2人とも落ち着いて!?喧嘩しちゃダメだよ!?」

「大丈夫ですよミリヤ。いつもの事じゃないですか」

「ほっとけばいつか収まるだろ」


心配するミリヤとそのまま我関せずのセイレーレと俺。すると、そんな2人の状況を見て痺れを切らした人物が。


ガタン!


「いい加減にしろ!クソガキ!」


突然立ち上がり大声が響き渡る。そっちの方を見ればその人物はバンバーを見ている。


そして怒りの表情で詰め寄ってくる上級生らしき生徒。


「お前!いくら学校の方針とはいえ暴言にもほどがあるぞ!」


どうやらこの上級生はシェミールへのバンバ―の態度が気に食わなかったらしい。


上級生に睨まれるバンバ―。しかしそんな事態でもバンバ―は一切引かない。


「みんな平等だって王様も言ってたじゃん。それを実行してるだけだろうが」


口答えされるとは考えてなかったのか上級生は顔を赤らめてキレる。


「平民風情が!スポルティフォ家に逆らう気か!」


どうやらこの上級生は貴族らしい。でも、俺は良く知らないな。そんな風に思っていると先ほどの上級生の言葉を受けてシェミールが割って入った。


「今の発言は看過できません。ターロス国の学校ではみなが平等であり平民と貴族に上も下もありません」


気丈にそう言い放つシェミール。すると、まさかのシェミールからの注意に顔を赤くして怒りの表情となっていた上級生も慌て始める。


念のために俺もいつでも出れるように準備はしている。


「しかしこいつの発言はあまりにも目に余ります!」

「なぜ下級生の私に対して敬語なのですか?敬語をするのは私の方でしょう?」

「それは・・・しかし・・・」


シェミールに言い負かされ後ずさる上級生。すると、誰かが呼んだのか先生がやってきた。


「何の騒ぎだ!何をやってるお前ら!」


先生がやってくると引き下がっていく上級生。最後にバンバ―を睨みつけながら。


その後は先生に事情を聞かれ説明する。


「そうか・・・またマーカスか・・・」


そうため息をつきながら呟く先生。


「先生はあの上級生を知ってるんですか?」

「ああ、マーカス・スポルティフォは4年生なんだが貴族的な考えが抜けないやつでな。入学当初はよくビーラットにすり寄ったりバングと喧嘩をしたりしていたな」

「あの方ならイメージできますね」

「バンバ―大丈夫?怖くなかった?」

「あ?あんなの怖くも何ともねえよ」


その後ご飯に戻るバンバ―。どうやら本当になんとも思ってないらしい。


その日の深夜。いつものように魔法操作訓練をしていると久しぶりにシェミールがやってくる。


「レーオ」

「シェミールお嬢様。どうかなさいましたか?」


シェミールがここに来るのも久しぶりだ。なにかと心配なことや不安なことなどがあるとこの場所に来る。


「・・・バンバ―を助けてあげて」

「それは・・・未来選択フォーチュンセレクトですか?」

「うん。なんだか嫌な予感がしたから使ってみたの。そしたら1つ目がバンバ―が死んじゃう未来。2つ目がバンバ―がボロボロの大怪我になっちゃう未来。3つ目がバンバ―が怪我をしない未来。だから私は3つ目を選んだの」

「どういった未来だったのですか?」

「・・・マーカス・スポルティフォがバンバ―を人のいないところに呼び寄せて戦うの。でも、バンバ―がいないことに疑問に思ったレーオがバンバ―を探すと今にも戦いそうな2人を見つけてバンバ―の代わりにレーオが戦うの。そうすればバンバ―は怪我をしなくて済むの」

「・・・なるほど・・・今回見えた未来はそこまでですか?」

「・・・戦いの後はバンバ―がレーオに助けたことを怒ってた。自分でも倒せたって。それでバンバ―と私たちは仲が少し悪くなるけど、でもバンバ―が怪我をしなくて済むのはこの方法だから」

「・・・かしこまりました。ではそのようにいたします・・・」


明日は一波乱ありそうだ。

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