第4話 県立体育館 2F 南側テラス




 N県星光せいこう市の県立中央体育館。

 入口の立て看板には【N県 高等学校 剣道競技 春季大会】とある。


 海原うなばら 瑛璃珠えりすは1階のフロアから 2階の観客席を見上げる。

 視線の先には 紺地の横断幕。

 剣柏けんがしわ付きの盾に帆船の描かれた校章。

 その上に 墨書風の文字で【一刀入魂】と大書たいしょされている。

 右下には 県立商業高等学校 剣道部の文字。



「マッキー!ちょい右側 下がってるから もうちょい上でくくって!」


「こんなもん~?」


「いいと思うよー」



 瑛璃珠は 2階席に戻ると 副将の橋本 麻季マッキーと 軽く打ち合わせを行う。



「うん。いつも通り。アップ終わったら防具の確認。もう大丈夫だと思うけど 1年生のは 丁寧に見てやってね」


「了~解」


「その間に あたしは 他校さんに挨拶回りしてくるから」


「聖心のカノジョんとこでしょ~? 相変わらず 熱いわね~」


「だ・か・ら・違うって言ってんでしょーがッ!あたしとアイツは 中学時代からのライバルなのッ!」


「へ~。10戦全敗でも ライバルってゆ~んだ?」


「9敗1分け! 言っとくけど この5年間 個人戦じゃ アイツ以外に負けて無いんだからね!」


「熱烈 片想い中なのよね~。全然 相手されて無いんでしょ?」


「そんなこと無いし。最近 アイツ 名前で呼んでくれるようになったし…」


「あ~ ハイハイ。ノロケ話は 後できくわ。取りあえず 部員は見とくし 挨拶行ってきなよ~」



 マッキーに 後のことを託して 瑛璃珠は 2F外側のテラスへと向かう。

 部員数50名を越える大所帯の県商と違い 部員数5名以下で同好会扱いの聖心館は ここのテラスでアップを行っていることが多い。


 ……いた。


 黒色の胴防具に緋色のまつり糸。

 艶やかな黒髪のポニーテール。



「……まっ松斎マツトキさん。調子は どう?」



 松斎と呼ばれた少女は 切れ長の目を 瑛璃珠に向けると ほのかな微笑みを見せる。



「おはようございます。瑛璃珠さん。この間 会った時 名前で呼ぼうって約束したじゃないですか。結羽ゆいはって呼んでくださいよ」


「そっ そーだったねっ。ゴメン 結羽。で 調子はどう?」


「いつも 試合前って 何だか心が ザワつくんですけど ここに来ると 少し落ち着きます……」



 そう言って テラス端のフェンスに手を掛ける。

 その視線の先には 満開の桜。


 

「城西公園の桜 ホントに綺麗だよね。毎年 春季大会くらいが満開だもんね」


「そうなんです。それに ここに立つと ほらっ」



 結羽の指さす先には きらめく水面みなも


 

「ちょっと遠いんですけど 海まで見えるんです。なんでなのか 解らないんですけど 私 小さい頃から 桜と海が大好きで 不思議と癒されるんです。なんか 前世の記憶とか あるんでしょうかね?」



 結羽は そう言って 小さく笑う。



「何だか 調子良さそうだね。でも 今日は あたしが勝つから」


「ふふっ。瑛璃珠さんの頼みでも こればっかりは 譲れませんね。でも 決勝で 試合えるのを楽しみにしてます」


「うん。決勝で会おう」



 そう言うと拳と拳をぶつけて 健闘を誓い合う。

 今日は 長丁場のトーナメント。

 第1試合は 午前9時から。

 決勝は 夕刻になるだろうか。

 2人の1日は まだまだ これからだ。



 街は 春たけなわ。

 1羽の燕が 2人の後ろの照明灯を静かに飛び去った。

 





 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△



 ここまで お読みいただき ありがとうございました。


【予告編】と銘打ちましたが 本編は プロット(ってゆーかメモ)段階で 1文字も書いてません······。

 

 基本的には 現世での瑛璃珠と結羽の物語になる予定です。

 硬派な長編ファンタジー期待した方 スミマセン。

 ゆるふわ百合です。


 三人称で書くのか?

 それとも 瑛璃珠視点の一人称か?

 はたまた 結羽と交互にするか?

 

 ······決めてません。


 まぁ 三人称にすると 読んでもらった通り 地の文大爆発で 会話文が沈むしなぁ。

 でも ルビ振りまくるの楽しかったし。

 悩みますね~。


 文体に関することなども ご意見 ご感想 いただけると嬉しいです。


 ▼△▼△▼△▼△▼


 エリス・オリゾンテ

 ユイハ

 海原 瑛璃珠

 松斎 結羽


 チラッとだけ七海さん出しました。


 このキャラクターが好き❤️みたいな話題も大歓迎です。

 今作では あまり外見の描写入れませんでした。

 読者様が受け取った印象なども教えていただけると 執筆の参考になるかと思います。


 よろしくお願いします。


 △▼△▼△▼△▼△


 最後に


 スティリアの裏サーシャさんの

 【Write or Read! お題で短編書いたら、激辛口で批評するよ。】

 https://kakuyomu.jp/works/16817330664744800702

 企画を見て 今作を書こうと思いました。

 機会を下さった スティリア様に感謝。


 ★の数が加点になるそうです。

 今作 気に入った または 本編書けよって思った方は ★★★よろしくお願いいたします。

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