ハヒルの迷惑〜(中)ギルド嬢と冒険者は関わってしまった
「私の名はハヒル、イブキ様の一番奴隷だ。好きな言葉はナンバーワン!良し、まずはアイテム屋に行こう。アイテム少年、お前がいるとガムをよこすかも知れん」
全然目的が分からないままアイテム屋にガムを…パルフェも「が、ガム?」と依頼書を持って唖然としている。
「君等が何を討伐に行くのか知らないが、コイツといると死にはしないから安心してくれ。一応アーヌー…の中では一番強かった…ただちょっと…それにアイテム屋かぁ…アイツの所、また行くのか…」
アイテム屋?ガム?何を言ってるのか分からない…横から多分、ギルドマスターが教えてくれた話…本当だろうか?
「ね、ねぇ、サブロ?本当に大丈夫なの?」
パルフェが恐る恐る聞いてくるが僕に言わないでもらいたい。
「良し、善は急げ。イブキ様曰く、ホットパンツのサイズとスピーチは小さいほうが良い。行くぞ!」
こうして意味不明な説明と共に、アイテム屋とやらに連れて行かれた…
少しだけ歩くと寂れた骨董品のお店みたいな店に着いた。
骨董品と言っても僕には分かる。一級品の魔道具ばかりが…
バリバリバリッパァンッ!!!
突然、店に入ろうとしていたハヒルさんに電気が流れた後、爆発した!?
しかし何事もなかったかのように入っていく…
ぬ
「おい!女性器、ガム寄こせ!持ってるのは知ってるんだぞ?」
「女性器じゃない、ヴァルナだって言ってんだろう?後、お前に売るもんはねぇし、ガムもねぇ、帰れ」
ヴァルナ!?大きい三角帽を被ったピッタリとしたワンピースのようなセクシーな格好の女の人…この人は…ガリ国の英雄、そして数々の伝説、あの大魔導ヴァルナ!?
アーヌー・スホールの飛躍の立役者、最大級の魔法の飛び交う魔王軍との最前線で魔族の長、魔卿の魔術師団を全滅させた大魔法を使うという大魔導師ヴァルナ。
横を見たらショコラが涙目でプルプル震えていた。ショコラはヴァルナさんの活躍と、その伝記を見て魔道士になった程のファンだ。
「あ、あの!ヴァルナさん!私!…はですね…ヴァルナさんに憧れて!特に最前線での活躍の所は感動で!その!…」
ヴァルナさんは指輪の沢山着いた指を唇に当てるようにしてウィンクした。
「言わなくても分かってるよ、その私と同じ三角帽子は装備としては意味無いからネ?それ付けてる魔道士は私の真似してやってるん…が【ガゴォッ】
ゴロン
僕の目の前で信じられない光景が…唇に指を付けて美しく微笑んでいたヴァルナさんの顔が、急に真横になった…と、同時に顎が外れていたのか、上下の唇が完全に横にズレた。
その状態で白目になった…そしてそのまま椅子から前のめりに床に転がった。
ハヒルさんが全く見えない速度で多分ヴァルナさんのアゴ辺りを殴った…
なぜ分かるかと言うと、その状態になる直前に小さい声で「話が長いんだよ」と言ったからだ。
ショコラが絶望的な顔をしている…そうだろう。憧れの人と話している途中に目の前で殺されたからだ…いや、死んでるかは分からないけど…
『本当にどうしょうもないな、お前は…』
脳に響く声が聞こえたと思ったら、光に包まれたヴァルナさんが立ち上がり、また椅子に座った。
明らかに顎と首の骨が折れた気がしたが全て元に戻っている…これが伝説の…
「全くハヒルは…会話の出来ない馬鹿、この子達を置いて森に帰れ」
「イブキ様曰く、お前のウソのドヤ話はどうでも良い。jソンの情報もガムをよこせ。警官が噛んだ後のガムは体力が全回復するという、異世界のガムをな。それにガムと鏡とナイフがないと見つけられないらしい…Jソン少佐を…」
「またイブキのホラ話…存在しない魔物を探しているのか?コイツ本当に馬鹿だな…Jそんとか言う魔物は私の占星術で調べたが上空にそんな魔物いない。ガムもそんな効果ない。」
クチャクチャ…ペッ
ヴァルナさんが何か地面に吐いた、多分…異世界の流れ着いたガムとさの模造品、味のある子供のお菓子、これもまたガムというが…それを地面に吐いた。
しかし、ショコラはその話を聞いて物欲しそうに見ている…その一線を越えてはいけない…彼女は本当にヴァルナさんを尊敬してるからな…
「ほら、食えよクソハヒル?はぁ…イブキもな…奴隷なんか買わず私の奴隷になれば良かったんだ、もしくは私を奴隷のように【ガゴォッ】
ゴロン
「一番奴隷の私の前で何を抜かすかキサマァッ!イブキ様曰く…イブキ様は言ってないが一番奴隷を差し置いて主人に手を出すのは万死に値する!!後、態度がムカつく!!!」
いつまでやるんだコレは…そして少し経つとまた光に包まれて立ち上がり椅子に座るヴァルナさん…
「とにかく少年少女達よ、コレを持っていくと良い。」
ゴソゴソ奥から何か持ってきた。
三角帽子と、腕輪のようなガントレット、そしてアイテムバックだ。
「本来は君等の実力ではこの店を見つける事も出来ないが…まァ元クランのメンバーが迷惑をかけているみたいだからな、迷惑料って事で…効果はそれぞれ書いてあるから活用しておくれ、君等がいつか素晴らしい冒険に出会える事をねが【ガゴォッ】
ゴロン
この人はさっきから何が気に入らないのだろうか?話の途中で殴るのを繰り返す…
突然、倒れたヴァルナさんを逆さにして椅子に乗っけ、指輪を外した。
こちらに見せつけるように大股開きで白目を向き、よだれを垂らすヴァルナさん…美しい肢体は見る影もなく、どうやら失禁しているようで身体に張り付くようなセクシーなワンピースを伝って水滴が地面に落ちる…
余りの憧れの無様な姿に、ショコラが口を抑え涙目になっている。
「こいつはな、こうして…こう、逆さにして指輪を取ると、誰かに見つかるまで意識が回復しないんだ。ずっとこうしてれば良い…では行くぞ!私が地元の冒険流儀を見せてやる」
え?ここに何しにきたの!?
外を歩きながら何かに気付いたように振り返った。
「そういえばお前等…チンポコチンとチンチクリンとチンチンチンはどんな依頼を受けたのか?」
一瞬、誰の事を言ってるのか分からなかったが、パルフェが応えた。依頼書をハヒルさんに見せる。
ショコラは憧れの人からの贈り物と同時に無様な姿を見た事に脳の整理が追いついていない。
「ご、ゴブリンの討伐です。コレを終わらせないと宿に泊まれないので…」
場が混乱していた為に言えなかったが、ヴァルナさんのくれた荷物の中に換金アイテムが入っていたので、それを売れば別に宿に泊まれる…
「あぁ、緑の少年兵か。豚、オークに転生しそこなったギルドの嬢は少年愛が強すぎるからな。あの変態…まァ良いだろう。お前等はjソン少佐を殺すのを手伝ってもらうからな、依頼も手伝ってやろう」
「緑の…?とにかく宿に泊まりたいので近くの巣を見回る依頼ですが…」
何だか会話が成り立っていない状態のまま、ゴブリンの巣まで来た。
ゴブリン…緑色の小鬼と呼ばれる単体では人間の子供ぐらいの強さだが恐ろしいのは集団で動いた時だ。
特に上位種のゴブリンメイジやロード、キング等がいると集団行動を取り始め危険度が飛躍的に上がる。
だからまず、常に逃げられる準備をして…
「良し、野営の準備をしろ」
はい?僕が止まっているとパルフェが言った。
「今回は偵察なので野営の準備は…」
「何?そんな逃げ腰では少年兵に笑われるぞ?」
「いや、そういう話ではなくて…」
洞窟の数メートル手前の森の出口でマゴマゴしていると、ハヒルさんは話を無視して洞窟に向かっていった。
そのタイミングでちょうど洞窟からゴブリンが出てきた!?不味い!逃げないと…
「ギャーッ!?ギッギャー!!」
ゴブリンが驚愕した顔でハヒルさんを指さした!?
「イブキ様曰く、『ギッギャー』というのは『イエッサー』という意味。イエッサーとは『私は上官どんな命令にも従います』と言ってるらしい…流石イブキ様の知識よ…今、緑の少年兵と契約が果たされた」
すぐ二、三匹のゴブリンが洞窟から出てきて歪な弓矢を構えた!
素早く前衛のパルフェが盾を持って僕らを庇うように前に出た。
「サブロ!ショコラ!下がって!え!?これスゴッ!?」
腕輪が光のガントレットに変わり盾を触媒に僕らを完全に隠すように巨大な光の盾が生まれた。
ヴァルナさんから貰った両腕の腕輪、あらゆる武具の効果に光の魔力を上乗せして効果を倍加させると書いてあった。
後、貰った武具は全部、即死無効の呪印が付いていた。
装備の裏には【イブキ】の刻印…多分これは伝説の魔導器使い、イブキの作品だ…
「これならゴブリンなんて余裕だよ!」
「わ、私も!この三角帽子凄い!魔力が増幅の幅がおかしい!」
魔法【ファイアボール】の準備をするショコラ、本来であれば杖の先に頭一個分の火の玉が出来るが、どう考えても2倍はある火の玉が出来ていた。
僕のアイテムボックスも凄い効果が…
『ギッギャー!ギギーッ!!』
シュッシュッシュッ
矢が飛んで来た!僕らに飛んできた矢はパルフェの光の盾が弾いた。
「前にいたハヒルさんは!?え?」
ハヒルさんは矢が刺さっていた…
「イブキ様曰く、弓矢とは回復。鍼灸という異世界の回復の極意也。緑の少年兵、可愛い奴め。安心しろ、私の体力は全快だ。お前等も回復してやろう。」
自分に刺さっている矢を抜いて、ゴブリンの眉間に投げつけた。
『ギ【ストン】………………』
矢が眉間に刺さり絶命するゴブリン…
「そう、鍼灸とは眠くなる。疲れていたんだな。少年兵よ。お前等は来たるべきマンタレイとの一戦で玉を運んで貰わなければいけないからな、今は休め…」
休め…というか永遠の眠りについているが…
ストン!ストン!ストン、ストン!ストン!ストン!
『ギッギャー!ギッギャー!ギャヒヒ!ギギーッ!』
「ハハハ、素晴らしい『イエッサー』だ。感謝は要らんぞ!これも上官の努め。出来る上官は部下の休息を怠らない」
僕はゴブリンの言葉は分からない…だけど何となくだけど…この人はゴブリンに存在を認識されているような気がする。
『ギッギャー』っていうのはこの人の事を言っているんじゃないか?だって指さしながら言ってるし…
「それでは早速緑の少年兵のお宅にお邪魔致しましょう、皆さん、こんにちは?」
恐怖の色に染まり逃げていくゴブリンを尻目にツカツカと洞窟に入っていくハヒルさん…
姿が見えなくなり
「おや?なんという事でしょう、青の介護兵に紫の将校もいるじゃないか?良し!ここは対マンタレイ砦とする!」
「ハハハ、相変わらず色付きはワンパクだ!だが上官への反逆は極刑だぞ!?ワハハ!」
僕等3人は困っていた。気付けば盾も光を失い、巨大な火の玉も消えていた。
「とりあえず…野営じゃないけど拠点作るね…」
僕は荷物を置いて簡単な荷物置き場を作る…ショコラも無言で手伝ってくれた。
「私…ちょっと様子見てこようかな…」
まぁそうなるよね…中から聞こえてくる意味不明な独り言。
「お!?相変わらず元気だな!?元気が一番!しかし上官に逆らう悪いやつは極刑肉団子の処す!皆、見ておけ!」
『ギャーーーーーーーッッッ!!!』
姿は見えないがゴブリンらしき断末魔がこだまする。
それをパルフェが覗いた瞬間…事件は起きた。
「ちょっとハヒルさ…ヒッ!?」
グチャッという音と共に高速で飛びかかって来た何かにパルフェが押し倒された!
血みどろの肉塊、いや、アレは…
「ゴブリンメイジとロードだ!!!」
ゴブリンメイジ、ゴブリンの魔道士…ここまではまだ良い。
しかし青色のゴブリン…ゴブリンロードは不味い、オーガという種族と同じ化け物クラスの膂力を持ってゴブリンを従える。
村の近くに出た時も、パルフェ1人では到底叶わない相手だった。
別の冒険者に助けられなければ、巣に持ち帰られパルフェは…というトラウマ的な相手だ。
現にロードの死体の様な物が乗っかり動けなくなったパルフェは、トラウマを思い出し歯を震わせて失禁している。
「た…た…助け…誰か…ヒ…ヒィ…」
『ギ…………………ギ………………』
死体と思っていたゴブリンロードがゆっくりとパルフェの顔を掴む!
「まだロードが生きている!魔法でトドメを!」
「ショコラ!よせ!今ロードを狙えばパルフェも巻き添えになる!ここは僕が」
大事な幼馴染を助けなければ!僕は短剣を
『お前等動くなッッッ!!チンポコチン!!ロードが!ロードか開いたんだな!?来るぞ!マンタレイが来るッ!動いた者から狙われるぞ!絶対動くな!』
洞窟の中から大声で叫ぶハヒルさん…
「と、どうすれば!?何が来るんですか!?」
『バカヤローッッッ!2Bマンタレイだ!つまりjソンが口から狙ってるぞっ!絶対動くなよっ!!空を注視しろ!対空兵器準備!始め!』
ゴブリンロードも動きが止まった…一体何と僕らは戦っているんだ…
いよいよ僕らの戦いは、クライマックスに…なるのだろうか?
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