絶望の英雄、ハヒルの話を聞いて望まない方向に絶望する

 地獄絵図のような状態だったが、大事な部分丸出しの姫が息を切らせながら『落ち着きなさい!』と一括して収めた。


 客観的に見ると「お前が一番落ち着けよ」というか格好だったが言うまい。


 そして時折、俺を含めミンク姫の体液で出来た水たまりを見ると睨んでくるがそれはしょうがない。


「貴女が…ハヒル殿だったんですね…これは失礼しました…」


 間違い無く失礼したのはハヒルだが、頭を下げ謝るレイランドの姫、ミンク様。流石一国の姫である。


「ふむ、イブキ様を慕わなければ別に良い」


 何でコイツは奴隷なのに偉そうなんだ…いや、完封はしたけど…


「2人の噂は聞いていました。最高の支援職と最強の…あの…アレだと…」


 アレという表現で評判になる奴隷、ハヒル。

 一体何をやっていたのか…とりあえず俺は関係無いアピールする。


「私は姫の教育と、王宮で武具を作っていただけですよ?ハヒルは何をやっていたんでしょうか?」


「とりあえずその、明らかに嘘をついている演技っぽい話し方やめてもらえませんか?」


 ミンク様になんか酷い事言われた、何故ヘイトかすぐ俺に向くのか?

 とにかく俺は悪くないと先に伝えておく。

 Jソン少佐の件は有耶無耶にするしか無い…


「それでは我々から問いましょう…同時に確認したい…考えたくはないですが…貴方方は味方か…それとも敵か…」


 ミンク姫を筆頭に剣に手を置き、いつでも戦える覚悟を向けてきた。

 敵…と言われるような事はした覚えはない。

 俺は極力気配を消した…しかしハヒルは違った。


「ムゥンッ!ハッハッ!セイッ!」


 突如、俺が教えた嘘軍隊格闘術とボクシングの真似事の動きをした…せいでビクっとなる皆さん。


 多分、ちゃんとやってる人が見たら目茶苦茶なんだろうが、狂ったように肉体言語に特化したハヒルのシャドーボクシングは『戦ったら死ぬな』と思わせる威力をはっ


「ハッ!」『ガッ!!』「うおわぁ!?」


 突然、ハヒルにキンタマを掴まれた!?


「お慕い!ゲットだぜ!ですぞ!」


 人の事を主と言いながら侮辱と脅迫を重ねる奴隷…


「イブキ様の言う通り、お慕いの詰まったボールを手に入れる喜びをゲットと表現しました!」


 そんな事教えてない、言ってない。

 先程までミンク姫に目茶苦茶をしていて集まっていたハヒルへの注目が俺の股間に集まった。


「ハヒル…おやめなさい…皆さんの話を聞いてご覧なさい…」


 やはり俺も人間の男…キンタマを掴まれていると敬語でオカマ口調になった。

 そしてミンク様も話を進めたいらしい。

 

「あの…話を進めても…よろしいでしょうか?貴方達は各国で多数の功績をあげ、各国も感謝の意を表明しています。その上で…様々な問題への嫌疑もかけられています。ハヒル殿、回答、お願い出来ますか?」


 功績があるなら良いじゃない、もうやめようぜ。

 ハヒルも?みたいな顔してるがどういう事か分かんないし。良いからキンタマから手を離せ…


「ハヒル、答えあげておくんなさい」


 俺への魔女裁判はよせ…そんなもんハヒルに聞けと、キンタマを抑えられ口調がブレブレで適当に流していたら…


「まずこのガリ国にて、ハヒル殿はスタンピードの制圧を単体で行いましたね?」


「あぁ、イブキ様曰く、あのギルドのジョーが起こした策謀な。あの変態ギルマスチ◯コが騒ぐから豚が一杯出てきてギルドの嬢が乗ってんのかと思ったらなんか動物が一杯出てきただけだった」


 おおう…何言ってんのかわかんねぇし、俺が言ったらしい…


「スタンピード…魔物の厄災と言われる現象を起こすのに大量の魔石…つまりダンジョン内に大量の死骸を集まるとスタンピードが起きると言われていますが…スライムの死体をダンジョンに集めていたのは本当ですか?」


「あぁ、イブキ様曰く、スライムを色を合わせて3体づつ同じ肉片にする。それを大量に山積みにすると、連鎖が起きると。するとお邪魔PUYOというのが落ちてくる、つまりB2マンタレイが高度を下げる寸法だ。ただ、私の実力不足なのか、一番下を4つにしても何も起きなかったな」


 …これは駄目だな…もう駄目だ。


 横を見るとシャール…いや、ケンジだっけ?が凄い顔で見ていた。

 あ…ヤバい…コイツ、向こう…日本の事知ってんだ…


「いや、何となく気付いていたけど…お前ヤバイな…しかし…歩く黒歴史ノートとはこの事だな…」


 俺は冷や汗が止まらない…コイツ…知っている…そして俺の好き勝手言った嘘をハヒルが昇華させ…俺は異世界厨二病野郎の濡れ衣をうおおおおおおお!?


 そんなシャールの従者、ハイエルフかな?の女の子が怖い顔でハヒルに詰め寄った。


「では何故…何故!?大量のゴブリンを使ってエルフの聖域を意味不明な脅迫をした!?代々続く墓場にゴブリンの死体を撒き散らした!?我々はッ!お前のせいでッ!!」


 ハヒルが眉間に皺を寄せて考えている…意味不明って分かってんだからそ~しとけよ…意味不明なんだから…

 すると何故かシャール…いや、ケンジが援護してきた。


「いや、シエル、だからさ、お前らに何回も言ってるけどアレに意味なんか無いって言ったじゃん。何で分かんねーんだ?しかもウチはゴブリンの被害で困ってたんだから、的になってくれて一石二鳥じゃん、墓なんか後で掃除すりゃ良いんだから」


「貴女は元女王という自覚を持って来い下さいッ」


「ケンジ…ハヒルは何かやったのか?」


「あぁ…お前も…お前名前なんてーの?転生前の、厨二病?クラ◯ド?」


「ちげーよ!樋口だよ、ひ、ぐ、ち!」


 クソ、コイツなめくさってるな…


「ヒグチな、名前じゃね〜じゃん…まぁ良いや。そこのヒグチの奴隷のハヒルちゃんがな、ゴブリン被害で困っていたエルフの聖域というか城の前で、ゴブリン教育して…なんつーんだ?何か小学校の運動会みたいな事してたのよ」


「はい?」


「凄かったぜ、聖域って言っても森の中に樹で出来た城があんだけどさ、その城の前で大量のゴブリンがずっと組体操とか、ソーラン節?やったり、大量のゴブリンで生きてる緑の奴と死んだ血塗れのゴブリンで「おりてこい」って人文字書いて煽ってきたな(笑)で、こっちも弓とか魔法で殺すじゃん?怖いから。そしたらエルフ王の代々の墓に細くて長い木があるんだけど、そこに死体を刺して帰る訳よ、オレはもう笑ったね、小学生みて〜だって、フフフ…そんで当時のエルフの族長達がノイローゼに…」


「笑い事じゃありません!『おりてこい』だけじゃありません、その後に『エルフに死』とも書いてきました…それに数万単位のゴブリンが…聖域近くに生息する殆どのゴブリンが参加していたんです!それをコイツが!」


「そんな事は緑の少年兵に指示していない、『おりてこい マンタレイ』と書いて、空から見える様に伝えただけ、そして長い棒があったからイブキ様曰くモズの早贄を…あ!?思い出したぞ!私が緑の少年兵を使ってマンタレイの高度下げの儀式をしている時に妨害していた奴らか?お前等のせいで少年兵は、壊れちまったんだぞ!?私は将校として涙した。」


 ハヒルは何をやっているんだ…

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