絶望の英雄、ハヒルとの再開(雑)コイツ、行くとこまでいってんな

「イブキ様!?アレは何ですか?名前を呼んでいましたよ!?説明をして下さい!」


 レイランドの姫様が必死に俺に説明を求める。

 その説明を求められてる生き物は…


 魔族のチェさんの身体を八つ裂きにし、心臓を取り出していた。

 魔族は生きた時間や強さに応じて心臓が複数あると聞く。チェさんはどうやら3つ…

 3つは魔族でもかなりのランクの高さだ。


 その心臓を取り出し食った…ハヒルが…

 

「魔族のハツ!イブキキャア様も好んで食べるというハツ!煮て良し焼いて良し、採れたてなら生が1番!イブキ様の言う通り旨し!また一つ、残機が増える!」


 俺はそんな事、教えてない。

 いや、焼き鳥でハツが好きな事は言ったが魔族のハツは好きではない。

 ハツが家畜の話、魔族の話ではない。

 後、残機が増えるのは違うゲームの話。


 そしてこちらを見てニタァと笑った様に見えた。

 実際は黒いオーラを出したピンク色の人の形をした何かなのだか…


「イブキ様!?敵なのか味方なのかだけでも教えて下さい!早くっ!」


 このお姫はせっかちだな。王様にも早くって言ってたしなぁ。

 俺にも考える時間をくれ、と思っていたら、既に剣を構えていた。


 がぽァッ!「ムクガッ!?ムガー!!」


 なんか仰々しい、格好良い剣だなぁと思った直後、レイランドの姫様の足が地から離れた。

 姫様はハヒルのアイアンクローの形で口を塞がれてたまま持ち上げられ、必死に抵抗していた。

 苦悶の表情の姫とは対象的にとても嬉しそう(に見える)なハヒル。


「イブキ様、お久しゅうございます!永年、お慕い申して推したい!この女が最後の仕上げ、B2マン◯レイが地上に降りたサイボーグ!2Bですね!?まさか逆に読むとは恐れ入った!高高度へは浮かせんぞ!死ねい!」


 何が?全然分からない。何も理解できないものを『ですね!?』と言われても…


 するとレイランド姫は剣に魔力を込め、眩い光を放つ…その姿が先程までの胸当てや肩当てだけある軽鎧ではない。

 全身を様々な紋章が描かれた光の重鎧に包まれた。

 そして手をスッと動かすと自らを掴んでいるハヒルの腕を光の剣が両断した…様に見えたが切れて無い。

 

「キエッ♥」ペッッッッ!!!


 剣で切られた様に見えたが腕はそのままより強い力で姫の口を塞いでいる。

 そして口から【歯】か?

 口から白い何かを剣の持ち手に当てると、手のひらに穴が空いた…同時に剣を落とし元の姿に戻ったが…顔が…


 姫は酸欠で紫顔に目が血走って涙を流していた。全身が脱力していた…時折、俺を睨む…


「イブキ様!種明かしでございます!切れたと思った手!?実は天衣兎萠、斬撃と小さい弾での狙撃なら即回復で死なない様になりました!致命傷だと集めた心臓が一個減りますがここ何年かで魔族のハツを大分集めているので問題ありません!まぁ今のは自然治癒だけで大丈夫ですぞ!カッカッカ!」


 天衣兎萠のせいなのか、キャラも無茶苦茶にブレている。

 そもそも天衣兎萠にそんな機能は無い。

 

「さぁそして!緑の少年兵で学んだのはですな、四肢、その次に股間、顔、そして最後に心臓と、じっくりと痛みと恐怖に陥ったハツは旨いという事!まずは手足をもぎ取りから始めましょうか!?」


 剣を持っていた姫の利き手を掴む。

 姫は軽鎧姿だったので鎖帷子のようなタイツに皮のミニスカートだったが思いっきり漏らしていた。

 そしてこちらを見る、今度は睨みではなく助け…助けを求めている…一国の姫だからな、こんな所で意味わからない理由で、意味わからない奴に殺される程、安い人生では無いだろう…じゃない、助けないと後がヤバい。


「待て…それはマンタレイではない…更に言えばアレはJソンでは無い。魔族のチェさんだ」


 目を見開き(ピンクの塊だから実際は分からない)こちらを向き、後退りするように驚くハヒル。

 

「お前如きに捕まえられるマンタレイではない。勿論、Jソンもな…そもそもJソンはライアンのプライベートな時間、プライベートラ…イアンでないと出現しない」


 嘘に嘘を重ねていくと、たまに元設定を忘れる。

 更に言えば元の映画もあまり覚えていない。

 

「そ、そんな…それではまだ奴は私を!?」


 まだ続くのか?もう意味のわからない世界観に適当に話し合わせるのにも限界なんだが…こうなったら…


「バカモノッ!手を離さんかッ!!」

「ファッ!?」


 ドサ…


 地に力無く落ちる糞尿垂れ流し泡吹レイランド姫…鎧姿も美しい姫が何たるZAMAだ…

 この厨二病の子供のようなハヒルを止める為、昭和の中学教師の様に意味不明に怒鳴った。


「確かに…私は…やはり1人では…お慕いが…足りず…コレが…無ければ…勝てないのか…」


 俺は驚愕した。何故なら凄い速度で俺のキンタマを掴んだからだ。

 キルカメラが姫から俺に変わっただけじゃねーか。ふざけんな。


「ハヒル…離しなさい…ハヒル…何故すぐ掴むんです?…」


 しかしやはり俺も男…キンタマを掴まれた状態では敬語の1つや2つ出てしまう…


「分かりました、説明しましょう…ちょうどここに、肉人形があります」


 ハヒルが天衣兎萠を解いた、この1〜2年で思ったより成長したようだ…主に肉体が。


 ハヒルは不様な姫のスカートを引き裂き鎖帷子を剥がした。大事な部分が丸出しの姫。

 更に胸当てを剥がし衣服を裂く。たわわな胸が曝け出された。

 

「ココとココ、スーッ力が集まるんですね。すごい力が集まるんですねぇ、凄いですねぇ」


 指を指しながら往年の名アナウンサーの様に説明を開始した。


 ムニッ…ズブ…


 意味不明な説明をしながら普通に触り始めた。

 しかし流石にそれで意識が戻ったのか、姫は自分の状況を確認する。


「グッ!?クウ…あ、アレ…さっきまで息が…それで…ギャアアアア!?!?」


 自分の置かれている状況に混乱する姫、しかしハヒルは追撃の手を緩めない。


「おおっと?まだ説明途中なので…」


 素早く綺麗なロメロスペシャル、まるで姫は空中で綺麗なガニ股ブリッジをしているような姿になった。

 

「いや!やめてぇ!イブキ様!いや、転生者イブキ!これはどういう事だ!?聞け!イブキィ!こんな事して私は許さなッグアアアアッ!?」


 ハヒルが姫を、ゆっさゆっさと両手足を掴み背骨を弓なりに曲げている。

 ハヒル…口を塞げよ…質問されたら答えられないだろ?


「イブキ様を呼び捨てにするならそれなりの実力を見せよ!さぁ!」


「グッガッ!この私を舐めるなッよッ!」


 再度、魔力が高まる。

 一度あんな負け方してるのにまだやるつもりだ…


「ミンク様ぁー!応援に参りましたッ…え?」


 ヤバイなぁ…他の人来ちゃった…レイランド姫ってミンクって言うんだな…と、俺が現状を見ないようにしながら葛藤していると、そのミンク姫の周りを光が漂い先程の全身鎧が…股と胸だけ開いた状態で装着された…


「なんでぇ!?いやっ!?出ちゃッ!?あぁあ!?」


 プシイイイイイイイイイイイイイ


 勢い良く胸と股から黄金の水分を噴射するミンク姫…その黄金が俺にぶっかかる。


 ペロッ…これは…魔力だな。じゃない、説明をすんの?俺が?


「この様に!強化しようとする者の穴をオープンにする!すると溢れ出すエネルギー!これぞイブキ様に捧げる肉人形のエネルギー、御賞味下さいませ!」


「いやぁ!やめてぇ!絞り出さないでぇ!」


 コイツの中で俺はどういう生き物になっているんだろう。

 魔族の心臓(ハツ)を好み、人間の排泄物を浴びる様に飲む。


 集まってきたミンク姫の部下や他国の従者が俺を見る。


「これは…どういう事ですか?」


 どういう事だろうな。

 


 


 

 

 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る