第53話

「ぎゃあぁぁ!!」

ズシャッ!!


燃え上がるテントと逃げ惑う兵士たち。

俺は容赦無く斬り伏せていく。


「ホ!!」

ズシャッ!!

そして魂兵たちもふざけた声を上げているが、容赦無く兵士を殺している。


圧倒的だ。

そもそもこいつらは戦う準備すらできていない。

武具を身につけている暇もない。


「ひぃ!!」

「はっ!!」

ズシャッ!!

俺は手に残る感触を楽しみながら、逃げ惑う兵士たちを次々に斬り捨てていく。


兵士の身体能力は、魂兵レベル1とほぼ同等だ。

俺からは逃げきれない。


「ひぃ!!」

ズシャッ!!


「うわあぁぁ!!」

ズシャッ!!


「た、たすけ……」

ズシャッ!!


俺の中の理性がどんどん吹っ飛んでいく……

こいつらは人ではない……

ゴミだ。

俺はゴミ掃除をしているのだ。


タッタッタ……


「逃げるな!!」

ズシャッ!!

「ぐぁ!!」


感覚が研ぎ澄まされる。

この騒ぎの中、逃げてる兵士の足音も聞き逃さない。


フハハ……バカめ……一人残さず殺してやる!!


下民の方も騒がしくなってきたな。

絶賛混乱中といったところだろう。

俺がここに奇襲をかけることはエイハンに言ってある。

あっちはエイハン次第だな。


□□□


「なんだ!!」

「なにが起きてる!!」

「奇襲だ!! 向こうのテントが燃えてるぞ!!」


「「「………………」」」

下民の兵士たちは呆然と立ち尽くす。

こうなった時点で下民の兵士たちは家族を含め、奴隷落ちか処刑確定だ。


「おい!! こっちだ!! こっちへ来い!!」

エイハンが立ち尽くす下民の兵士たちを大声で呼ぶ。


「あれは……?」

「エイハン!? エイハンなのか!?」

兵士たちはエイハンに駆け寄る。


「おい!! お前、無事だったのか!?」

「まぁ……そうだな。完全に無事、とは言い難いな……」


「何があったんだ??」

兵士たちはエイハンに詰め寄る。

「今のお前たちと同じだ。上民の兵士や指揮官がみんなやられてしまった」


「一体誰に!?」

「……それよりも、これからどうするかが重要だろう?」

エイハンは話を逸らす。

今まさに襲撃している人物が、自分たちを救うことになるのだ。

エイハンは余計なことは言わない方が良いと判断する。


「よく見てみろ……あの様子じゃもう無理なことはわかるだろ?

 ヘンサッチ様はいないのか?」

「あぁ……ヘンサッチ様は今ボーダー様と中央に行っている」


「ヘンサッチ様がいないのなら……上民の兵士はおそらく全滅だ……」

「「「………………」」」


「なぁ、俺たちが逃げた集落がある。

 お前たちも来ないか?」


□□□


俺は一番でかいテントまでやってきた。

「貴様!! 何者だ!!」

中にはガタイが大きな男と、女性が3人いる。


こいつは見たことがあるな。

ヘンサッチの軍の中にいた。

しかし、俺のことは覚えていないらしい。


呆れ返るくらいバカな集団だ。

俺はゲート破壊ができるんだぞ……

顔を見ても思い出せないとか、無能にもほどがある。

メージスは身分の低いものをとことん下に見ているんだな。


「ヘンサッチはどこだ?」

「貴様、こんなことをして……」

ズシャッ!!


俺は器用にこいつの右腕の小指だけを切り落とす。

肉体強化と剣技のおかげで、動かない対象なら細かい攻撃も可能だ。


「ひぎ……ぎぃやあぁ!!」

「君たちは外に行ってくれ、下民のキャンプへ向かうんだ」

俺は叫ぶ指揮官を無視して女性を下民キャンプへ促す。


「「「………………」」」

女性たちは震えながら駆け抜けていく。


「おい、ヘンサッチはどこだ?」

「こ、ここには来ていない」


「そうか、ならお前は用無しだな……」

「誰か!! 誰かぁぁ!!」

ドガッ!!


俺は指揮官と思われる男を蹴り飛ばす。

まぁ一般の兵士よりは強いのだろう。

ガタイはいいし。

ただ、今の俺にとっては雑魚だ。

丸腰だしな。


そして、用無しとは言ったがメージスの動きを知っておく必要がある。

殺すのはその後だな。


「おい、この部隊はなんのためのものだ?

 俺の調査か?」

「お、お前は!?」

やっと気づいたか。


「まぁいい……とりあえず縛り付けてから尋問だな」

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