第32話 ★

俺とフェリスさんは食事を済ませ、麦とイモを兵士のところへ持っていく。

野菜と塩が増えたことで食事らしい食事をができた。

油があれば、炒め物などもできるのだろうが、塩だけでも白菜や大根がうまい。


残りの魂は41177だ。

1週間ぶりの遺跡だからな。

魂約2500分の小麦とイモを兵士たちに渡す必要がある。

空けた日数分、ゲートを破壊した分、それぞれに比例するように小麦とイモの量を渡していかなければ、奴らは納得しないだろう。

しかし、5万以上入ったうちの2500だ。

奴らが俺を軽視してくれるのでごまかしがきく。

まぁバカなんだろうな。


そして、今回の小麦とイモの生産で、時間も稼ぐことができる。

一回で魂500分程度の小麦とイモを渡す。

10回兵士に食料を渡すわけだが、一回ごとに時間がかかると嘘をついているのだ。

だから、遺跡で魂兵の作成、レベルアップができるわけだ。


といことで魂兵を作成する。

もちろん『魔法兵(炎)』だ。


そして今回の魂兵作成には、考えがある。

「人差し指と、中指で……?」

「そうです。そのまま人差し指と中指で」


俺はあの謎の黒いモヤについて考えた。

あのモヤのせいで肝心なところが全く見えないのだ。

しかし、パンツを履いてもらうとそのモヤが消える。


そこで……

「そうです!! そのまま人差し指と中指を上の方へ持っていって、パンツをくい込ませてください!!」

「ちょ!! えぇ!?」

さぁ来い!!


「むり無理ムリ!! できません!!」

フェリスさんは顔を真っ赤にし、横にブンブンと振る。

ほほぉ……

珍しく強気で否定してくるではないか……

「しかし、より強力な『魔法兵(炎)』を作成するためには必要なことのようです」

そんな気がするのだ。

(そんな仕様はありません)


「そ、そんな……」

「ということで、指をもっと奥に動かしていただいて」


「ひぃん……」

彼女は顔を真っ赤にしたまま瞳をうるうるとさせている。

しかし、肝心の指は動いていない。

「指をこう、ぐっと押し当ててください」


「ダ、ダメです……できません……」

「世界を救うんじゃなかったんですか!?」


「…………………」

ためらっているな。

もうひと押しか。

「頑張れ!! 頑張るんだ!!」


ピクリと指が動く。

そして、少しずつだが、ずれていく。

「そうだ!! 頑張れ!!」

少しずつ、少しずつ……


よし!!

そろそろくい込むぞ!!


「んなっ!!」

再び黒いモヤが出現する。


【目視するには魂の総獲得量が不足しています】


クソが!!

クソがぁ!!


「ど、どうされました?」

落胆が表情に出てしまったのだろうか。

「すみません、見えなくなりました。

 もう戻していただいて大丈夫です」


□□□


くい込みは見ることができなかったが、魂兵を2体も作成してしまった。

1週間も遠征していたからな。

これで魂兵が全部で7体になった。


一般兵 Lv2 3体

一般兵 Lv1 2体

魔法兵(炎) Lv2 1体

魔法兵(炎) Lv1 1体


『訓練室』では同時に2体のレベルアップが可能だ。

これから数時間ごとに小麦とイモを渡すので、しばらく時間が稼げる。

その間に魂兵レベル1を鍛えてしまおう。


魂兵強化 Lv2 : 500


俺は『魂兵強化 Lv2』を2回タップする。


そして中央の部屋に戻る。

前回魂を使い切ってしまったので作ることができなかったが、施設に『転送室』ができていた。


転送室 Lv1 : 10000


レベル1で10000の消費かぁ……

ちなみに今魂は39077ある。

結構な消費だな。

それでも、できるだけ早いうちに使い方を知っておいた方がいいよな。

転送とはいっても、何を、どのくらいの量、どのくらいの距離、転送できるのか不明だ。


強化など他にやりたいことはあるが、転送室を優先させよう。

俺は『転送室』をタップする。


ガコッ!!

ガガガ……


通路の奥から音が聞こえてくる。

「よし、行ってみましょう」

「はい!!」

新しい施設ということで、フェリスさんも一緒に連れていく。


「これは……?」

部屋自体は6畳くらいある。

しかし狭い。

入ってすぐに黒い台座がある。

そいつがデカイのだ。


これまで他の施設にも、黒い台座があった。

しかし、いずれも中央の部屋の台座より小さいもので、その施設内で魂を消費するためのものだった。


けれど、この部屋の台座はでかい。

高さは他のものと同じ1mくらい。

しかし、横2m縦2mくらいある。


そして、奥には六角形の段差がある。


とりあえず台座をタップだな。


【転送を使用するためにはマップの開放が必要です】

【マップの開放には14372の魂が必要です】


「はぁ!?」

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