第25話

ザクッ……ザクッ……

薪集めの次は穴掘りだ。

どうやらここに死んだ兵士の死体を入れるらしい。


「う……うぅ……」

死体の一つを見て、エイハンが泣いている。

「……………………」

ザクッ……ザクッ……


俺と奴隷の他に、エイハンも進んで穴を掘っている。

「見苦しいところを……すまないな……」

「いえ……」

死体の処理をしている俺たちとは別に、兵士たちは酒を飲み、騒いでいる。

祝杯モードだ。


「深い仲だったのですか?」

「そうだ……同じ下民出身の友だった」


「そうですか……」

「下民はな、相当な努力をしなければ兵士になれない」


「……………………」

俺は黙ってエイハンの話を聞く。

俺が全力を出していれば、この人は助かったのかもしれない。

だが俺の心は痛まない。

精神強化の影響か?


「俺もこいつも、ずっと努力し続けてきた。もうすぐ上民になれるって話だったのにな」

しかしクソみたいな身分制度だな。

あっちで騒いでいる兵士たちよりも、エイハンの方がずっといい働きをしたはずだ。


「それに、このシドル村は俺たちの故郷だったんだ。やっと故郷が解放されったってのに」

「……………………」

ザクッ……ザクッ……

俺は無言で穴を掘り続ける。


「辛気臭くていかんな。せっかく故郷かが解放されたんだ。お前のおかげでな」

「いえ…………」

エイハンは俺の肩を掴み、強い眼差しを向けてくる。

いや、お前にはムラムラこねぇよ。


□□□


2日後。

遺跡に到着する。

帰りは魔物がいないため時間がかからない。

「お疲れ様でした勇者様!!」

「えっと、それじゃとりあえず魂兵を作成しましょう」


「え!? 今からですか!?」

フェリスさんは、ドギマギする。

「そうです!! 今なら2体作成できそうです!!」

何しろ遠征で溜まっているのだ。

これは強い魂兵ができるに違いない。

(そんな仕様はありません)


そして魂も相当貯まっているはずだ。


魂 37783 / 毎時魂 290 / ゲート破壊数 25


おぉ!!

すごいぞ。

これまではゲートを破壊するたびに毎時魂が10ずつ増えていた。

今回のゲートは大きかったせいか、50も増えている。


とにかく!!

まずは魂兵だ!!


□□□


「あ、あの……もう一体作成するのでしょうか」

「そうですね。その前に兵士たちに小麦とイモを渡してきます」

俺はフェリスさんの強力で、一体魂兵を作成する。

これで魂兵は4体。

容量はあと1体分だけになる。

そして、賢者タイムのうちに兵士たちに食料を渡しにいく。


「それでは、私はお米を炊いておきます」

「ありがとうございます。お願いします」

俺は魂兵作成室から、中央の広間へ戻る。


【施設のレベルアップが可能です】


「なんだこれ……」

今までなかった項目だ。

大きなゲートを破壊したことで条件が満たされたのか?

それ以外の条件だと、日数くらいしか思いつかないな。


【施設のレベルアップ 10000】


気になるな。

しかし一万か。

今魂は37683あるからな。

できるっちゃできるが、結構な量を持っていかれる。


やろう。

ここは迷うところじゃないな。

最近は項目に(不可)がついているものが増えた。

このまま魂があっても強化できないのだ。

施設のレベルアップでこれらが強化できるようになれば、十分に価値があるだろう。


俺は『施設のレベルアップ』をタップする。


ガコッ!!

ガガガ……


「え?」

全ての部屋の入り口が塞がっていく。


「やばい!! フェリスさん!?」

「はい!! こちらは大丈夫です!!」

一瞬焦ったが、入り口が塞がっただけのようだ。


ガガガ……ガガガ……


部屋が広がっていく。

周りにあった部屋も移動しているのだろう。

壁の奥からも音がする。


ガコッ!!

ガガガ……


再び全ての部屋の入り口が開く。


中央の部屋が広がり、周りの部屋がそれに合わせて移動したのだ。


俺は台座を確認する。


強化

食糧

施設

素材

魂兵


この項目には特に変化がないな。

俺は続いて強化をタップする。


肉体強化 LV21 : 1000

精神強化 Lv3 : 5000

剣技 Lv5 : 5000


よし!!

これまであった(不可)という文字が消えている。

さらに強化ができるようになったってことだ。

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