第24話

ここのゲートは、これまでのものよりもずっと大きい。

直径2mくらいあるだろう。


「行け!! ここは我々が死守する。お前はゲートを破壊してくれ!!」

「はい!!」

ダッダッダ!!


俺は周囲を剣兵に守られながらゲートに向かって走り出す。


ズシャ!!

ズシャ!!

ズシャ!!


何度も何度もゲートを切りつける。


ズシャ!!

ズシャ!!

ズシャ!!


「おい!! まだか!!」

「まだです!!」


ズシャ!!

ズシャ!!

ズシャ!!


「ガァ!!」

ガギン!!

「クソ!!」

背後の音から剣兵が苦戦していることがわかる。


援護した方がいいのだろうか。


ズシャッ!!


振り返ると、エイハンがカバーしている。


「お前はゲートに集中しろ!!」

「はい!!」

まずいな。

このまま魔物の数に押し切られれば、俺も危ない。

肉体強化レベル20で本気を出せば警戒されてしまうが、このまま死ぬのは避けたい。


ズシャシャシャシャ!!


俺は剣速を一段階あげる。

周りの剣兵を警戒しながらだ。


ズシャ!!

ズシャ!!

ズシャ!!


剣兵の視線に入りそうになると、剣速を落とす。


ぶっちゃけこいつらが全員死んでも、逃げ切れる自信がある。

片手剣があるし、逃げるだけならなんとかなるだろう。

だから肉体強化についてバレるくらいなら、できるだけ実力を隠すべきだ。


ズシャ!!

ズシャ!!

ズシャ!!


今だ!!


ズシャシャシャシャ!!


剣兵たちが苦戦し、こちらを見る余裕のない時に一気に切りつける。

しかし、ゲートはまだ破壊できない。

いつものゲートならば、とっくに破壊できているくらいの攻撃はしている。

やはりデカイのは耐久力もあるってことか。


「ぐあぁぁ!!」

右にいる剣兵が負傷する。


ズシャ!!

ズシャ!!

ズシャ!!


しかし、俺は剣速を速めることはしない。


ズシャ!!

ズシャ!!

ズシャ!!


あいつらの視線が完全に外れなければ、本気は出さない。

なんなら、こんなクソ兵士死んでしまえとも思う。


ズシャ!!

ズシャ!!

ズシャ!!


ブワン……

ゲートが霧散する。


あ……

破壊できた。


【解放条件が満たされました】

【拠点レベルアップ】


「消えた!! ゲートが破壊できたぞおぉぉ!!」

「「うおぉぉ!!」」

何やら兵士たちが盛り上がっている。

まぁそりゃそうだな。

命懸けで戦ったわけだ。


しかし、兵士たちの盛り上がりと俺の精神は乖離していた。

もう少し時間をかけても良かったとすら思う。

そうすれば、ムカつく兵士たちが死んでいくのだ。


□□□


俺がゲートを破壊したことで、魔物が発生しなくなった。

ほどなくして魔物が殲滅される。


兵士たちは祝勝ムードだが、どうやら俺と奴隷たちはそうでもないらしい。

「よぉし!! お前ら、薪だ。薪を拾ってこい!!」

「「「はい」」」

休む間もなく薪拾いか。

こき使ってくれるな。


しかしこのメージスとかいう国の奴らはバカなのか?

ゲートは俺しか破壊できないんだぞ。

普通に考えて重宝するだろう。


逃げないように常に見張りをつけているあたり、完全に道具としての扱いだな。

丁寧に扱おうとか、そういった考えは一切ないらしい。

それで、見張りはエイハンってわけだな。


「ご苦労だったな」

「はい。エイハン様も」


「お前の働きのおかげだ」

「いえ……」


エイハンもクソ真面目な奴だ。

他の兵士たちは酒を飲み始めている。

そんななか奴隷たちの見張りとはな。


ほどなくして、薪が集められる。


「さすがはヘンサッチ様!!」

「見事な魔法でした!!」

「いずれヘンサッチ様の領地に住みたいものです」

兵士たちは、ヘンサッチのご機嫌をとっているようだ。


「ほら、薪をおいたらさっさと向こうへ行け」

俺たちは薪を集めてら用済みだ。

ようやく地べたで休憩ができる。


一方で兵士たちは、俺たちの集めた薪で肉を焼き、酒を飲む。

ったく、俺がゲートを破壊してやったからだっていうのに。


フェリスさんは、兵士たちから少し離れたところで座っている。

認識阻害のローブのおかげか、影が薄いな。

まぁあれだけの美貌だ。

下手に認識されるよりもいいだろう。


「おい、お前ら喜べ!! いつもよりたくさん食えるぞ」


ゴト!!


兵士はそういうと、カピカピのパンを地面に投げる。


「おい!! 返事がないぞ!!」

「「「ありがとうございます」」」


確かに昨日よりもパンは多い。


血だ……

血がこびりついている。

死んでいった兵士たちが持っていたものだろう。


そうか、この異世界は人の死が軽いんだ。

俺は血のついたパンをかじる。

クソみたいに不味いが食えてしまう。

精神強化のおかげか?


しかし、精神強化は万能ではないようだ。

奴らへの殺意に関しては、一切緩和されることがない。

見ておけ……お前らも、お前らの血もこのように……

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