第10話
「これで全部か。明日も頼むな」
「はい」
俺は残りの小麦とイモをエイハンに渡す。
違和感があるな。
頼まれたのは初めてだ。
「お前、名前は?」
「ニッコマです」
そういえば、フェリスさん以外には名前を教えていない。
というのも、聞かれていなかったからだ。
アイツらは、俺の名前も知らずにこき使っていたのだ。
「ニッコマ、これが今日の食事だ」
エイハンから、パンと水、干し肉を渡される。
いつもより、量が多い。
そして、干し肉なんて初だ。
「あの、量が多いようですが……」
「お前はよく働いてくれている。このことは誰にも言うなよ」
「ありがとうございます」
ということは、エイハンが個人的に与えてくれたってことか。
クソみたいな奴ばかりだと思っていたが、多少はまともな人間もいるようだ。
□□□
「あのエイハンという兵士、他の兵士とは少し違うみたいですね」
「えぇ……でも、この国の人間は基本的に信用しない方が良いですよ」
フェリスさんに忠告される。
「もちろん、こんな仕打ちをされれば、信用なんてしませんよ」
「本当に……申し訳ございません」
フェリスさんが頭を下げる。
「いや、まぁ……仕方ないですよ。とりあえず残りの米と肉でも食べましょう」
こっちにきてから初めて肉を食う。
硬いが、味は悪くない。
というより、塩味がうまい。
ん?
なんだ?
台座の一部が光っている。
俺は台座のそばに行き、確認をする。
【条件が満たされました】
【訓練室が開放されました】
条件?
訓練室?
一体どういうことだ?
強化
食糧
施設
素材
魂兵
台座のメニューは変わらないな。
訓練室ってことは施設か?
俺は施設をタップする。
トイレ Lv2 : 500
風呂 Lv1 : 500
井戸 Lv1 : 100
調理場(不可) Lv2 : 2000
訓練室 New Lv1 : 1000
魂兵作成室 Lv1 : 100
出てるな。
訓練室だ。
条件を満たしたから開放されたってことだよな。
その条件がなんだかわからないのだが……
それから調理場のレベル2が不可になっている。
これ以上はレベルが上げられないってことだよな。
「あの、魂を使う用途が増えているんですが、何かわかりますか?」
「はい。詳しくは存じませんが、魂の用途は多岐に渡り、勇者様の力に応じて強くなると伝えられています」
「そうですか。ありがとうございます」
えらく抽象的だな。
開放条件がわかれば、効率も上がりそうなんだが。
残りの魂は1765か。
訓練室は今すぐ必要ってわけじゃないし、後回しにしよう。
やっぱり『肉体強化』が最優先だな。
さっきまとめて上げてしまっても良かったくらいだ。
肉体強化 LV16 : 160
肉体強化 LV17 : 170
肉体強化 LV18 : 180
肉体強化 LV19 : 190
肉体強化 LV20 : 200
あれ?
肉体強化(不可) LV20 : 1000
レベル20で必要な魂が一気に上がった。
そして、これ以上は上げられないようだな。
900使って残りの魂は865だ。
これからの睡眠時間でも、また魂は貯まるだろうから、使い切ってしまった方がいいな。
となると魂兵か。
自分の兵士を作れるってことだよな。
俺は『施設』の『魂兵作成室』をタップする。
ガコッ……
ガガガ……
壁の一部が下がり、奥に小さな空間が現れる。
ガガガ……
おや?
木製の扉が下からせり出てくる。
『魂兵作成室』には扉がついているようだ。
「また新しい施設を作られたのですか?」
フェリスさんが聞いてくる。
「はい。『魂兵作成室』です」
「は、はい……」
フェリスさんは下を向き、モジモジし始める。
定期的にやっている謎のモジモジだ。
俺は気にせず魂兵作成室に入る。
中は6畳くらいの小さな部屋だ。
中央には例によって高さ1m前後の真っ黒い台座が置いてある。
俺は台座をタップする。
一般兵 Lv1 : 100
消費は100か……
俺は一般兵をタップする。
すると、中央に直径1m前後の魔法陣が浮かび上がる。
「おぉ?」
「……………………」
あれ?
しかし、何も起きない。
いやいや、この流れは魔法陣から兵士が出てくる流れだろ。
なんで何もおきないんだ?
俺は再び台座を見る。
【魂兵作成にはエルフの協力、勇者の体液が必要です】
は?
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