第9話

とりあえず『剣技』を1だけ上げておく。


よし!!

次は米だ!!


俺は調理場へ行き、米、鍋、薪、水を生成する。


これで残りの魂は1786だ。


そして、調理場のシンクで鍋を使い、米をとぐ。


「あの、何をなさっているのですか?」

「あぁ、まぁアイツらからの食料だけじゃ足りないので、米を炊こうかと」


「米を炊く?」

「げ……薪だけあっても、火が無いと無理か」


「あの、小さな火なら魔法で出すことができます」

「マジで!? お願いします」


そうか。

魔法か。

異世界だもんな。

自分は肉体労働で、周りはゴツい兵士ばかりだったから魔法の存在を忘れていた。


フェリスさんが手をかざすと小さな火がでる。

「おぉ、すげぇ……このまま中の水を沸騰させてください」

「わかりました」


米を炊いている間に、小麦を半分だけ持っていこう。


「小麦とイモが半分ほど生成できました」

「うむ……ご苦労。あとの半分もよろしく頼む」


「はい」

俺は返事をしながらも違和感を持つ。

頼まれたのは初めてだ。


ヘンサッチの部下であるこの兵士は、確かエイハンと言ったな。

ヘンサッチからは身分が低そうな扱いを受けていた。

身分が低い奴の方がまともっぽいな。


俺は調理場に戻る。

「ここからは弱火でお願いします」

「はい」


「フェリスさん、それから何かナイフのような刃物は持っていますか?」

「はい。剣と短剣を所持しています」


「了解です。いけるかな……」

俺は中央の部屋に戻り、台座の『素材』をタップする。


素材

藁 2

石材 10

木材 10

綿 50


さらに『木材』をタップする。

すると、一辺が30cm程度の木材の立方体が出現する。

そして、その木材を持って再び調理場へ行く。


「あの、これで食器とかって作ることできます?」

「もちろんです!!」

彼女は両手の拳を握り、目を輝かせる。

工作が得意なのだろうか。


思わずドキッとしてしまった。

よく考えたら、二人きりだよな?

今更だが、密室で二人きりであることに気づく。

いや、しかし、今はよこしまなことを考えるべきでは無いな。

とにかく、この魂を利用し状況を改善していこう。


「あの、この剣を借りてもいいですか?」

「はい、構いません」

彼女が食器を作っている間に確認したいことがある。


にしても、フェリスさんも不用心だよな。

密室の男に剣を貸すとか。


あ、いや……

そういえば勇者がエルフに触ると死ぬんだっけ。

なら俺が男だろうと関係はないな。


俺は調理場から再び中央の部屋に戻り、剣を振ってみる。


シュッ!!


ん?

これまでの素振りとは違う。


これまでは腕の力だけで剣を振っていたのだが、腰から肩にかけて、上半身をきちんと使って剣を振っているな。

これは……


今度は、少し腰を落として構えてみる。


こうか?


シャッ!!


今度は下半身も上手く使えている気がする。


凄いな……

レベル1でこれかよ。


おぉ!?

ご飯の匂いがする。


「そろそろいけそうですね」

俺は調理場に戻る。

すると、フェリスさんが木の皿とスプーンを作ってくれていた。


「す、凄いですね。こんな短時間でそれを作ったんですか?」

「はい。このような工作は得意なんです」

彼女は嬉しそうに笑う。

思わず頭を撫でそうになるが、注意しなければならない。

なにせ、触ると死ぬんだから……


「よし、食べましょう」

俺は作ってもらった食器を軽く水で流し、魂を10消費し、『おたま』を生成する。


そして、フェリスさんと一緒にあつあつのご飯を食べる。


「う、うまい……」

感動的な炊き立てご飯の味……


こんなとき、普通は涙するのだろうか?

しかし、俺の中で、おかしな感情が渦巻いていた……


ここにきて、ものの数日で一般的な兵士と同等かそれ以上の力を手に入れることができた。

この世界で、魂を利用すれば圧倒的に強くなれるはずだ。


腹が満たされ、溢れ出る感情は、悲しみではない……怒りだ。

エフラン、ボーダー、ヘンサッチ……

俺を召喚し、利用したことを後悔させてやる……


俺を蔑んだ兵士一人残らずぶっ殺す……

奴らを殺すことが、楽しみでならない……


【解放条件が満たされました】

【訓練室】

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