第23話 湯川の逆襲
さて、この田上純一のたった一人での孤独な戦いは、田上の完全な一人勝ちと思われたのであった。
この小説を書いている著者自信もそう思った程だから、尚更だ……。
だが、ここで、この話は、実はもっともっと恐ろしい方向に進んで行くのであった。
「そうか、田上がそこまで言うなら、なら、こちらにも最後に言いたい事がある。それもだ、全ての今までの話の、再逆転劇をだ!!!
田上が言うように、FBIやCIAまでもが影で動いていたとすれば、それは、確かに『黙示録の会』の終わりを意味するのだろうよ……。
田上が、「自ら志願して」、この巨大な計画に立ち向かった、たった一人の、ロンリー・ソルジャー(孤独な兵士)だったのは、この俺も認めてやるよ。
本当に、心から、褒めてやるよ。
しかしだ。
これが全くの逆の話で、世界的コンピュータ会社のマッシュルーム社の現会長のハロ・ゲインと、世界的製薬会社のアップルパイ社のエドワード・アップルパイ現社長の二人が、逆に、このような事態を初めから想定していなかったとでも、思うのかい?
チッ、チッ、チッ、甘いなあ。田上よ。二人とも、世に言う天才達なんだぜ。
このFBIやCIAの動きを知らない筈は無い。ちゃんと、内通者は極秘で入れてあったのだ。
だから、先ほどの飛行機事故は、実際にあった事は、この俺もまあ認めるよ。
しかしだ。事前に、この事を知っていたとしたら、二人は、本当に、あの自家用ジェット機に乗り込むだろうか?どう、思う?
田上ですら、事前に知っていたら、まず、乗り込みはしないだろうが……。
まだ、確証は取れてはいないが、まず、あの二人の天才が、そう、易々と死ぬ訳が無い。
ここでも、二人のクローンの二体を乗せておけば、済む話じゃないのかね?
丁度、この俺が、死んだ時のようにね」
「しかし、湯川よ。そう言う事をすれば、二人は仮に生きていても、もはや、この世界の表舞台には出れなくなってしまう筈だ。
とすれば、一体、何のメリットが有るのだ?」と、冷や汗をかきながら、田上が、必至で反論する。
「「アカシック・レコード計画」の第二ステージに入るためだよ!」
「第二ステージとは?」
「いいか、よくよく考えて見よ。これまでの、人工男根の装着者は、田上やこの俺や、極一部の被験者のみであった筈だ。
で、各種実験、特に「人工男根」の異常暴走、GPS機能の実験を重ねて、その完全修復が終わった今、今度は、本当に大々的に、この「人工男根」の装着者を募る必要があるのだ。
それも、一般庶民では、ほとんど役には、起たないのだよ。
西側諸国、東側諸国、新たな新興国の、強大な力を持つ男性の指導者にこそ、装着を勧める必要がある。
この場合、あの世界的有名な二人が、正面きって、堂々と、各国に「人工男根」の売り込みに行く事は、マスコミの目に触れ易い危険性があるよなあ……。
しかし、一旦、死んで地下に潜った二人なら、実際に生きている姿と、あの「人工男根」の強烈な効果を治めたDVD等を持参して、勧めに行くためにも、この場合は、ここで二人は地下に潜ったほうが、これからは得策なんだよ」
「じゃ、このVIPルームの外に待機している、5人の現職のFBIの職員は、その事を知っているのか?」
「多分、知らない筈だ。
元々、この「アカシック・レコード計画」壊滅計画を命じたのは、アメリカ初の黒人大統領、名前は言わなくても分かると思うが、その時からだった。
あの黒人大統領は、核の廃絶を訴え、ノーベル平和章までもらっている。
あの民主的な大統領なら、全世界の人間にマイクロチップを埋め込んで、世界をコンピュータでコントロールすると言う「アカシック・レコード計画」に、絶対に、賛成などする筈が無いわな……。
だから、当初は、FBIやCIAの職員も、必至になって、この計画を探り出し、潰しにかかったのだ。
しかし、今は、その時から、既に20年以上も経っている。
この間、アメリカの大統領も、何人かは、変わっている。
アメリカ国内の政党で言えば、「民主党」や「共和党」の大統領の交代があったのだ。
現在の、アメリカの大統領は「共和党」だ。
しかも、今日の日までの間に、世界では、色々な紛争が相次いだのだ。
ロシアの隣国侵入、第5次中東戦争、日本の隣国の超大国の島国侵攻、その他、諸々の国際的事件が、立て続けに起こったのだ。田上も知っての通りにね。
正に、今この時こそが、この馬鹿げた紛争や紛争を終わらせるためにも、先ずは、全世界の、大国の男性の指導者に、この「人工男根」を埋め込み、人工的にコンピュータでコントロールすべき時が来たのだよ。
つまり「アカシック・レコード計画」の第二ステージの、開始なのだよ」と、湯川は、次々と饒舌に話し続けた。
これは、田上の全くの想定外の話だった。
「と言う事は、FBIやCIAも、その方針が変わったとでも?」と、田上が聞く。
「ああ、最初は、皆、この人工知能AIによる全人類コントール計画を壊滅すべく、着々と準備が進んで行っていた。
それは、事実なのだが、ある時、アメリカの大統領が替わった。
その時、FBIやCIAは、完全に分断化したのだ。
で、権力の二重構造が生じたのだ。
つまり、「アカシック・レコード計画」壊滅派と、極秘で、この計画を進めて行く推進派の二つだ。
現在、末端の職員までは、この二重構造は知られていない。
何しろ、「アカシック・レコード計画」の第二ステージの開始のためにも、この推進派は、それこそ極秘でこの計画を、進めて行く必要があるから、なおの事だ。
いいかい、田上よ。
既に、先ほどの、緊急ニュースを見て分かるとおり、正に、この第二ステージが、いよいよ、スタートした記念すべき瞬間でもあったのさ!」
「し、しかし、湯川よ。
「アカシック・レコード計画」の第二ステージが、仮にスタートしたとしてもだ。
世界の国家の指導者の半数は、既に女性になってしまっている現在、いくら地下に潜って宣伝して回ったとしても、女性の指導者にまで、「人口男根」を埋め込む事は、不可能だろうが……。いくら何でもよ。
この点で、いくら「アカシック・レコード計画」の第二ステージが、例えスタートしてもだ。世界をコンピュータで、支配や指導を行う事は、不可能じゃ無いのかね?」と、田上は、落ち着いて言った。
「チッ、チッ、チッ、甘いなあ。田上よ、この俺に、二度も言わせるよな。
そんな事は、二人とも、百も承知なんだよ。
そこで、「人工男根」に加えて、「人工女性器」の研究も、既に完成したのだ」
「何?その「人工女性器」とは、一体、何なんだ?」、と。
田上は、初めて聞く言葉に驚愕したのである!!!
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