第24話 究極の選択

「田上よ。正に、お前の言う通り、国際世界の指導者の半数以上は既に女性なんだよな。



 この女性指導者達には、さすがに「人工男根」は、進められないよな……。



 そこで、共に、自家用ジェット機で爆死したとされる、あの天才二人は、「人工男根」を上回る、「人工女性器」極、簡単に言えば、「人工膣」の開発にも、既に、成功していたのさ」



「「人工膣」とは、一体どう言う物なのだ?まさか、オールシリコンを使った物なのか?」



「馬鹿を言え、女性器は、男性器より、より以上に複雑だ。



 何しろ、新たな生命を作り出す生殖器なのだよ。そう言う、簡単な物では無いのだ。



 田上自身も良く思い出してみなよ。



 あの「人工男根」の最大の問題は、その構造自体よりも、如何に、「人工男根」が各種センサーで感じた性感覚を、大脳に送り届ける事かが最大の問題では、無かったのかね? 

 そう、思い出さないのかね……」



「そ、そう言えば、確かに、あの亡くなった大神博士でも、「人工男根」の基本的構造は比較的早い段階で開発に成功していたものの、あの独特の性的感覚を、如何にして、本人の大脳で感じる事ができるのかが、最大の大問題だったと言っていたようだからなあ……。

 結局、ここにおいて、世界的コンピュータ会社のマッシュルーム社の量子コンピュータのマイクロチップの技術が、生きて来た筈なのだが……」



「さすがは、俺と同じ、日本一のZ大学を出ただけの事はある。



 ここからは、世界の誰も知らない極秘情報を、かっての大親友だった田上だけには、コッソリと教えてやるよ。



 良いか。この「人工膣」とは、何も、オールシリコンを使った、男性向けに作られたオナニー用のインチキ品等では無いのだ?」



「では、何故、「人工膣」なのだ?」と、田上が最後の力を絞って聞く……。



「先ほども言った通り、女性器は、男性器以上に非常に複雑なのだよ。



 そのため、この「人工膣」には、実は、一切、人工物は使っていないのだ」



「じゃ、何故、「人工」なのだ?「人工女性器」なのだ?」



「ああ、お前らしくも無いなあ……。何も、ここで、オールシリコンを使った、男性向けに作られたオナニー用の偽物は全く必要無いのだ。



 要は、本物の女性器そのものを使っての、最終の人工臓器、なんだよ」



「それは、一体、何なのだ?どう言う事なのだ。



 湯川よ、ハッキリ言えよ!」



「そうか、では、この事実を明かせば、田上は、『黙示録の会』に、今度こそ、本気で、入ってくれるのか?どうなのだ?」



「うーん、これこそ、究極な選択だな!!!



 しかし、何ほど、そうまでして、この私を巻き込もうとするのだ?」



「それは、実に、簡単な話さ。



 田上よ。お前の本当の存在価値とは、お前の存在そのものなんだよ」



「何だと!では、この私の存在価値とは、一体、何なのだ?」



「それは、正にお前こそが、人類史上初の「人工男根」装着者で、かつ、「レベル10」の感覚を、世界で最初に感じた、実体験者だからさ。



 だから、田上がいれば、世界中の指導者達も、より、簡単に説得できるからなのだよ……。いいかい、お前の、存在は、超貴重な存在なんだぜ。



 田上、お前自信は理解しているかどうかは分からないが、お前の存在とは、人類初の宇宙旅行をしたガガーリン少佐や、初めて月面に降り立ったアポロ計画のニール・アームストロング船長にも、匹敵する、この世の至高の存在なんだよ。



 勿論、今のところ、この事実を知っているのは、世界広しと言えど、ほとんど誰もいないのだがね」



「なる程ねえ。だが、この私は、そこまでの価値がある人間なのかね?自分でも疑問に思うがねえ……。



 何しろ、その「人工男根」の暴走で、いたいけな少女を一人、陵辱殺人しているのだ。この罪悪感は、その価値を全て打ち消してしまうのだ。如何に、法的に逃れられたとしてもだ。

 今でも、あの罪悪感をフト、思い出して、悪夢にさいなまれる事もあるのだぞ。湯川には、到底、理解出来ない心理状態だろうがね。



 それに、湯川の言う「人工膣」とは、どう言う構造なのだ?」



「知りたいか?」



「ああ、どうしても知りたいね。でないと、とても納得出来ないじゃないか?入会する気も起きやしないじゃないか……」



「イヤ、極、簡単な話で、本物の女性器には、一切手を付けないのだ。



 ただ、本物の女性器の周囲に、極、精密なセンサーや、電気刺激装置を埋め込むだけなのだ。だから、本物の生の男性器も自由に受け入れ可能なのだよ。



 で、問題は、この「人工女性器」も、手元のリモコンによって、自在に、オルガズム(絶頂感)に達する事ができる。あの「レベル10」までの快感が自在に得られるのだ。



 これが、国際社会の半数以上を占める、女性指導者に、売り込む、実は最大のセールス・ポイントになるのさ。



 そのためにもだ、田上、お前の『黙示録の会』への加入は、絶対的かつ必然的条件なのだよ」



「うーん」と、ここで、主人公の田上は、絶句した。



「そこまで、話が、進んでいるとするならば、この私は、一体、どうしたらいいんだ。

 それに、ここで『黙示録の会』に入ってしまえば、この私の、これまでの、たった一人の今までの戦いは、では、一体、何だったのだ?」



「田上よ。良く分かったから、もういい加減、降参したらどうなんだ。


 

 そして、この俺たちと、新しい世界、つまりコンピュータが全てを支配する、世界平和を、お互いに、目指そうではないか?



 田上、もし、お前が全てを受け入れてくれるなら、今までのお前の反逆は、全て許しても良いとの、「上からの命令」も受けている。



 この俺達と手を組んで、コンピュータが全てを支配する、それによってもたらされる世界平和を構築しようでは無いか。

 田上の奥さんの優子さんも、キット、そう心から願っていると思うよ……」と、湯川弘は、優しい言葉をかけてきてくれた。



「だが、さっきの『黙示録の会』の指導者二人は、緊急ニュースでは、自家用ジェット機で、爆死した事に、なっているのだ。



 多分、例の、クローン二体を積んでおいて、逃げ切りを図るのは、湯川の言う通りだとしても、今、湯川の言った、「上からの命令」とは、では、誰からの命令なのだ。



 あの、世界的コンピュータ会社のマッシュルーム社の現会長のハロ・ゲインと、世界的製薬会社のアップルパイ社のエドワード・アップルパイ現社長をも超える、存在とは、これ如何に?



 これこそ、私は、命を懸けても聞き出したいね?」



「しかし、この事は、世界最高秘密でもある。

 これを、どうしても聞きたいのなら、まず、最初に、我々の『黙示録の会』に入る覚悟を、先に、決めて頂こう。



 でないと、この俺達、自身の命の保証が、されないのだ」



 だが、ここまで、湯川が怖がるのも、少し、変だ。



 一体、何が、湯川の後ろにいるのだろうか?何が、これほど、湯川を怖がらせているのだろう?



 相当の大物なのだろう?



 しかし、ここまで、詳しい話を聞いてしまった以上、もう、後戻りは出来そうにも無さそうだ。



 ここは、適当に『黙示録の会』に入会する事にして、その内部から崩壊を目指す、「獅子身中の虫」になるのが、この場を、乗り切る最も有効な手かも知れない。


 

 田上が、今までの孤独な戦いを諦めて、このように考え方を変えはじめたのには理由があったのだ。



 あの湯川が言った「上からの命令」である。この「上」とは、一体何なのだ。しかもバラせば、自分達の命の保証も無いとは、よほどの大物だろう。



 湯川すら消される可能性があるのなら、いかに、人類史上初の「人工男根」装着者でもあるこの私にしても、同じように、虫ケラのように、簡単に殺されるのだろう。



「田上、どうする?」



「ああ、湯川の話を聞いていると、世界平和の実現のためにも、「アカシック・レコード計画」に参加したほうが、むしろ、混迷のこの世界には必要なのかもな。



 では最後に聞くが、「アカシック・レコード計画」の今後の計画は、どうなっているんだ」



「随分、軟化してきたな。田上よ。



 「アカシック・レコード計画」には、5段階のステージがある。第二ステージは、国際政治の指導者らへの、マイクロ・チップの埋め込みと、そのコントールが目的だ。

 で、最終の第五ステージは、全人類への、マイクロチップの埋め込みだ。

 これが、完成すれば、この世には、テロリストさえ、ただの一人もいなくなるのだ。 


 そうなれば、国家・人種・宗教は、各々違えども、最早、無用な争いは全て無くなる。

 気候変動問題や、その他の諸々の各種問題も、超大型量子コンピュータ『666(ビースト)』のAIにより、全てが、解決されて行くのだ。



 まあ、コンピュータに支配される世界とは、ある意味、ユートピア世界では無くて、暗いディストピア世界なのかもしれないが、これによって、第三次世界大戦の危機も、永久に、訪れなくなる。

 どうだ、そうそう悪い、世界では無いのでは無いのか?」



 確かに、この第三次世界大戦が永遠に訪れ無いとすれば、つい、この最近まで、一触即発だったこの危機的世界は、確かに、安全なものになって行くかも知れない。



 とすれば、まあ、ここらへんで、手を打つべきなのかもしれない。



 田上の心から、徐々に、変化が生じて来た。確かに、今までの自分は、たった一人での孤独な戦いだったのだ。

 それは、人類が、コンピュータに支配される世界は、人類が、機械に支配される事を意味するため、そのような世界は、絶対に認められ無いと強く思ってきたからなのだ。

 しかし、湯川の言った最後の一言、第三次世界大戦が回避できるとするならば、これは、人類にとっては、ある意味もの凄い朗報では無いのか。



 田上純一の心は、ここで、大きく舵を切った。

 毒を食ららば皿まで、だ。



 遂に、田上は、最終の一言を放った。



「湯川よ、分かったよ。もしこの私が、『黙示録の会』に入会して、それによって、仮に第三次世界大戦が防止できるとするならば、気分的には、機械に支配される世界は好きでは無いが、それが、最高の選択なのだろう。

 分かった、入会を誓うよ!!!」


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