第51話 次の段階へ

◇ ◇ ◇ ◇


 欲望の発散。そこに愛はなく、ただただ貪る闇の姿のみ。


 悪意は消耗品の許容量を超えてしまい、既に器として使いものにならなくなっていた。

 使いものにならないなら再利用。それが叶わぬ時、それは廃棄される。


 僅かな記憶、確かにあった白亜の夢。それは最大の夢でもあった。

 少しずつ少しずつ削り取られ記憶は上書きを繰り返す。


 縋る事しか出来ない器は廃棄される日が来ない事を祈りながら悪意を飲み込む事しか出来る事はない。


◇ ◇ ◇ ◇


 少しでもこの家から離れたくないのか、チェルシーちゃんはフィンレーとパーティを組んでからは今まで以上に頑張っていた。

 性欲処理はもちろんだけど、家事全般も積極的に行い、恩を返すと言うよりも自分がいる事は有益だから一日でも長くここに置いて下さいといった感じだ。

 だから僕はそれに応えてお互いが家にいる時は存分に使ってあげた。


 そして先日、ついに家から追い出すことに成功した。


「寂しくて我慢出来なくなった時はいつでもおいで。でもね、その時はもう戻れないことを覚悟しておいてね」

「覚悟、ですか?」

「うん、覚悟だよ。長いようで短い間だったけどチェルシーちゃんと一緒に暮らせて楽しかったよ。これからはフィンレーくんと頑張ってね」

「私も楽しかったです。フィンレー君と頑張ってまずはDランクパーティを目指します。これまでありがとうございました」


 そう言ってチェルシーちゃんは出て行った。

 少なくともルーキー卒業までは良くしてあげるか。

 あとはフィンレー次第かな。ここ1ヶ月で何度かチェルシーちゃんを女として意識するように誘導しておいたから二人の仲が早いうちに進展することを祈ろう。

 まあどうせペアのパーティだから解散でもしない限りはそのうちくっ付くことだろう。


 町中やダンジョンでたまに引率したルーキーたちと出会うことがあるが、全員が必ずと言っていいほど声をかけてくる。

 適当に相手をしてるので周りからはそこまで悪印象を得ている感じはしない。


 そしてある日、ギルドで依頼表を確認しているとレオが僕の元へと一人でやってきた。


「ホープさん、あの、相談したいことがあって、少し時間をもらえませんか?」

「別に構わないよ。相談ってなんだい?」

「出来れば人のいないところが」

「なら僕たちが借りてる家で話そうか。僕の部屋ならエリーに聞かれることもないし」

「はい、お願いします」


 少しだけ頬を赤くしているレオだが、実は同性愛者だったとかやめてくれよ?


 そんなことを思いつつも僕の部屋へとレオを迎え入れた。


「さてと、それでどうしたんだい? 他人に聞かれたくないほどの相談って?」

「えっとその、先に聞きたいんですけど、ホープさんとエリーさんは一度もお付き合いとかはしたことがないんですよね?」


 そういえばそんな話もしたな。


「ないよ。体の関係も持ったことないし、友達とか仲間って感じだ。でもそれがどうしたんだい?」

「いや、なんて言うかそのですね、内緒にして欲しいんですけど……昨日ココとその……」

「そうかそうか、進展したんだね。おめでとう」


 おお、いいぞ。これは本当にいい。久しぶりに僕以外に抱かれたことがある子を抱ける。


「あ、ありがとうございます。ただその、これからココとどうしたらいいのかと思いまして」

「どうしたらいいって?」

「朝起きて落ち着いたことで、夜の事を思い出してしまい恥ずかしくて顔も見れないんです。このままだと気まずくて」


 あー、男にもたまにいるって聞くけど初めて見た。本当にいたんだ。


「そう言われてもね、ココちゃんの方はどうなんだい? ココちゃんもそんな感じだった?」

「はい、お互いに顔を合わせられなくて、その空気に耐えられず一人で宿から出てきたんです。落ち着きたくてギルドに入ったらホープさんがいたので」

「相談したいと思ったわけか」


「はい。こう言うことを言うのは失礼かもしれないんですけど、ホープさんは女性慣れしてそうなので普段どうなのかと思って」

「まあそうだね、女性慣れはしてるよ。実際色んな女性と関係を持ったこともあるし、その辺の男よりは経験してると思う」


 そもそも冒険者は色んな人と関係を持つ者が多いから僕が不特定多数の女性を抱いていてもおかしな話ではない。


「簡単なのはプレゼントを贈るのがいいんじゃないかな?」

「プレゼントですか?」

「安くてもいいからココちゃんの好きなものをプレゼントしな。それかお互いの思い出のものとかさ」

「好きなもの、思い出のもの……」

「そうだなぁ、ココちゃんは食べものは何が好きなんだい?」

「ココはショートケーキが好きです。ただ高いので……」


 ケーキか。確かにケーキはルーキーには高い。反応を見るにレオの持ってるお金では足りないのだろう。


「じゃあ僕の手伝いをしてくれるのなら報酬としてショートケーキをあげよう。それも二人分だ」

「そんな」

「気にしなくていい。僕も食べたくなったし、それに思っているより大変だよ?」

「分かりました、手伝わせてください」

「じゃあまず必要なものを買いに行こうか」


 そう言って僕は必要なもの、材料を買いにレオと出かけ荷物持ちをさせて帰ってきた。


「じゃあショートケーキを作ろうか」

「え、作れるんですか?」

「そりゃあパティシエのジョブがなくても作れるからね」


 そう言って僕はレオに指示だけ出して全て作らせた。

 指示通りに作らせたので少しばかり味が落ちてるがそこまで気にするほどではない。ちょっと見た目が不恰好だけどレオがココちゃんのために頑張って作ったのだと分かるしむしろプラスに働きそうだ。


「はい、約束の報酬だよ」

「ありがとうございます。ココと一緒に食べようと思います」


 そう言ってレオはココちゃんの元へと帰っていった。きっと心臓の音が聞こえるほどドキドキしていることだろう。

 もっと仲良くなってどんどん進展するといい。僕もその裏でココちゃんと進展して関係を持つからね。


 やっとレオとココちゃんの準備が整った。

 僕は久しぶりの獲物をこれからどう喰べるか考え滾らせるのだった。


― 第一章 完 ―


――――――――――――――――

ここまで読んで頂きありがとうございました。

『新人狩りの冒険者』の今後に関してですが、次章は不定期更新またはストックがある程度たまってからの連続投稿をさせていただく予定です。

詳しくは近況ノートの確認をお願いします。

https://kakuyomu.jp/users/hanzo999/news/16818023211733552755

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新人狩りの冒険者~寝取りデバッファーはルーキーの未来を奪い摘み取り貪り喰う~ ミギニール @hanzo999

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