第46話 高レベルのデバッファー
男ばかりで休憩をすれば自然と話題は女子のことになる。
「レオはココだっけ? あの子と付き合ってんの?」
「ボクは構わないがココを呼び捨てにしないでくれ。そうだ、付き合っているが何故そんな事を聞くんだ?」
「すまんすまん。やっぱ男女ペアって付き合ってるんだな。よく付き合ってたり夫婦くらいしかペアって組まないって聞くからどうなのか気になったんだよ。あと少しだけ俺にもチャンスがあればなってな」
「ココに手を出したら生きていられると思うなよ」
「分かってるって。流石に他人の女に手を出すつもりはないって」
「それならいいんだ」
怖いなこの子。大切に思ってるからこそなんだろうけどね。
「やっぱりホープさんもエリーさんと付き合ってるとか結婚してるんすか?」
「よく間違われるんだけど、僕とエリーはそういう関係じゃないよ」
「でも結構仲良さそうにしてるじゃないっすか」
「実際仲は良いよ。でも男女の仲にはならないって感じかな。だから別に君たちがエリーと付き合っても僕はなんとも思わないし、結婚する事になればちゃんと祝福するよ。ただ出来る事なら冒険者パーティを解散したくはないからそこだけ許してくれる人が僕としては嬉しいかな」
「なるほどっすね。でもエリーさんって綺麗ですけど俺は無理っす。付き合ってくださいって言った瞬間ボコボコにされる自信があるっす」
「オレも絶対ボコられる自信があるす」
「それくらいじゃそんなことしないよ。ただウザ絡みすると相手が誰でも手を出すから気をつけてね」
この二人は机に叩きつけられたから怯えるのも仕方ないか。
「レオくん、ペアを組んでる以上今後もいろんな人にココちゃんとの関係を嫌になるくらい聞かれるよ。まあレオくんは堂々と付き合ってるって言うからいいけど、ココちゃんにもちゃんとレオくんと付き合ってるって言うように言っておきな」
「確かにすでに何度か聞かれたことがあります。分かりました、ペアの先輩であるホープさんの言うようにココにもそう言っておきます。でも理由を聞いてもいいですか?」
「簡単さ、ココちゃんが付き合ってないだとか濁したりするとダニエルくんみたいな奴が勘違いするんだよ。レオくんは付き合ってるつもりでもココちゃんはそう思ってないと受け取られて、なら別に男女の仲になっても問題無いってね」
「そうっすね、レオが勝手に付き合ってるって言ってるだけだと思うかもしれないっす」
「オレもそう思うかも」
「二人みたいに付き合ってるなら諦めるってタイプは多いからそこは徹底しておいた方がいいよ。まあ関係なく手を出そうとする奴もいるんだけどね」
「ダニエルとフィンレーの考えを聞いて絶対ココに徹底させようと思いました。ホープさんありがとうございます」
「これくらい気にしなくていいよ。もしもパーティで困ったことがあればいつでも相談にのるからね」
「はい、その時はお願いします」
よし、レオくんと仲良くなればその分ココちゃんとの接点も増える。後は裏でココちゃんを抱けるように楽しむだけだな。
「しかしゴブリンって結構強いっすよね。雑魚って聞いてたんでもっと簡単に倒せるんだと思ってたっす」
「それオレも思ったよ。なんて言うか、こっちが嫌なタイミングで攻撃してくるんだよな」
「ボクも正直舐めてた。棍棒を持ってる奴の攻撃を盾で防いだときに思ったより重くて驚いた」
「ゴブリンは一体だと弱いんだけど、必ず二体以上で行動するからね。冒険者を一番殺した魔物は伊達じゃないってことさ」
「え、ドラゴンとか超強い魔物じゃなくてゴブリンが一番冒険者を殺してるんすか?」
「ドラゴンや強い魔物ってのは中々人の前に姿を現さないからね。それにAランク以上の冒険者じゃないと誰も近寄ろうとすらしない。でもゴブリンはどこにでもいて、君たちのようなルーキーは雑魚だと舐めて近寄る。すると思っても見なかった反撃を喰らってしまい、そのままやられることが多いんだ」
「確かにホープさんやエリーさんがゴブリン相手に舐めてかかるなって強く言ってくれてなければ大きなケガをしてたかもしれなかったっす。仲間と三人だけで来てたら誰かは死んでたかもっす」
「ボクも途中危ない場面があった」
「オレなんか結構攻撃をもらってしまった。正直チェルシーがヒーラーでなければ死んでたかもしれない」
「ルーキーはかなりの確率でゴブリンに殺される。君たちと違って引率指導を受けないルーキーは特にね」
主に引率を受けるのはダンジョンに初めて入るパーティか中々思ったようにダンジョン探索が出来ないパーティだ。
今回全員が前者だった。唯一後者だったのがチェルシーちゃんだ。彼女の場合はレベルが低いから探索が上手くいかなかっただけなんだけどね。
昼食も終えて、また引率だ。
ダンジョンの歩き方、モンスターが隠れていそうな場所、浅い階層で手に入る素材の確認などを教えていく。
こう言ったものは実際に見たり経験をしないと中々分からなかったりするからね。
「ホープさん、お願いがあるんすけどいいっすか?」
「なんだい?」
「その、怒んないでほしいんすけど、デバフを使うところをみてみたいっす」
「それくらいで怒らないよ。そうだね、ルーキーにデバッファーの力を教えるのもいいかもしれない」
「それは確かにいいかもしれないな。ホープの力を見ればデバッファーへの考え方が変わるだろう」
「よし、じゃあ僕が次に現れるゴブリンたちにデバフを一つだけ使うからダニエルくんが全員倒す。いいかい?」
「え、俺が一人でっすか? しかもデバフが一つしかかかってないんすよね?」
「ホープがいれば仮にゴブリンが100体いたとしてもお前だけで倒せる。高レベルのデバッファーはそれほどに凄いからホープを信じておけ」
「わ、分かったっす。でも危なくなったら助けて欲しいっす」
情けないダニエルとのやり取りを聞いていた皆んなはデバッファーの力がどんなものなのか気になってきたようだ。エリーが持ち上げるせいでハードルがかなり上がってしまったな。
「いたね、三体なら余裕だ。僕は<
「わ、分かったっす。いつでも行けるっす」
「<
僕が<
「え、まじすかこれ……?」
「ほら早く倒して、まさか倒せないのかい?」
「は、はい! やるっす!」
起こったことに理解出来ていなかったダニエルは僕の言葉で再起動し、見事一人でゴブリン三体を危なげなく、というよりも一方的に倒してみせた。
「これが高レベルのデバッファー……」
「あんな簡単にゴブリンを倒せるように出来るなんて……」
「デバッファーが弱いとかお荷物だとか……」
みんなが言葉を無くしてしまっていた。
「ほ、ホープさん凄いっす! なんすか今の!? 動きがゆっくりになるとかいうレベルじゃないっすよ! 殆ど止まってましたよ!」
「ダニエルくん落ち着きな。あまり騒ぐと声を聞きつけて魔物が来るから」
「そうでした、すみませんっす。でも流石に今のは許して欲しいっす。それくらい衝撃受けたっすよ」
ダニエルの興奮が凄い。そして何故か隣でドヤ顔をしているエリーがいた。
「いいかお前ら、今見たようにデバッファーとは強力なジョブだ。確かに低レベル、今のお前たちと同じ程度のデバッファーはホープには悪いが正直言って弱い。というのも殆ど敵を弱体化出来ないし、すぐにその効果が切れてしまうからだ」
エリーの言葉に皆んなが頷いている。いや君たち低レベルのデバッファーを見たことないでしょ?
「まあレベルを上げるとこんな事が出来るようになるよってことさ。少しはデバッファーのことを知ってもらえたならうれしいよ」
「デバッファーすごいっす。初め調子に乗ったこと言ってすみませんでした」
「その事はエリーが代わりに怒ってくれたからもう気にしてないよ」
ダニエルだけでなく皆んなが凄い凄いと言ってくるが、正直なれないな。ルーキーがこんなにデバッファーを褒めるなんて変な感じだ。
そんなむず痒さを覚えながら僕は彼らへ指導を続けていくのだった。
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