第47話 夜番にて

 そうこうしているうちに夜になった。いつも疑問に思うが、何故か外と同じで日中はダンジョンの中も明るいし、夜は暗くなる。

 モンスターのポップもそうだが、ダンジョンとは不思議な場所だ。


 さて夜番だが、流石にこれだけ人がいればチェルシーちゃんを抱くのは難しいので我慢だ。

 今回パーティ単位で交代することになり、初めの夜番をダニエルたち、次にレオたち、最後にチェルシーちゃんたちだ。

 僕とエリーは僕が先に夜番になった。


「三人とも今日はどうだった? 分かりにくかったところとかあったかい?」

「全然っす、タメになる事ばかりで引率をちゃんと受けて良かったと思ったっす」

「俺もです」「おれもっす」


 素直と言うか、根は悪い子たちではないんだろう。

 この町で今後依頼をこなしていく予定だから、こういった後輩からの心象を上げられてよかった。悪印象をもつ相手ばかりだとどこで何をされるか分からないからね。


「ホープさんのデバフを見たら仲間にデバッファーが欲しいなって思ったっす」

「俺もだ」「おれも思った」

「仲間が出来ても僕みたいなデバフ効果は期待しないようにね。いくらゴブリンが相手だったとはいえ、殆ど動いてない状態に出来るデバッファーはほんの一握りだ」

「ホープさんみたいな凄いデバッファーと同じ活躍を初めから期待はしないっすよ。流石の俺でもホープさんがデバッファーの中でもすげー優秀な人だって分かるっすから」


 優秀か。前に僕よりレベルの高いデバッファーが戦うところを見たことあるが、正直お粗末だった記憶がある。

 確かにレベルが高くてデバフの効果も高かった。でもそれだけだった。あの人は戦ってるのではなくてただデバフを唱える人形だった。

 あの人を優秀と言っていいのか分からないが、何となくこの子たちはレベルが高いイコール優秀だと思っていそうだ。


「僕は魔法を一度唱えただけだ。確かにレベルは高いけど的確に魔法が扱えて、それでいてちゃんと戦闘に参加出来てなければ優秀とは言えない」

「確かに魔法一発だけでしたけど、レベルも高いし魔法を使ったんだから戦闘にも参加してるじゃないすか」

「魔法使いが強力な魔法を使ったのと変わらないよ。開幕の一撃だけ放ってあとは後ろからただみてるだけのやつと一緒に戦ってるってあまり思えないだろう?」


 あまり納得はしてなさそうだけど、この辺は考え方の違いだろうからこれ以上言うのはやめておこうかな。変に熱くなられてもめんどうだし。


 今日のことについてダニエルたちと話していると交代の時間になる。

 三人はレオとココちゃんと交代して休む。


「二人とも眠そうだね」

「はい、少ししか眠れてませんので」

「ココもです」


「そうだココちゃんに聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「ココにですか?」

「うん、ココちゃんはレオくんと付き合ってるの?」

「え、え、え? れ、レオとはその、なんて言うかその」

「付き合ってないなら僕はどうかな? 大切にするからさ。いきなり付き合うのが無理なら一度だけでいいからデートしない? それかお試しで付き合ってみて相性がよければそのまま本当に付き合ってみるってのもいいんじゃないかな?」

「いや、その、ココには好きな人が」

「その人とは付き合ってるの?」

「付き合ってるというか」

「はっきりしない仲なら僕にもチャンスありって事だね。引率が終わったら二人でご飯にでも行こうよ。約束だからね」

「いや、そのココはレオと」

「約束だよ? いいね?」

「は、はい……」


 押したら食事の約束をレオくんの前で取り付けることができてしまった。


「レオくん、今ので昼に言ったことの大切さが分かったかい?」

「はい、嫌と言うほど分かりました」

「え? え? なんのことですか?」

「ココ、なんでホープさんにボクとの関係を聞かれた時にはっきりと付き合ってると言ってくれなかったんだ?」

「それはえっと、恥ずかしくて」

「ボクと付き合うことはココにとって恥ずかしいことなのか?」

「そ、そう言うことじゃなくて、冷やかされたりとかされるのが恥ずかしいから」


「今後ボクとの関係を聞かれたら相手が誰であろうと付き合っているとはっきり答えてくれ」

「ココちゃん、もしも僕が邪な考えを持った男だったら一緒に食事に行ってそのまま既成事実を作ろうとする事もある。ココちゃんがはっきりとレオくんと付き合ってると言えばそれだけで引いてくれる相手は多いし、多少言い寄ってこられてもきっぱり断らないと取り返しがつかなくなることだってあるんだよ?」


「そうです、よね。うん、ごめんねレオ。次からはちゃんとはっきりと言うよ。でもホープさんとご飯の約束しちゃったからそれだけは許して」

「いやいや、さっきのは冗談だからね?」

「え?」


「ココ、さっきのはボクとココのためにホープさんが悪役になって注意をしてくれただけだ。それともホープさんと二人きりで食事に行きたかったのか?」

「そ、そうだったんだ。ううん、別に行きたかったんじゃなくて約束しちゃったから」


 思ったより簡単にココちゃんを騙して抱くことが出来そうだな。

 押しに弱くてしかも約束を守ろうとするなんて、魔法を使わなくてもいけるだろう。


「僕はココちゃんが誘ってくれたら喜んで食事に行くよ。もちろん二人きりでだよ?」

「え!?」

「ホープさんやめてくださいよ。ココも間に受けるな、揶揄われてるだけだ」


 少し慌てたココちゃんを苦笑いの表情で見ているレオ。

 はあ、二人の関係を維持しつつも抱けるようになる日が楽しみだ。


 そう思いながら僕はエリーと夜番を交代して眠りについた。

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