第29話 冒険者を最も殺した魔物
朝目覚めるとエリーと朝食をとり、その時の会話で一度商業ギルドへ行くことにした。
拠点となる家を借りるためだ。いい物件がなければ宿暮らしになるだろうな。
結局従魔も一緒に住める物件を探す事になった。やはりちゃんと連れ回した方が安全だし従魔も主人と出来れば多く一緒にいたいだろうからね。
いくつか物件を紹介してもらい、内見も行った結果一つの家に決める事にした。
「掃除しなくても十分綺麗だね。部屋割はどうする?」
「ここの商業ギルドはマメなんだろう。部屋は別に何処でも構わん。いや、一番奥がいい」
「了解、じゃあ僕は手前の部屋にするよ。空いてる部屋はどうする?」
「空いてる部屋をヤリ部屋にしたらいいんじゃないか? そうすればホープの部屋も汚れないだろう」
「確かにそれは良い案かもしれない。となるとベッドがいるな。後は魔石を置いても大丈夫そうな家具もか」
自室でやると早めに掃除しないとその日ベッドで寝れないから助かる提案だ。これで寝るときベッドが濡れててびっくりする事も減るだろう。
それに多少汚しても問題ない部屋があるなら出来る事も増える。エリーも喜ぶことだろう。というかそれが目当てだろうな。
「あと一室あるけどそこはまた後で考えようか」
「そうだな。では取り敢えずヤリ部屋用の家具を買いに行くぞ」
やっぱりそれがメインの目的だったか。まあ僕としてもメリットがあるしいいんだけどね。
家具一式を買い漁り2人であーだこーだ言いながらヤリ部屋を装飾していく。
「壁に穴開けたけど引き払う時いくら取られるだろう」
「その時は私が払う。私が覗くために開けたのだからな」
一見すると普通の部屋。だが至る所に魔石が置かれている。
そして壁に穴。家具などで見えないように隠してはいるがバレないだろうか?
まあいいか、その時はその時だ。
「思ったより早く終わったしダンジョンについて話し合おうか」
「そうだな、昨日買った地図を見ながらルートを決めよう」
僕たちはリビングで昨日買った一番大きな地図を広げる。流石に金貨1枚もしただけはある大きさと情報量だ。魔物の情報だけでなく何が取れるかまで細かに書かれていた。
「取り敢えず明日は5階層まで行こう。地図を見る限りそれなら日帰りも簡単そうだ」
「魔物も手こずりそうにないしそれで構わん。何か採取したりするのか?」
「そう言えばギルドに薬草系の依頼があったから薬草採取もいいかもね。まあ下見に行くだけだから時間に余裕があればって感じかな」
「分かった。では早く女でも引っ掛けてきてくれ」
「何がではなのか分からないんだけど? ダンジョンに行く前日に無駄に体力を使いたくないよ。一応明日行くダンジョンは初めてだから万全で行きたい」
「それもそうか、では私も今日は早めに休むとしよう」
エリーって僕より性欲があるんじゃないか?
仕方ない、明日ダンジョンでいい出会いがあればそのまま連れ込むか。
僕たちは夕食を終えると部屋に戻り明日に備え寝ることにした。
「おはよう」
「ああおはよう」
朝の挨拶もそこそこに朝食を作る。基本的に家でも外でも食事を作るのは僕の仕事になってるからね。
逆にエリーは洗い物をしてくれるから洗い物が苦手な僕としてはとても助かっている。
朝食を終えると早速出発だ。
「おはようございます、ギルドカードの提示をお願いします」
ダンジョンに入るための確認だ。いつも通りにカードを取り出す。
「初めての冒険者様ですね。申し訳ありませんがあちらで手続きをお願いします」
あー忘れてた。初めてのダンジョンは手続きがいるんだった。
仕方ないので簡単な説明と手続きを済ませる。この時ついでだからダンジョン内の事をいくつか聞いてみた。
Cランクパーティが大体15〜20階層をメインに潜っており、Dランクパーティが5〜15、ルーキーがそれ以下といった感じだそうだ。
となるとDランク以上は基本的に数日かけて潜るわけか。
棲み分けも出来てるようなので幾分か気が楽だな。
たまにルーキーの狩場を荒らす奴らが現れるからなあ。ルール違反ではないけどマナー違反だから見ていてあまり気持ちのいいものじゃない。
「じゃあ取り敢えず決めたルート通りに行こうか」
「分かった、現れた魔物は全て倒して良かったんだよな」
「問題ないよ。避けてたら5階層まで辿り着けないからね」
ルーキーのために魔物を残してもいいが、そのせいでルートを変えたり逃げたりしてたら意味がない。ならば一定距離内にいる魔物は全て狩った方が早い。
雑魚狩りはエリーの従魔であるアデラインとラシャドがやってくれるので僕たちはダンジョン内を観察し把握していく。
やはりダンジョンは何処に行っても似た作りだ。帝国時代もいくつかダンジョンに潜ったが大差がない。
違うのは出てくる魔物と手に入る素材くらいか。
地図にも描かれていたが5階層毎にセーフティエリアがある。これも他のダンジョンと同じだ。
「しかしこのダンジョン、ルーキーは大変じゃないか? 結構な被害者が出てそうだな」
「確かにそうだろうね。低階層はゴブリンがメインだから舐めたルーキーが何人も死んでるはずだ」
「ゴブリンから手に入る素材は殆ど売り物にならないから金銭的にもつらそうだな」
「金銭的な問題は薬草採取かダンジョン以外の依頼で解決出来るからなんとかなるって感じかなあ。レベル上げはやっぱりダンジョンの方が効率がいいから悩ましいだろうね」
危険を覚悟で一気にレベルを上げてランクを上げるか、貧乏生活をしながら確実にレベルを上げてランクを上げるか。
ゴブリン相手に危険を覚悟でレベル上げは正直オススメ出来ない。ゴブリンは狡猾かつ残虐性が高い。それでいて醜くも姿は人型という事でルーキーは殺す事に躊躇してしまい、その隙を突かれて殺されたり犯されたりするからだ。
1匹だけなら子供程度の身体能力しかないので弱いというのは事実だが、そのせいでルーキーは油断する。
ゴブリンは決して1匹で行動しない。最低でも2匹、最悪10匹以上の群れで襲ってくることもあるのだ。
群れのゴブリンは正直言ってルーキーには荷が重いだろう。完全に備えていなければ無傷で倒すことは無理だ。
むしろ備えていても全滅する可能性がある程度には脅威があるのだが、今も昔も簡単にゴブリンに殺されるルーキーは後をたたない。
冒険者を一番殺した魔物はゴブリンだと言うことをもう少し理解した方がいいだろうな。
そう考えると僕とエリーはゴブリンと大差ないな。
ルーキーを平気で殺したり犯したりしてるからね。しかもゴブリンより強いから脅威なんてレベルでは済まない。
うん、まさに【
ルーキーにとって最悪な存在だという事を自覚したところで5階層のセーフティエリアへ辿り着いた。
「昼時だからか意外と冒険者が多いね」
「そうだな、殆どがDランクパーティだろう。まあいい、取り敢えず昼食にしよう」
エリーに急かされたので町を出る前に買っておいたサンドイッチやお湯を注げばスープになるインスタントスープを作りゆっくりと昼食を食べるのだった。
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