第25話 半ルーキー

 今回の依頼で初めて同じ休憩場で他の商隊と一緒になった。それも夜だ。


 向こうにも護衛がいるように見える。

 こういう時はお互いに挨拶程度はしておくのが冒険者のルールというか暗黙の了解になっているので、ジャスパーさんに断り僕が行こうとするとジャスパーさんも同行する事になった。


 話を聞いたりして情報を交換したいようだ。それに挨拶をして少しでも友好を広げたいそうだ。

 まだまだ若い商人だからコネや伝手を増やしたいのだろう。


「初めまして、少しいいかい?」

「ん? ああ何だ? あまり近寄らないでくれるか? 君たちが商人を装った盗賊の可能性があるからな」


 何だコイツ、依頼主に確認もせずに門前払い。それもこちらを盗賊と言うとは本当に冒険者か?


「こら! なに言ってんだバカ! すみませんうちのバカが。初めまして、私はジェシカと言います。今すぐ確認を取ってきますのでお待ちください」


 ジェシカという女が頭を低くして謝罪し、走って商隊を率いている商人の元へと向かっていった。

 彼女は冒険者の暗黙の了解を知っていたようだな。と言う事は最初に話しかけた奴とは初めて一緒に護衛依頼を受けたのかもしれない。


「すみませんな、私が雇った冒険者が無礼を働いたようだ。許してほしい」


 ジェシカが40〜50代ほどの男を連れてきた。彼が依頼主か。


「いえ、警戒をするのは当たり前のことです。気にされないでください」

「ありがたい言葉だ。それで何かようかね?」

「今夜我々もこちらの休憩場を使いますのでご挨拶をと思いまして。失礼、私は商人のジャスパーと申します。以後お見知り置きください、チャーリー様」

「ほう、君がジャスパー君か。噂に聞いているぞ、ここ一年でかなりやり手の若い商人が現れたとな」

「チャーリー様に名前を覚えていただけているとは光栄です。まだまだ未熟者ですが、過分な評価をしていただきありがとうございます」


 たしかチャーリーってこの国のトップ3に入るほどの大商会の頭目だったはず。かなりの大物とこんな所で出会うとはな。

 そしてやはりジャスパーさんはやり手で有名だったのか。一日で完売するのも凄いが仕入れも一日で全て行っているからな。


「それとそちらの冒険者は【愚者と賢者トリックスター】のホープ殿だろう?」

「それは帝国時代の、それも4年ほど前までの話です。今は【捕食者プレデター】というパーティを組ませてもらっています」


 僕のことも知っていたのか。隣国とはいえ、他国の冒険者まで把握してるとは恐れ入る。


「そうであったな。しかしそうか、ここにホープ殿がいると言うことは【愚者と賢者トリックスター】は負けたのだな」

「【愚者と賢者トリックスター】が負けたとはどう言うことですか?」

「道中出会ったのだろう? 力尽くでホープ殿をパーティに連れ戻すと町で言っていたと聞いている。それに私たちより一日早く出発していたからな、タイミング的にピッタリだと思うが違ったかね?」


 アイツらは町中で何を言ってるんだよ。頭が痛くなる。


「いえ、出会っていませんよ。彼らは帝国の冒険者、それもAランクパーティです。こんなところで出会うことなどあり得ないかと思います。おそらく【愚者と賢者トリックスター】を騙った偽者だったのではありませんか?」


「君がそう言うのであればそう言うことにしておこう。私はジャスパー君と話をしたいので、ホープ殿は私が雇っている者たちと自由に話してくれて構わない。彼らは初めての護衛依頼らしくてな、出来ることなら多少の心得でも教えてやってくれると嬉しい」


「分かりました。ではそちらの冒険者と少し打ち合わせをさせていただきます。心得については言うことを聞いてくれるか分かりませんが努力します。ジャスパーさん、エリーの従魔を一体つけますので離れても構わないでしょうか?」

「ええ、ではそちらは任せますね」


 ジャスパーさんの許可も取ったところでチャーリーの後ろに控えていたジェシカが「こちらへどうぞ」と案内をしてくれる。


「<魅了チャーム>」

「何か言われましたか?」

「いや、何も」

「そうですか、失礼しました」


 小声で僕はジェシカへ<魅了チャーム>をかけると少し違和感を持たれたようだが特に気にした様子もない。


 昼間の件もあり、昂っているので取り敢えず今日は誰でもいいから抱きたいのだ。

 顔もスタイルも普通、歳は若そうに見える。この子じゃなくても他に女がいるなら取り敢えず<魅了チャーム>をかけて回ろう。そうしておけば一人くらいは抱けるだろうからね。


「リーダー、チャーリーさんがこちらのホープさんと話すようにって。あと冒険者の心得も教えてもらえだって」

「ありがとうジェシカ。初めましてホープさん。私は【光の運び手キャリアオブトライ】のリーダーをさせてもらっているアイヴィーだ。一応Dランクパーティだよ」

「こちらこそ初めまして。僕は【捕食者プレデター】というパーティのホープだ。これでもBランクだから教えられる事もあると思う」


 アイヴィーと自己紹介をしてきたのはジェシカとそう歳が変わらない少女だ。Dランクに昇級したばかりの半ルーキーって感じだな。

 取り敢えずこの子にもバレないように<魅了チャーム>をかけておこう。


 僕たちがBランク冒険者という事で、素直に話を聞いてくれた。

 彼女達は女2男4の計6人パーティだと説明された。

 この6人というのは1パーティの最大人数だ。それ以上になると冒険者ギルドではパーティとして扱われない。


 6人を集めて冒険者の心得ではないが、気をつけるべき事であったり、今行っている護衛依頼のやり方を僕なりの考えを付け加えたりしながら教えていく。


 女子2人の視線が少し熱いものになりかけているのでもう少しといったところだな。


 しかし男4人のうち2人は同性愛者でお互いに好き合っているのが側からみていても分かるので出来ているのだろう。


 そして残り2人だが、2人ともジェシカ狙いぽいな。最初にこちらから話しかけた男はこの2人に含まれる。


 うーん、こうなるとジェシカを抱きたい。アイヴィーの方が綺麗系で見た目だけならジェシカより上だと思うんだが、ジェシカの方がスキンシップが多く人懐っこいところがあるので好かれやすいのだろうな。


 夜番については自分たちで決めてもらう事にした。

 こちらは2人だけなので先か後か、それくらいしか決める事がない。たまにエリーの従魔三匹に任せる事もあるくらいだ。


 一応僕が先に夜番をする予定だと伝えておく。これで少なくとも少女2人のどちらかは被るだろう。

 何故ならすでに2人がそれらしい理由を言いながら最初に夜番をすると言っているからね。


 <魅了チャーム>を一度掛け直したからこれで当分効力が保つだろう。

 さて、どちらを抱けるか楽しみだな。

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