第14話 いい潮時

◇ ◇ ◇ ◇


 闇にぶら下がる少女は落ちないように力を込める。非力な少女にはそれしか出来ず、ただ耐えるだけ。


 闇は少女を抱え揺らぐ。悪意を注ぐために。

 抜け出す事が叶わぬ快楽、そして偽りの幸福を植え付ける。


「ありがとうミラ」


 たった一言、しかし少女の脳を瞬く間に侵していく。幸せと言う名の猛毒が。


◇ ◇ ◇ ◇


「ごめん待たせたね」


 宿に着いてすぐにミラちゃんを抱く事になったので夕食に少し遅れてしまった。

 律儀にも待ってくれていたエリーに謝る。


「大丈夫だ、私も先ほど来たばかりだ。それでミラはどうした?」

「疲れてダウンしてるよ。思ったより体力がなかったみたいだ」

「そうか、まあいい、さっさと食おう」


 食堂でエリーと夕食を食べ明日以降について話し合う。


「道具がそろそろ買い替えた方がよさそうなのがいくつかあるから道中で買おうと思う。問題ない?」

「問題ない。その辺はホープに任せているからわざわざ私に聞いてこなくていい」

「念の為だよ。気付いたら新品になってたり違う道具に変わってたらエリーも困るでしょ?」

「買い替えたらどの道二人で使って確認するのだから実践で困ったことはないぞ」


 パーティとして必要な道具は基本的に僕が仕入れている。エリーに任せてもいいんだけど、やっぱり自分で見て買った方が安心出来る。

 一応エリーの言うように、同じ道具と買い替えたとしても確認をしている。

 どうしても新品になると使用感がズレるので、実践前に一通り使っておかしな所が無いかなどを確かめる。


 冒険者は命を賭けた仕事が多い。いざという時になって道具の使い方が分からなくて死にましたなんてなったらたまったモノではない。


 エリーもそれが分かっている。実際僕とパーティを組む前に当時のパーティがいざという時にうまく道具が扱えず半壊したそうだからね。


「全部で町3つか、結構この町から離れるね」

「そうだな、この町にはもう戻ってくることもないだろう」

「まあ潮時ってやつかな。新しい出会いに期待だね」

「確かに潮時か。これ以上やりたい放題やっていればバレかねないしな」


 やりたい放題ってほどでは無いと思うけど、平気で殺し犯しをやってきたからなあ。

 エリーの言う通りこれ以上はバレる可能性があるし、そこまでは行かずとも目をつけられるかも知れない。

 そうなってしまえば行動が制限されて何も出来なくなる。


 ある程度話す事は終えたので解散してお互いに部屋へと戻る。

 部屋に戻るとなんとか復帰したミラちゃんがいた。


「ミラちゃん、ご飯をもらってきたよ」

「あ、ありがとうございます。私のためにわざわざすみません」

「気にしなくていいよ。ほら出来立てだから早く食べな」


 申し訳なさそうに、しかし美味しそうに食べるミラちゃん。きっと栄養の大半が平均より大きな胸にいってるんだろうな。いい事だ。


 食後は二人で風呂に入り色々な所を舐めさせた。ミラちゃんの仲間がするはずだった躾を喜んで受け入れている姿は笑ってしまいそうだ。


「そうだ、ロヴンツに着いたら案内して欲しい場所があるんだけどいいかな?」

「案内ですか? ホープさんの頼みならなんだってしますよ」


 これで道具屋を一人で探すよりも楽に見つかりそうだな。


「ありがとうミラちゃん、頼りにさせてもらうよ」

「はい。それとその、二人きりの時はミラちゃんじゃなくてミラって呼んで欲しいです。えっちの時だけじゃなくて、ダメですか?」

「そんな事はないよミラ」


 ミラと呼び捨てにする事で頬を染め胸を押し付けてくるミラちゃん。

 まだ抱かれたいのか。明日は朝早いんだけどな。


 仕方ない、さっさと抱き潰して寝るか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る