第13話 冒険者ギルドの規則

 町に着いたらそのまま冒険者ギルドへと向かう。

 取り敢えず強姦未遂の二人とその証拠を引き渡すためだ。


「【捕食者プレデター】のお二人どうされました? そこで縛られている男の子二人は確か最近この町に来た冒険者だったと記憶していますが。それにその、ホープさんを熱い目で見ている女の子とパーティを組んでいたかと」

「コイツら二人はパーティメンバーである少女をダンジョン内で強姦するつもりだった。だから未遂に終わるように我々で捕らえたのだ。その少女は二人を捕える過程でホープに惚れたと思ってくれ」


 流石冒険者ギルドの受付嬢だな。町に来たばかりのルーキーまで覚えているのか。

 エリーが受け答えをしているが、捕らえたのはエリーで、僕はただ話を聞いてそのまま抱いただけだ。それに抱く前から僕に惚れてしまっていたので虚偽報告じゃないか?


「そうでしたか。ホープさんについては普段からおモテになりますので気にしないでおきます。ですが強姦未遂と言われましても証拠はあるのですよね?」

「ああ、この魔石に記録してある。この場で確認してもらっても構わない」

「分かりました、ではギルマスを呼びますので少々お待ちください」


 僕については気にしないのか。ギルドの受付嬢にまでそう言った風に思われているとはな。そのおかげで言及されなかったからよしとするか。


 証拠品を取り出すと受付嬢はすぐにギルマスを呼んできた。


「なるほどな、確かにこれは証拠として十分だと言える。こいつらには冒険者ギルドとしてギルドカードの剥奪と追放、そして今後一切の加入を禁ずる。それと憲兵へ証拠品と一緒に引き渡す。悪いがこの魔石を預からせてもらう。いいな?」


 証拠十分だったようだな。まあ犯して躾けるとまで言っていたし当たり前か。

 証拠品の魔石を預からせてもらいたいと言うが、実質強制と変わらないので素直に頷く。どの道預けるつもりだったので問題ない。


 さてと、犯罪者をギルドに預け終わると昼前になったのでそのまま護衛依頼について確認をする。


「護衛依頼はどうなりました?」

「結局誰にも引き受けていただけなかったのでお二人にお願いしてもよろしいですか?」

「勿論。あ、合同で受ける事って可能です?」

「合同ですか? 今から冒険者を探すのは流石に時間がありませんよ」

「それは大丈夫かな。このルーキー冒険者と合同だから人数も問題ないと思うよ」


 そう言って僕はミラちゃんの背中を叩く。


「え? わ、私ですか? 私はもう冒険者を辞めて実家に戻るつもりなんですけど」

「実家に帰るのにもお金がかかるでしょ? なんとこの護衛依頼はミラちゃんの実家があるロヴンツを通るんだよ」

「ロヴンツを通るって、本当ですか」

「はい、こちらの護衛依頼は道中にロヴンツを立ち寄る予定で、そこで抜ける事も可能になっております」


 この依頼は2種類あった。最終予定地まで護衛をする依頼と一つ先の町、ロヴンツまでの護衛だ。

 あまり集まらなかった場合を考えて、先の町で新たに冒険者を雇うつもりでこう言った依頼が出る事は少なくない。


「ただこれはDランク以上が条件ですが彼女はまだルーキーです」

「確かBランク以上の冒険者パーティがルーキー、それもソロに指導を行う場合は問題なかったな」

「エリーの言う通りだ。この規則はあまり勧められたものではないけれど、これならEランクのルーキーでもDランクの依頼を受ける事が可能だよね?」

「確かに可能ですね。今回はパワーレベリングやお金儲け、ギルドへの貢献ポイントを稼ぐためという訳でもなさそうですので許可しますね」


 ミラちゃんはよく分かってなさそうだが大丈夫だろう。馬車代が浮いて逆にお金が手に入るのだからね。

 しかもロヴンツまで僕と一緒にいる事が出来るとなると尚更だろう。


「一応ミラさんに言っておきますが、指導料という事で本来貰える依頼料の3割を差し引く事になります。宜しいですか?」

「はい、それで構いません。お願いします」

「受理しました。2時間後にギルドにある3番の部屋で依頼の最終確認と打ち合わせを依頼人と行ってください。依頼の成功をお祈りしております」


 2時間後か、昼食を取った後に商業ギルドに行って今借りてる家を解約して鍵を返したりしてれば時間も潰せるな。


「取り敢えずご飯食べようか」

「そうだな、その後は鍵を返せば時間も潰せるだろう」


 流石エリー、僕と同じことを考えていたようだ。


「あの、私のために何から何まですみません」

「気にしなくていいよ、それにメリットもあるからね」

「メリットですか?」

「ああ、先ほど指導料が引かれると言っていただろう? その指導料は私たちが貰えるのだ」

「そうだったのですね、初めて聞く制度だったので知りませんでした」


 Bランクにもなると流石に危険な依頼が増えてくる。そこで自分の実力が伴わないと判断した冒険者は自身のレベルを上げるかCランク以下の依頼を受けるだけになる。

 そして今回の僕たちのように自身も依頼を受けつつルーキーの指導料ももらうパーティは少なくない。


 エリーが答えたメリットの内容を聞き少しだけミラちゃんが残念そうにする。


「お金だけじゃないよ。僕が少しでも長くミラちゃんと一緒にいたいと思ったってのも理由だからね」


 すでに盲目と言っても過言ではない相手ならこれくらいのことを言ってもいいだろう。

 実際ミラちゃんは頬を染め嬉しそうにしている。

 簡単な子だな。抱き心地がよかったから道中の性欲処理に使うために連れて行くだけなのにね。


 僕たちは昼食を取った後に商業ギルドへ鍵を返し、今晩の宿をどうしようかとエリーと話し合う。


「時間もないし取り敢えず打ち合わせが終わった後に探そうか。見つからなかったらギルドで部屋でも借りよう」

「それが無難だな」

「あ、あの、私が泊まってる宿はどうでしょうか? 私たちは二部屋借りてて、私が一人部屋でカーターとオーウェンが二人部屋を借りていたので人数的には問題無いと思うのですが」

「なるほどな、流石に犯罪者ともなると多少先払いをしていても部屋を開けてくれるだろう」

「確かに良い案かもしれないね。それが無理ならギルドで部屋を借りよう」


 二人部屋か、久しぶりにエリーと同じ部屋だな。まあ何かあるわけでもないから楽だな。


 時間も来たので三人で依頼主と打ち合わせを行う。

 ルーキーへの指導もすると伝えると少し嫌な顔をされたが、本来ならDランクパーティが受けるはずだった依頼をBランクパーティが受けるので問題なく受け入れてくれた。


 後は特にこれといったものは無く、普通の護衛依頼だった。指導するのに丁度いい内容だ。


 打ち合わせも終わり、早速僕たちはミラちゃんが泊まっている宿に来ると問題なく泊まることが出来た。なんならこの宿の一番いい部屋が取れた。

 一応Bランクなので安い部屋を借りるのはあまり良くないのだ。


 そして何故かいい部屋を二部屋取った。一応両方とも二人部屋なので僕とエリーが同室でも構わないのに嫌われたか? と思ったが、昨日の僕とミラちゃんの情事が記録された魔石を見るためだと答えに行き着く。


 広く綺麗で柔らかなベット。そしてそのベットには期待した目でこちらを見ているミラちゃんがいた。

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