第4話 一緒にされたくない

 町からダンジョンまでは馬車が通れるように整備されており、冒険者であれば低料金で馬車に乗る事が出来る。

 その馬車内で僕とエリーは他人もいないのでこれからについて話していた。


「ある程度の物的または状況証拠を手に入れる事が出来れば捕縛または討伐。出来る事なら【白い騎士ホワイトナイツ】全員を、出来なくても召喚術師だけは絶対逃がすな、であってたよね」

「そうだ。それと面倒だが状況証拠などの映像を魔石に記録してくれとも言われた」

「え、最初そんな事言ってなかったよね? 付け加えられたの?」

「そうだ。その代わり不祥事を起こさなければ今後3年はBランクを維持出来る事になった」


「3年ってかなり長くない? それ絶対他にも条件付けられたでしょ」

「ああ。だが簡単だ、元Cランク冒険者で今は賞金首の男がダンジョンに入ったところを目撃したと情報があったそうで、真偽の確認、そして本物だった場合そいつも討伐してこいだとさ。こいつを討伐出来たら3年維持って話だ」

「元Cランク冒険者の賞金首ってそれ絶対Bランクくらいの強さあるでしょ。じゃないと3年も維持させてくれないよ」


 【白い騎士ホワイトナイツ】をストレス発散ついでに殺すだけでいいのかと思ったら余計な縛りがついてしまった。

 元Cランク冒険者の討伐はなかった事にして無視したい。でも条件に出してまで依頼をしてくるって事はいるんだろうなぁ。あまり強い相手と戦いたくないんだけどな。


 面倒だなと思っていると馬車がダンジョンに到着した。


「ねえ、あれ【白い騎士ホワイトナイツ】じゃない? なんでダンジョンの外にいるんだ?」

「万年Dランクだからな、賞金首の話でも聞いて日和ったんだろう」

「どうする? これじゃあ僕たちの仕事になんないよ」


 ターゲットがダンジョンに入らず何やら話し合っている。先日絡まれていた少女もいるからパーティに入れられたのか。これからどうなるか知ったら絶望しそうだな。

 しかしさすがにこんな所でいきなり討伐なんて出来るわけがないので困ってしまう。


「ワフ!」

「なるほど」

「ベンはなんて?」

「魔法剣士のルーキーが死んだからそいつとパーティを組んでいた少女を探しているそうだ」


 ワフ! しか言ってないのになんでそこまでわかるんだよと言いたい。


「アイリちゃんを探してるの?」

「誰かさんと同じで弱ってる所をいただこうと思っているようだな」

「なるほど、考えは悪くないけど、僕は弱っていたからつけこんだわけじゃないぞ? 出会った時からじわじわと魔法で心を弱らせ、信頼関係を作り、決定的なところで逃さず喰ったんだ。だから一緒にしないでくれ」

「どう考えてもお前の方が悪質だな。あいつらも一緒にされたくないだろう」


 僕はちゃんと過程も楽しみたい。あいつらみたいに弱ってそうだから手を出すかってやり方は微妙だ。ただその場で寝取れそうなら手を出すけども。


「それで、中に入らない理由は?」

「先行するパーティを待ってるみたいだな。道中は極力戦いを避けたいようだ」

「そういう事か。じゃあとりあえず僕たちが先行しようか。そうすれば勝手についてくるでしょ」

「そうだな、そうするとしよう」


 複数人でダンジョンに入る場合、必ずパーティ名とパーティ人数、そしてそれぞれの名前を確認される。

 初めて入るダンジョンでは必ず手続きに時間がかかるし、そうでなくとも一人増減するだけで申請しないといけない。

 だからか、面倒な手続きを避ける為にパーティメンバーを変えたり、助っ人を入れたりすることをしない冒険者は多い。ただダンジョン内で合流をするだけでいいからね。まあ報酬関連で揉めやすいからギルド側も黙認はしてるが推奨はしてない。


 僕たち二人は【捕食者プレデター】というパーティを常に組んでいるので面倒な手続きもなくダンジョンに入る。

 すると少しして【白い騎士ホワイトナイツ】もダンジョンに入ってきた。


「とりあえずスケルトンウォリアーとウルフの群れを場所を目指そうか」

「そうだな、一応それも依頼に含まれているからな」

「【白い騎士ホワイトナイツ】の連中も可哀そうに、自分たちが召喚したわけでもないのに犯罪者扱いだ」

「いいじゃないか、あいつらみたいなのがいるおかげで私たちは疑われる事なく殺し犯しが出来るんだからな」

「それもそうか。しかも報酬まで貰えるんだからね」


 道中現れるスケルトンウォリアーやウルフを苦もせず倒し、魔法剣士のガキが死んだ部屋へと到着する。


「うーん、まだ焦げ跡が結構残ってるから火系統の攻撃を連発して酸欠で動けなくなったところで首を刎ねられた感じか。一応火は使うなって注意したんだけど、言った事を聞かなかったみたいだ」

「あいつはお前の事を見下していたしバカにもしていたからな。実際は本人が一番のバカだったわけだ」

「そもそも部屋の入り口が開きっぱなしなのにモンスターハウスだと勘違いしてたからね。あれじゃあ僕たちが手を出さなくても近いうちに死んでたんじゃないかな」

「魔法剣士という優秀なジョブを手に入れてしまった弊害だな。魔物は倒せてもダンジョンに殺されるタイプだ。正しい知識と万全の準備も出来ない奴はどんなに優秀なジョブについていてもすぐに死ぬからな」


 ジョブは基本的に一人につき一つ、13歳の誕生日に神から授けられる。

 魔法剣士という優秀なジョブを授けられたガキはさぞかし喜んだことだろう。


「なんていうかあれだね、アイリちゃんを連れてくればよかった」

「連れてきても邪魔なだけだろう?」

「まあ邪魔だけどさ、ここで無理やりってのもいい気がしてさ」

「幼馴染が殺された場所で好きになってしまった男に無理やり犯される、か。いいな、今回の依頼が終わった後に連れてきてもいいぞ」

「いや、次来たときは焦げ跡とかのガキがここにいたって痕跡が消えてるだろうから別にいいや」

「なるほど、確かにそう言われると趣がなさそうだ。まあ今回は仕方ない、依頼の方が優先度は上だからな」

「依頼を受けてるのに役に立たない性処理道具を連れてきても邪魔だからね」


 魔物討伐という名の回収作業も終わり、時間もあるので昼食をとっていた時だった。


「ワフ!」

「どうやらお客さんらしい」


 ベンが現れ一つ吠えると程なくしてエリーの言葉通りに客が現れるのだった。

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