第7話

大昔であれば、地域の中で隠蔽できただろう。現代では、そうはいかなかった。

誰かが今宮一家の処刑映像を撮影し、動画サイトにアップした事で、世の中は大騒ぎになった。


動画には、火の点いた松明を持つ人々の顔がしっかりと映っており、逮捕された彼らは簡単に武田の事を吐いたため、武田はあっけなく連行された。


おまけにその後、武田と後継ぎである彼の長男が実習生に違法な雇用環境を強いていた事が労総によって暴かれ、武田の息子や娘たちは逮捕されたり自殺したりして、この地域から姿を消し、豪邸であった武田邸は廃墟マニアの集う幽霊屋敷となった。


人材を派遣していた多くの農家や農場経営者が逮捕され、この地域での潮時を感じた高井は、会社を辞めて場所を変える事にした。


稼いだ金は今や、数十億にのぼる。これを元手に、今度は輸出業でもやろうか。今度は自分が異世界人を買い、タダ同然で働かせて人材を確保する。

この国の消費税は上昇を続け、法人税は下がる一方だ。消費税の上昇による、還付金も得られて儲かる事ばかりだ。

高井は順風満帆であろう、今後の事を考えながらワイングラスを傾け、ニヤニヤと笑みを浮かべていた。


税金を安く済ませるために、高井は金を殆ど銀行に預けていない。家に設置した、ワンルームマンション程はある広さの金庫に入れている。


金庫へ向かおうと腰を上げた時、玄関のドアを激しく叩く音がした。


「高井さん!高井さん!大変だ!」


聞き覚えのある声だった。高井が人材を派遣している、農家の石田の声だ。

「やれやれ、また窃盗と実習生の逃亡か」とため息をつき、玄関へ向かいドアを開けると、そこには真っ青な顔の石田が、許しを乞うような顔をして震えている。

次の瞬間、後頭部に衝撃が走り、目の前が真っ暗になった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る