第10話

「はぁ……」


 帰り道を歩きながら僕はザイン様から言われたことを思い出して思わずため息を吐いていた。


 あの後ザイン様とルイナ様の二人と会食をした。とても緊張した。なにせ、ルイナ様がキラキラした目で僕にずっと質問を投げかけてくるのだ。


 そしてそれが終わった後ザイン様とまた話し合うことになり、今後のことについて色々計画したりした。


 一言で言えば、彼はやり手だった。


『金は最初から支払うとして、暁の情報開示を持ち込んだ結果によって判断させてもらう』


 要は働いた分情報を渡すよ、ってことだった。まぁ妥当だとは思ったが、いつの間にか話の主導権を握られていたことには感嘆せざる負えなかった。


 隙が無かった。僕が優位に立っていたことなどなかったのだ。もしかして、初めから狙っていたのか?


「はぁ……」


 もう一度溜息を吐いた。明日からいつもとは違う日常を送るのかなと、憂鬱となってしまったのだ。


 明日からはいつもとは違って盗賊類いのクエストを積極的に受けることにしよう。きっとそれが一番の近道のはずだ。






「……」


「ん?どうしたんだい?黙り込んで」


「いえ、少しだけ驚いてしまっただけです。すみません」


 次の日。


 僕は早速盗賊討伐のクエストを受けることに。するとエリナさんに驚かれた。理由は分かるが、そんなに黙る程なのだろうか。


「五年も同じクエストを受けてきたサフェトさんが、別のクエストを受けるなんて……」


「はぁ……本当にね」


「おや?サフェトさんが変わってくれたのかと思ったのですが……」


「違うよ。昨日ノティス家に訪れただろう?その時に、色々ね」


「あぁ……それはそれは」


 エリナさんがちょっと申し訳なさそうな表情を見せた。流石に貴族から何かを任されるという厄介さは理解しているのだろう。事の初めは彼女からだったからね。まぁ責任を感じているのだろう。


「なんというか、ごめんなさい」


「いいよ別に。もう諦めてるし」


 一度経験しているからそこら辺は問題ない。その時は姉さんがいたけど、そう言ったに関しては使い物にならなかったからね。あの人は良くも悪くも猪突猛進な性格だったから。そう言った難しいことは考えられないんだ。


 だからその役目は僕だった、と言う訳だ。姉さんは戦いで、僕はそれ以外で互いを支え合っていたのだ。


「それでは、宜しくお願いします」


「うん」


 僕はギルドを出た後、いつもの焼き鳥屋で焼き鳥を買い南門へと向かった。今の時刻は昼なので朝よりも南門にいる冒険者の数は少ない。


 いつもよりもストレスなく王都の外に出ることができた。


「さて」


 盗賊がいるとされる場所はここから西に数時間歩いたところだ。だが歩いては間に合わない。今回は魔物とは違って人間だ。もちろん魔物も移動するが魔物はその性質上一箇所に留まることが多い。なので、ゆっくり行ってもまだそこに目当ての魔物がいた、なんてことはザラにある。


 が、盗賊の場合そうはいかない。


 当たり前だ。なんせ、魔物とは違って知性を持ち合わせているのだから。


 故に奴らはそこに留まらずに逃げるのだ。だが、奴らはアジトの近くでしか盗賊活動を行わない。


 だからこそ──


「どうもー」


 僕はあいさつと共に防御シールドで入り口にいた盗賊二人を押し潰した。奴らは声も出ずにそのまま死んだ。


 それを確認した僕はすぐに中に入り、防御シールドと短剣を駆使してすぐに盗賊団を殲滅した。


「弱っ」


 タンクの僕でもこんなに余裕で勝てるんだ、アタッカーだったら秒で殲滅できるだろう。


 さて、それでは早速暁に繋がるものを探すとしましょうか。








「ない……」


 どうやらハズレだったようで、あったのは商人から奪ったのだろう金品と、あとは奴隷数人だった。


 その奴隷は全員子供で、すでに死んでいる奴もいた。


「ぁ……」


「……」


 まだ生きていた奴隷はたったの一人。そいつももうすぐ死ぬということが目に見えてわかるほど弱りきっていた。


 普通この子を連れ帰ってもこの子にとっていい事はない。だって、奴隷は商品だから。


 盗賊から奪った金品は基本的に冒険者ギルドに売却という形で渡さなければいけないため、もしそれをせずに自分の懐に入れようとすると罰せられてしまう。


 おかしな話だとは思うが、そういうルールが出来上がっている以上従わないといけない。それに、冒険者にとってはどっちにせよ金は手に入るので別にそれでもいいという冒険者は多いのだ。


 でも盗賊が奪ったものの中で気に入ったものがあれば、冒険者ギルドから買う、という形で手に入れることもできる。


 要は盗賊から得たものは冒険者ギルドのものだよ、ってことだ。うざい。


「ふむ……」


 話を戻すが、もしこの子を連れ帰ったとして、冒険者ギルドに渡す必要が出てくる。そうなるとまた彼女はオークションに出されて別の奴隷商に売られるのだろうな。


 僕が買う、という選択肢もあるが──


「いかんせん、顔が整いすぎている」


 泥で汚れてはいるが、それでも隠しきれない美少女のオーラ。見た目15歳ほどだが間違いなく成長すれば美人になるだろう。


「……助けて、ください」


 とりあえず飯をあげよう。



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