43話 回帰の竜と王なるもの


回帰の竜。


それは神話に出てくる、神にも近しい力を持つ竜だ。

王族の祖と言われ、このアウローラ王国を作ったと伝わる、つまりはおとぎ話の存在だ。


あまりに荒唐無稽な話には思えたけれど、私の目の前では今も、人魚から手渡された花が、ランタンの熱でぐつぐつと煮えて蒸気をあげている。

震える喉で唾液を呑み込み、私はひそやかな声で囁いた。


「し……死んでしまったんじゃないの?」


ウィルはちょっと驚いた顔をしてから、茶化すように微笑んだ。


「あれ。見たことは信じてくれるんだ」

「当たり前でしょ、ウィルがそんな顔して嘘なんかつける訳ないじゃない」

「あはは。王宮での僕の嘘つきっぷりを見せてあげたいな」

「でも、今回は本当なんでしょ?」


言い切ったら、ウィルは少し口ごもってから素直に「うん」と恥ずかしそうに言った。

多分彼は、幽霊になった自由さのせいで、かなり自分がわかりやすい顔をするようになったことに気付いていないのだろう。


「……回帰の竜と、直接話したの?」

「いいや。回帰の竜は、眠っていたよ。すごく大きくて、全貌は到底見えなかったから、多分喋れなかっただろうし。回帰の竜の代わりに、何というか……番人のような存在がいたんだ」

「番人?」


私は思わず首をかしげた。

そんな不思議な空間に居るのならば妖精のたぐいだろうけれど、私の知っている妖精は、そういうことはしない。

気の良い子達ではあるけれど、役目とか義務とか、そういうたぐいの単語と縁がない存在だ。

けれどウィルは「そう、番人。精霊って名乗っていた」と声を低めた。


「……僕が歩き続けてたどり着いた洞窟の中は、鍾乳石が垂れて、その先から雨みたいに水滴が落ちていたんだ。小さな湖が沢山あって、全てが光っていた。覗き込んだら、水底には数え切れないほどの妖精の涙ソロルラクリマが沈んでいた。王族しか身につけるのを許されない、神秘にして権威の宝石が、おびただしい量で沈んで、虹色の光を放っていたんだ」


私は一瞬どきりとした。

似たような場所を、見たことがある。あの惨劇の夜、姉兄と共に地下道を逃げた時に通り抜けた場所は、まさしくそんな泉だった。

けれども、妖精の涙が権威の宝石だというのは初耳だ。高価な石だとは知っていたけれど。


「僕が驚いて湖の底を見つめていたら、ふいに後ろから声をかけられたんだ。『待っていた』って。振り返ったら、背の高い、彫刻みたいな人が立っていた。お母様に少し似ていたけれど、あれは多分、僕の記憶を反射していたような気がする」


心当たりがあると言うべきか迷っているうちに、私はウィルの話に意識を奪われていた。


「番人は、ずっと僕がここに来るのを待っていたって言った。僕は驚いたけど、こんな状況だから腹をくくって、大人しく聞くことにしたんだ。ええと、ユレイア、回帰の竜のおとぎ話は知ってるよね?」


急に話を振られて、私は驚きつつも頷いた。


「うん。昔々、妖精の国に住む神々が星を摘んで妖精姫を作りました。回帰の竜は幾たびも命を繰り返して妖精姫の心を射止め、手を取り合ってアウローラ王国まで流れ着き、この国を作りました……でしょう?」

「あれっ、トーラス子爵領ではそういう風に伝わってるんだ。地方性かな。首都オーブでは、出だしがちょっと違うかも。……無慈悲な天の神の最強の武器として、回帰の竜は多くの戦を平らげていたんだ。天の神に仇をなす多くの神を滅ぼした竜は、ある日、天の神が作った最高傑作の人形、美しき妖精姫に見いだされて、自分が王となる存在だと知る。それで、幾たびも命を繰り返して、戦を平定し、天の神から妖精姫を救い出した。その後、彼らの目の届かない新天地を見つけ出すと、そこでアウローラ王国を建国する……って感じ」

「へえ。不思議ね、流れも最後もほとんど一緒なのに、別のお話みたい」

「まあ、吟遊詩人は観客のウケがよくなるようにちょっとずつお話を変えちゃうものだからね」


わかるわかる、と頷いてから、けれどウィルはふと声を落として話を戻した。


「……でも、番人の話はどっちとも違った。

古い歌を僕に教えて、これは本当のことだと言ったんだ。……聞いていてね」


そう言ってウィルが歌い出したのは、しっとりと切ない旋律の民謡だった。

不思議と切なくなるような優しい歌声の、どこか懐かしい旋律が、半透明の口からあふれ出す。


いまははるか 遠き地に

高貴なる天の神 たくましき地の神あり

地の神ら、一匹の竜を弱きものとして放逐す

天の神ら、竜を拾いて回帰の力与えん

竜、地の神を襲いてことごとく滅ぼせり

やがて心目覚め、天の神らに背を向けん

妖精の姫を攫いて草原へ去りたり


あまたの子ら生まれ、また生まれ、また生まれること繰り返し

子らの名、妖精と名付けられん


竜やがて地に伏せ 縫い止め 石を抱けり

されば妖精姫、心臓にくだりて、石棺に眠る

妖精ら父母を失い、地に満ちて、満ちて、満ちたり


時過ぎていくたり

凍え、呪われし地より、まれびとあり

まれびと語るに

 

我、傷つきたる地の神なり 敗北せし神なり

傷つきたる地の神、妖精を弟妹と呼ばん

守るべき民のために伏して平穏を願う


かくて妖精、よっつに別れるなり


天の神に助け乞い、交わりし妖精あり

子ら、滅びをしりぞけたまえと塔守りたり


地の神を愛し、交わりし妖精あり

子ら、鳥獣、魚、竜になりて地に満ちたり


守られし民を愛し、交わりし妖精あり

子ら、人の姿になりて国作り、地に満ちたり


一度も交わらぬ妖精あり

ただただ、地に満ちたり


彼らこの竜の眠る地でよく満ちたり


「……と、まあ、こんな感じ」


そう言ってウィルは、ふうとため息をついて微笑んだ。

まるで、舌に馴染んだ故郷の歌を語るように、ウィルの声はなめらかで途切れもなく、いくつか分からないくだりがあっても聞いていて楽しかった。

私は深くため息をついて、小さく拍手をする。


「ウィルってば、歌まで上手いのね、知らなかった」

「これは特別。番人の歌を一度聞いただけで、勝手に全部歌えるようになったんだ」

「へえ、不思議。でも、このお話って……」


そう言いかけた時、ちょうどランタンの上に乗せたカップが、ぶぶぶぶ、と震えだした。

見れば、人魚の花は蒸発するのが早いのか、既に花の全てがどろどろになった青緑の苔のようになって、カップの底へ張り付いていた。逃げ場のなくなった水蒸気が縁から噴き出し、暴れる鍋のフタみたいに震えていたらしい。


「ねえウィル、これもう火から下ろして良いの?」

「え、うん! 粉じゃないから勝手がよくわからないけど、多分これで出来ているはずだよ。竜の薬ドラコヴィータ


よく振ってね、と言いながら、ウィルはひまわり油が入っていた小瓶をふわふわと私の手元に飛ばしてくれた。

瓶の中を見れば、酒で煮た人魚の花の水蒸気は、今はすっかり水滴になり、油と混じらず二層に別れている。


「ああ、よかった……!」


ウィルに言われた通りにしゃかしゃかと振りながら、私はショーン大叔父さんの元へ駈け寄った。

ぐったりと深く眠るショーン大叔父さんの顔は心なしか赤らんで、発熱しているような気がした。雨に濡れて風邪を引いたのかも、もしかしたら脇腹の矢傷から雑菌が入ったのかも知れない。

そうと思えば恐ろしくて、私はすがるようにウィルを振り返る。


「どうすればいいの?」

「傷にかけても、飲ませても利くよ」

「わかった。矢を抜くから手伝ってくれる?」

「そのままで大丈夫。自然に抜けるよ」

「すごいのね」

「そりゃあ、王家秘伝の奇跡の薬だから」


大きく頷いて、私はまず腹に突き立った矢の近くに小瓶の中身を垂らした。

よく振ったお陰か薬液はとろりとして、朝日のような金色だ。

突き立った矢軸に沿って落ちていった薬液は、血に濡れた服に染みこむなり、目に見えて変化をもたらした。


「うわあ……!」


じくじくと滲んでいた血は鈍く金色に輝き、矢がひとりでにゆらゆらと揺れる。

ショーン大叔父さんの腹の中で、ばきっと鋭い音がしたかと思うと、矢羽根が傾き、下から小刻みに叩かれたかのように、ずる、ずるっと赤黒く濡れた矢軸がせり出してくる。

目を丸くして見守っている暇もないくらいだった。

あっという間に矢は自ら抜け、からん、と折れた矢羽根が床に落ちた。

と同時に、ショーン大叔父さんの背中の方で、血に濡れた鏃が落下して金属音を立てる。身体の中で折れていたらしい。


「すごい……!」


私は膝をついて傷跡を凝視した。

大きなお腹に空いていたはずの穴はすっかり消え、血まみれの服すら金色の粉がついたかのようだ。服の破れ目から見える肌はつるりと健康的で、まさか今の今まで矢が刺さっていたなどとは到底思えない。


「これが竜の薬、ドラコヴィータ……」


確かにこれがあれば、不死身と言われる軍勢だって作れてしまいそうだ。

アウローラ王家が必死で独占するだけある、と思って神妙な顔でウィルを振り返れば、何故かウィルは私よりも強ばった顔をしていた。


「違う……」

「えっ?」


初めて作った薬を使用した時の感想としては一番聞きたくない単語を言われて、私はうろたえた。


竜の薬ドラコヴィータはこんな治り方しない。一日目に熱が引いて、二日目に傷が塞がって、三日目にすっかり治っている……そういう奇跡なんだ。これは、こんな治りかた、するはずないのに……。こんな、こんなんじゃ、竜どころか、女神の薬デアヴィータだ……」


完全に「何をしたのユレイア」と言わんばかりの目でウィルが見つめてくるので、私は必死に首を横に振った。


「わ、私のせいじゃなくない? 一滴も残さずに水蒸気を封じ込めたのはウィルでしょう?」

「でも、こんなに新鮮な人魚の花ネレイス・フォリアを、こんなに大量に使うのは初めてだったし……よく考えたらひまわり油がトーラス産なのも怪しく思えてきた」

「トーラス子爵領のひまわり油はおいしいだけのただの……あっ」


ううん、とうめき声と共にショーン大叔父さんが寝返りを打ったので私は飛び上がった。

呼吸は深くなり、まるで本当にただお昼寝をしていただけのようだ。

その事に泣きたくなる程安心すると同時に、今、彼に起きられたらこの状況を上手く説明する自信がまったくないことに気がついて青ざめる。


「とりあえず作戦会議しよう! 甲板へ!」

「わかった!」


私と同じ気持ちだったらしいウィルの号令と共に、私は小瓶をポケットに突っ込むと、極力足音を立てずに縄ばしごに掴まって甲板へ上がっていった。

天井の扉が勝手に跳ね上がり、霧雨と共に冷たい空気が吹き付けてくる。


小さな船倉は、ランタンひとつで随分と暖かくなっていたようで、知らず「さむぅー……」と情けない悲鳴が口から漏れた。


「あ、やっぱり寒い?」

「すっごくさぶい」


甲板に這い出すと、船は相変わらず投げられた小石のように跳ねながら、すさまじい速度で運河を走っていた。

既に民家の連なった地域は抜け、両側には冬なお緑豊かな鋭い山峰が切り立っている。

谷底の運河は風が冷たく、私は濡れた衣服も相まってガタガタと震えだした。


「こ、このままじゃ凍死しちゃう……」


かなり本気で低体温症の心配をして呟いたら、ウィルが慌てて指を鳴らした。

瞬間、私のポケットから小瓶が飛び出し、勝手に唇に突撃して、中の竜の薬ドラコヴィータが流れ込んでくる。


「ちょっと、ウィ……っん、げっほ、けほっ!」

「あ、ごめん!」


粘度のある液体といえど、突然すぎてむせる私の背中を、冷たい風が優しく撫でる。

飲み方に対して言いたいことは多少あったけれど、それでも薬の効果は絶大だった。

とくんと心臓が鳴り、私は思わず両手を見つめた。


「あったかい……」


腹の底から力がみなぎり、みるまに指先からぽかぽかと血がめぐり、身体が軽くなっていく。

肘や膝など、あちこちでぶつけたり、擦ったりしていたささやかな傷が癒えていくのがわかった。

緊張で強ばっていた筋肉がほぐれて、今ならいくらでも走れそうだ。


「本当にすごいのね、この薬。服はまだ濡れてるし寒いのに、内側からあったかい」

「あ、やっぱり寒くはあるんだ?」

「小さな穴の空いたコップに、バケツで勢いよく水を入れてるから、水がいっぱい入ってる、みたいな感じ」


そっか、と頷いて、ウィルはあーあ、とわざとらしく肩をすくめて流し目をしてみせた。


「なんて残念なんだろう。もしも僕に今、ちゃんとした肉体があれば、君を暖めてあげられたのに!」

「その場合、ウィルもずぶ濡れだからどっちにしろ寒いよ」

「だからこそ手を取り合うんじゃないか。でも、それは来世のお楽しみか。真っ先に迎えに行くから、今日みたいに抱きしめて歓迎してね」


茶目っ気たっぷりにウィンクして見せたウィルに、私は何とも気まずいような心地になった。

どうやらウィルは、完全に私が記憶を失う可能性や、あるいはそもそもパラレルワールドの私に出会ってしまう可能性を失念しているらしい。


「……もし、会えなかったら? ええと、赤ん坊の私を狙っているって勘違いした妖精が告げ口して、お父様やお母様が、ウィルの出会えない日に神殿へ来るとか」


流石に、記憶の話は言いづらくて、まろやかな例え話をしてみたけれど、ウィルはにこりと笑って胸を張るばかりだ。


「それでも、いつか必ず機会は巡ってくるよ。大丈夫。僕、今度は乗馬とかも本気でやるよ。いざとなったら自分で馬を走らせて、トーラス子爵領に駆けつける。何しろ僕だって、妖精の末裔なんだから」


あ、とつぶやき、私は目をぱちくりして首をかしげた。


「そっか。つまり、さっきの歌語りによると……回帰の竜と妖精姫の子供達のうち、地の神を信仰していた人間達と結ばれたもの達が、アウローラ王家になっていったのね」

「そう。その他の、妖精姫が産んだ回帰の竜の子供達……。番人が言うには、誰とも交わらなかったものたちは、今もこの地に満ちている、妖精達だったんだって」


私は、更に目を丸くした。


「私達に馴染みのある?」

「うん。僕達にもう結構馴染んでしまった、今も君の隣で寄り添ってる馬とか梟とか、そういう妖精達」

「あ、近くに居るんだ。嬉しい」


なんとなく、このあたりに居るかも知れないとあたりをつけて適当に空中を撫でている私に、ウィルは呆れてため息をついた。


「……それだけ?」

「え、何が?」

「……ユレイアは妖精に馴染んでいるからそんなに呑気でいられるけど、僕は自分が妖精の血を引いてるって聞いて物凄い衝撃を受けたんだよ?」

「そもそも、アウローラ王家は竜と妖精姫の末裔って話だったでしょう?」

「神話や伝説だと思っていた話を、今このあたりでうろついている、半透明のトカゲや鷲なんかに馴染んだ時に聞くのってかなり違うんだよ……」

「トーラス子爵領では、妖精と人間が結婚するおとぎ話が沢山あるから、私は全然」


ウィルは何やら釈然としないような顔をしたけれど「とにかく、さっきの話に戻るけれど」と咳払いをして言った。


「洞窟の中で歌語りを終えた番人は『私は、滅びを退けるために天の神と交わった妖精との子らである。精霊と呼ばれることもある。アウローラ王家の末裔たるお前は、せねばならないことがある』って感じのことを言ったんだ」

「国をよく治めなさい、ってこと?」

「ううん。……回帰の王が生まれる条件は、この国に危機が訪れることなんだって」

「危機?」


オウム返しにたずねる私に、ウィルは頷いた。


「この土地の人々がまるごと滅んでしまいそうな事が起きる時、精霊達は父なる回帰の竜の力を王家の者に授けて、それを回避させている。だからこそ、歴代に何人も回帰の王が現れて、そして死んでいく。滅びを無事に食い止められるまでやり直して、無事に危機を乗り越えたら寿命の通りに死んでいくんだって」

「わざわざ王家の人間にやらせずに、自分でやればいいのに」

「精霊は、人の世に関わりすぎるといいことがないんだってさ。でも、僕はずっと回帰の王って何なんだろうって考えていたから、その説明をもらえて、すごくすっきりしたんだ。歴代の回帰の王を思い出したら、思い当たるふしもあったし」

「そうなの?」


もちろん、と家庭教師みたいな口調でウィルは頷いた。


「アウローラ王国が成立して少し経ってから、呪氷荒野を超えて、大絶崖を乗り越えて、西の民がやってきた。彼らはアウローラ王国を滅ぼしてこの地を乗っ取ろうとしたけど、当時の回帰の王、ヘンリー三世が、崖の向こうに未開の港を見つけ出した。西の民には、そこにアンティカという国を作らせることにして、結果、恩を売って戦争を避けた」


歴史の授業はまだだったので、私は素直に、へえ、と物珍しく頷いた。ウィルは、何度も学んだ常識として滑らかに、当たり前のように告げる。


「数世代後の回帰の王、アース一世は、そのアンティカから別れたノヴァという国が泥沼の争いを起こした時、二つの国の争いを止めた。話し合いと情報戦ひとつで、両国を呑み込んでアウローラ王国を広げつつ平定したんだ。……どっちの回帰の王も多分、最初の人生ではアウローラ王国を滅ぼされたり、三つの国が互いに足を引っ張り合って、国土がめちゃくちゃになる程焼けるとか、ひどい目に遭ったんじゃないかな」


そう、と頷きかけて、私はぞっとして顔を上げた

今、私の目の前には回帰の王、つまりウィルが居る。


つまりそれは、大きな危機の訪れを意味するのではないか?


私は飛び上がらんばかりに慌てて、ウィルの肩を掴もうとしてすり抜けた。


「ウィル! あなたの最初の死因って、何? どこからか何かが攻めてきて、アウローラ王国がめちゃくちゃに……!?」

「いや、普通に暗殺。狩りの途中で馬が急に暴れて落馬」

「え、じゃあ何で……?」


そんな、とばかりに呆然とする私に、ひょいと肩をすくめてウィルが苦笑した。


「……と、この間まで僕はすっかり思い込んでいたんだけど、実は違ったみたい。僕は真っ先に死んでしまって以来、最初の人生よりも長生き出来なかったから知らなかったんだけど、僕が落馬したのは地面が揺れたからなんだ」


ウィルは大きく息を吸い、ほんの少し引きつった顔で、でも無理矢理に微笑んで告げた。

何かに挑むように。


「十数年後、アウローラ王国に大地震が起きる」


それを止めるのが、回帰の王たる僕の役目だ、と。

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