44話 私しか知らない沢山のこと

ひ、と私が息を飲むと、ウィルは意外そうに目を丸くした。


「地震のこと知ってるの? 歴史上も数回しかない、嫉妬の神が暴れて地面が揺れる天罰なんだけど……あまり歴史に詳しくないのによく知っていたね」


まだこの世界では、地震は神の為せるものだと思われているらしい。確かに、妖精が実在する世界なら、そう思いたくもなるだろう。

だけど私は、歴史上に数回、という言葉の方に耳を疑った。


「まさか、今までそれだけしか無かったの!? 私の前世住んでいた国では、災害と言ったら、真っ先に名前が挙がるもののひとつだったのに」

「地震を!? 直に体験したことがあるの?」

「街が壊滅するほどのものは知識だけしかないけれど、小さいのだったらそれこそ数え切れないくらい何度も」


多分、体感だけで何となく震度がいくつか計れると思う。特に役に立ったことはない、かつて日本で暮らしていた人間のよくある特技だ。


けれどウィルはあっけに取られて、彼にしては珍しく、口をぽかんと開けていた。


「すごい……」


呆然とそう呟いた直後、ウィルは突然私の両手をぶわっと風で包んで、歓喜の声をあげた。


「すごいよ、ユレイア! 君は地震を知っている! ああ、回帰の竜よ感謝します! 彼女を僕の元に遣わせてくださってありがとう!」


突然つむじ風にぶんぶんと両手を振り回されて、私は「え? え?」と目を白黒させた。

いつもウィルは感情表現豊かだけど、今、目の前でくるくるとコマのように回りながら腕を祈りの形に組む彼の勢いは、流石にあまり見たことがない。


「地面が揺れて、生き延びられた人も居るんだね? 皆、僕みたいに死んでしまうんじゃないんだ! 世界が終わってしまう訳じゃない、そうなんだね?」

「そ、それは……まあ、運がよければ……」

「運が良ければ人が残る! ああ、よかった!」


その目に淡く涙すら浮かんでいるのが見えて、私は胸が痛んだ。

普段、あんなに気楽そうに、明るく過ごしているくせに、やっぱり怖かったんじゃないか。

そう──いくらやり直せるとはいえ、この細い肩にアウローラ王国の全てが乗っているんだ。恐くない訳がない。


あまりに風が強いので、くるりとダンスのように一回転してしまった私へ、ウィルは前のめりにで両手を広げてみせた。


「ありがとう、ユレイア! もしかしたら君は、それが理由でこの世界に呼ばれたのかも知れない! 知識豊かな妖精姫、この世界の誰も知らないことを知っている、神秘なる星の娘! 僕のレガリア!」


ふいに、このはしゃいでいる王子様が、とても悲しく思えてきて、自分で自分に戸惑った。

生まれた時から大きな負担を強いられて、誰も、自分ですらもそれを不思議だと思わない。

それは、前世で薄暗い台所に立ち、孤独に食事を作っていた私と、どう違うのだろう。


彼がこの国全てを引き受けて、何度も何度も、絶望すら許されずに進まなければいけない理由は、彼が王家に生まれたからでしかないのに。


「そんな……」


多大な感謝にどうすればいいかわからず、思わず私は目をそらす。

その時、ちょうど両脇を囲んでいた山肌が途切れ、私はまぶしさに目をまばたいた。

あたり一面、銀の鏡のごとく凪いだ水面が月光をはじき輝いている。

谷底の川を抜け、巨大な湖に出たのだ。

遮るものがなくなった空は怖いくらい広く、東の方だけほんのり明るかった。夜明け前の淡い紅色の雲が、指でこすったかのように長く伸びている。


「……大きな湖」


私の口元から、言葉と白い息がリボンのように流れた。吹き付ける風の温度が更に下がっている。

もしも竜の薬ドラコヴィータを飲んでいなければ、凍えてしまったに違いない。


「ああ、もう首都オーブから出て随分と北上したからね。ここは竜首湖だよ。工業地帯や穀倉地帯を流れる三本の川が集まった大型湖なんだ。あそこに灯りがついてるのが見える?」

「あそこ?」


朝靄に霞んだ湖畔の岸を見れば、確かにおぼろ月のように、ぼんやりと輝いている港があるのが分かった。

夜明け前のしんとした闇の中、あそこだけが既に目覚め、ひそやかに鼓動しているようだ。


「うん。あれが竜首湖の港街、ユグルム。絹、砂糖、塩、陶器、お茶、金属、小麦……。ありとあらゆる商品や資源は、一度ここに集まってから、首都オーブに送られるんだ」

「初めて見た」

「行きもここは通り過ぎたけど、ユレイアは寝ていたからね」


聞こえなかったふりをして、私は感心のため息をついた。

湖畔があまりに広大なので小さな港に見えるが、きっと大きな街なのだろう。


「夜明け前から明るいのね」

「うん。日の出と同時に出発する船が多いから。今はちょうど積み卸しの時間なんだ。首都オーブの次に発展している街だから、とても賑やかだよ。出来れば、食料とかここで補充したいな。僕の力で船を飛ばしすぎると、流石に不自然だからね」

「ウィルは追っ手、撒けたとおもう?」

「どうだろう。待ち伏せくらいはしていると思うけど。近頃のユグルムは第一王妃様が管理してるらしいから、よそよりは安全なはずだよ」

「最近? じゃあその前は誰の領地だったの?」

「僕」

「うわぁ……王太子様だぁ……」

「え、なんで引いてるの?」

「私が人魚の花をもらった時に大騒ぎしたくせに、何を純情ぶった顔をしてるのよ」

「それは失礼。生まれた時から王太子なもので」


キザったらしく肩をすくめるウィルに、私は苦笑した。

他の道をひとつも選べない生き方が辛くないのか聞きたかったけれど、なんだかはぐらかされそうで、私はすこしずらした聞き方をした。


「ねえ、ウィルは……本当に私のこと、竜のレガリアだって信じてくれているの?」


私の方は、まだ突然降って湧いた役割に戸惑って、受け入れられていないのだ。彼も、回帰の王としての役目に、同じように戸惑っていないか探りたかった。


けれど、ウィルは私が竜のレガリアだった事に関しては言いたいことが非常に多かったらしく「当然だよ」と形の良い眉をきりりと引き締めて、腰に手を当てた。


「ユレイア、気付いてなかっただろうけどね、昨日の昼間なんか物凄かったんだよ。物凄い数の妖精が飛び出してきて、空いっぱいに広がって、アウローラ王城の方へ向かって歌ってたんだから。『そなたこそ、竜のレガリアなり』って」

「あー……」

「うわ、やっぱり心当たりあるんだ」

「大広間で、神官達がそんな感じで……」

「神官! そう、神官もだった。小神殿を守ってる巡礼神官まで道路に出てきて、妖精と同じこと言って倒れるから、すごい騒ぎだったよ。それを聞いて、何だか僕にはわかったんだ。……妖精達が呼んでいるのは、君だって」


すごい騒ぎ、の範囲がどこまで広がっているのか考えたくもなくて、私はげっそりした。

むしろ、それを聞いていたウィルの状況の方が気になって、現実逃避めいて話をそらす。


「小神殿って……ウィル、ずっとどこに居たの?」

「ああ、首都オーブの周りをずーっとうろうろしてたよ。精霊から話を聞き終わって地下通路を戻ったら、途中から遮られちゃったんだ。それで、地面を通り抜けて地上に出たら、オーブのちょうど外側で、焦ったなぁ」

「一度出た家は、招かれなくちゃ入れないものね……。そうだ、私、まだ今までウィルが何していたか聞いてないじゃない! ね、早く教えて?」


話をそらしたな、という顔はしたものの、元々話したいことではあったらしい。

ウィルはひょいと肩をすくめて頷いて、今までのことをかいつまんで話してくれた。


首都オーブの中に入れなくって焦ったウィルだったけれど、精霊の番人から話を聞いたせいか、随分と力が強くなっていたことに気付いたそうだ。

妖精もはっきり数多く見られたし、風だって今まで以上に強く起こせる。お陰で、噂集めもやりやすくなった。


ウィルとしては、これは同盟者たるユレイアに知らせてあげなくてはと思ったらしいけれど、どんなに力が強まっても、無理に首都オーブには入れない。

いずれスペラード伯爵領に戻るだろうとは思っていたが、流石に連絡がないのは私が不安だろうと考えて、肩慣らしついでに王都街道で派手に風を起こしたり、馬車のカーテンをめくるなどの騒ぎを起こして、私をおびき寄せようと頑張っていたそうだ。

残念ながら私は伯爵屋敷に引きこもっていて、噂のひとつも届いていなかったので、意味はなかったのだが。


ところが、突然に妖精が騒ぎ出し、首都オーブ中の神官が倒れて私が竜のレガリアだと分かると、状況が変わった。

慌ただしく走り出す騎士達や貴族屋敷の遣いが、一斉に首都オーブに出たり入ったりしはじめたのだ。

ウィルはこのままでは永久に私が首都オーブから出られなくなると焦ったらしい。

あちこちを飛び回り、首都オーブぎりぎりの周辺に散らばっている騎士達の噂話を集めて、襲撃の情報をかき集めた。


一度、首都オーブから王都街道を飛び出してきた馬車を追いかけたけれど、そちらはイヴリンが身代わりになっていて空振り。

困り果てて、スペラード伯爵領まで行こうかと思っていたところに、銀の梟の妖精がやってきて、小さな関所のある運河まで連れてきてくれたらしい。

しばらく待っていると、私の乗っている小舟がやってきた上に襲われていたので、大慌てで波を起こして風を荒れさせ、何とか私に気付かれようと関所の向こうを飛び回っていたそうだ。

私としては脱出に必死で空の上なんか見ていなかったが、何とか波の高さには気付いて、ウィルを呼ぶことが出来た、という訳だ。


「……とまあ、そんな訳で、今に至るということです。偉大なる竜のレガリア様におかれましては、ご満足いただけましたか?」


芝居がかって頭を下げるので、私も合わせて胸に手を当てて、簡素なスカートをつまんでみせた。


「これはこれは、王太子様にそう呼んでいただけるなんて、えーと……身に余る名前が本物だったと錯覚してしまいそうです」


途端にウィルはあっさり普段通りに戻って、いやいやと顔の前で手を振って見せた。


「あの騒動と襲撃を見たら、ユレイアが竜のレガリアだってことは疑ってないよ。むしろ、僕が見えたり、前世を覚えていたり、妖精に命令できたり……」

「命令はできないの。お願いするだけ。あの子達はそういうのに縛られないから」

「あ、そうなの? とにかく、妖精に親しんでいたり、好かれたりも含めて、離れても君のこと考えずにいられない魅力とか色々……君は特別な力を持っているんだよ。むしろ、ようやくちゃんとした名前がついたなってほっとしてるくらい。そのせいで、王族に追いかけ回されて大変ではあるけど、レイモンドなんかに渡さないから安心してね」


予想はしていたとはいえ、すぐさま出てきた第一王子の名前に、私は思いっきり口をへの字に曲げた。


「やっぱり、襲撃してるのってレイモンド第一王子殿下なの……?」

「もちろん。スペラード伯爵家に君が戻ったら、この程度の騎士じゃ絶対に奪えないから。レイモンドも焦ってるな、って感じの配置だね」

「わかるの?」

「王宮の謀略に関しては任せてよ。運河で見たけど、弓の引き方の癖が近衛のやり方だったし。スペラードおよび名門騎士団は、三本同時に持って次々速射。近衛兵達は、見栄え重視で一本ずつ。神官達は、弓を引くことも祈りのひとつだから、天に向かって射る」

「あ、そうなんだ」

「あと、兵士の制服、頑張って庶民っぽく着崩してたけど、日焼けの跡が顎の下にあったし。普段、高い襟の服をきっちり著ている証拠だよね。襟の高さから、貴族の護衛騎士だなってわかる。それから、袖口の汚れが手首についてた。肌が普段から綺麗だから、服の汚れの方が逆についちゃったんだね。これで、頻繁に身綺麗にする、王族の近衛騎士だってわかる。あと、レイモンドの近衛は……」

「わかった、わかったウィルがすごいっていうのは分かった」


もうお腹いっぱいです、とばかりに両手を掲げれば、ウィルはむっとした顔で人差し指を立てた。


「あのね、あまり気楽な顔しないで欲しいな。ユレイアは実感していないみたいだけど、君に選ばれれば誰だって、歓喜の声と共に栄光を迎えられる回帰の王としての人生を約束されるんだ。その為なら、本人はもとより周囲の人間だって、死に物狂いで君を奪いにくるよ。君は、王族にとってはアウローラ王国をプレゼントしてくれる女神様だってことを、もっとちゃんと自覚しなくちゃ駄目だよ」

「そんなこと言われたって……」


どんなに追いかけ回しても既に相手は決まっているのだから、そんなことをされても無意味じゃないか。


「だって、回帰の王はウィルでしょ」


むしろ、わざわざそのご大層な「竜のレガリア」に嘘をつかせて王位についたら、苦しむのは結局自分だろう。わざわざ苦しむために必死になっているのかと思えば呆れの感情が湧いてくる。

ため息交じりにそう言った私に、ウィルは何故かぴたりと固まった。


「そ……そうだけど」

「何その顔」


いかめしい顔を作ろうとして失敗してにやけたみたいな、変な顔だ。

ウィルは顔を隠すようにして両手で頬を包み、だって、とつぶやき改めて照れた。


「いや……その、なんか、なんか嬉しくて……」

「なにそれ」

「わかんないかなぁ、ユレイアには」

「ウィルが急ににやけたこと以外は」

「あのね、ええと……これは僕だけの話じゃないんだよ? 王族に生まれたからには、皆、一度は夢見るんだよね。虹色に光り輝く竜のレガリアが、突然天から現れる、ってやつ。歌劇や絵画では定番の図柄なんだ。うやうやしく王冠をさしだして、そなたこそが回帰の王だって言ってくれる、そんな場面。ああいうのを小さい頃から見てるから、こう、憧れっていうか……」


私は、不満の意を表明してふんと鼻を鳴らした。


回帰の王なんて、地震を止めなくちゃいけないなんていう、とんでもない大仕事を押しつけられただけの損な役回りじゃないか。

自分で選んでもないのに、諦めることも許されなくて、その上何度死んだって、誰からも覚えてもらえないかも知れないのに。


「ごめんなさいね、回帰の王をありがたがらない、神秘の欠片もないような女が竜のレガリアで」

「あ、ユレイアもしかして拗ねてる?」

「うるさい。だいたい、私が何も知らない時から、堂々と回帰の王を名乗ってたじゃない」

「だって、状況的にそうとしか思えなかったし」

「それはそれは。私の指名はお役に立てませんでしたね」

「いや、本当はずっと不安だったってばー!」


拗ねないでって、と言いながら、ウィルは私の肩あたりをすかすかと叩く。

ぷいっと顔をそらして船縁の向こうを見れば、水平線の向こうで輝いていたはずの港街ユグルムは随分と近づいていた。

荒い櫛の歯のように無数の桟橋が湖に延び、多くの巨大な船がひしめきあっている。

あのお屋敷が浮いているみたいな船に比べたら、今乗っている小舟なんか掘っ立て小屋にも等しい。あまり近づいたら、大きな船の立てる波だけで転覆してしまいそうだ。


どこの桟橋に船をつければいいのかも分からず、私は首をかしげた。


「ショーン大叔父さん、どうするつもりだったんだろ……」

「港には、登録された船ごとに桟橋があるから、スペラード伯爵家管轄の桟橋に向かうのかな。街の性質上、この港はすっごく密貿易に厳しいから、ユレイアを変装させるつもりだったんじゃない?」

「えっ、この船、ショーン大叔父さんが勝手に持ってきたやつだから、登録なんてないと思う」

「盗品!? うそでしょ最悪だ! 全然別の案件で追っかけられて掴まるよ!?」

「えっ!? 早く言ってよ!」

「そっちこそ!」


飛び上がって顔を見合わせた私達は、大慌てで船倉に逆戻りし、ショーン大叔父さんをたたき起こしにかかった。

すっかり傷が癒えたらしいショーン大叔父さんは、狭い寝台から半分はみ出して大の字になり、高らかにいびきをかいている。


「ショーン大叔父さん、起きてください! 港です。港街ユグルムがもう目の前ですよ!」


わしわしと肩を揺すれば、ショーン大叔父さんは何度かうっとおしそうに顔をしかめ、寝返りを打った。

けれど、薄目で私のことを見て、船の天井を見上げると、急に勢いよく飛び起きて私の肩をがっしと掴み、叫んだ。


「ユレイア! な、何があった。私達は無事なんだな!? ここは、船か。あいつはどうした、あのテラとか言った神官はどうなった!」


そういえば説明の方法を何も考えていなかった。

私は一瞬目を泳がせたが、ショーン大叔父さんの真後ろで頭を抱えていたウィルが、やけくそのように、


「押し切ろう!」


と叫んだので、精一杯驚いたふりをした。


「ええっ! ショーン大叔父さん、覚えてないんですか? あんなに勇敢に戦って勝利していたじゃないですか!」

「えっ……いや、え……そうだったか……?」

「よし、いいよユレイア! 寝起きの混乱につけ込むんだ! このまま矢傷も船も全部うやむやにしちゃおう!」

「あの時のショーン大叔父さんはすごかったですよ。襲い来る矢をかいくぐって、一本も当たらないままテラを運河に放り投げて!」

「い、いや……一本くらい刺さっていたような……?」

「かすっただけですよ。傷なんかひとつもないじゃありませんか!」

「い、いや確かに……あれ? ない……な……?」

「矢が刺さる夢でも見ていたんじゃないですか? テラをやっつけた後、ここまで船を操ってしまったんですから、お疲れだったんですよ。船が安定したからと、甲板を私に任せて眠ってしまったんです。もう港町ユグルムは目の前で……」

「なんだって!?」


突然、ショーン大叔父さんがこぼれ落ちんばかりに目を見開いて叫んだので、私達は揃ってびくっと身を引いた。

ショーン大叔父さんは、大慌てでどたばたと走り出すと、縄ばしごを使って甲板に顔を出し、やっぱり大きな声で「なんてこった!」と叫んでいる。


「は、入っちゃ駄目だったんですか……?」

「ああ、もっと早くに支流に入る予定だったんだ。ユグルムを迂回して、もっと先の西方森林迷宮にスペラード伯爵家私有の港があるから、そこから馬車に乗り換えて……」

「ど、どうしよう。僕やっちゃった? もう絶対そのまま入ると思って……!」


私は無言で青ざめ、ウィルは盛大にうめき声を上げた。

どうやら私とウィルは、凄い速度が出る船で調子に乗って、うっかり道を間違えたらしい。


「い、今からでも戻れませんか?」

「いや、そんなことをしたら逆に目立つ。ここは隠し港には厳しいんだ、下手なことをしたら別件で捕らえられる」


どうしよう、どうしようとうろたえるウィルと私の前で、ショーン大叔父さんは額に手を当て、しばらく唸っていた。

けれど、深々とため息をつくと、げっそりした顔で振り返り「仕方ない」と重々しく告げる。


「今から私達は、密輸業者だ」


私、ショーン大叔父さんと居ると悪いことをどんどん覚える気がする。

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