第21話 闇の力を知る
発進した車はまた街中に入った。
ここにもなにか居そうだが、高速道路で行くことにする。
「浦和インターで乗ってくれ」
「了解! 高速ですね!」
スピードに乗って高速道路に乗る。
これでスムーズに行けるならそれに越したことはない。
見渡す限り何もいない。
この車のエンジン音だけが響き渡り軽快に景色が後ろに流れていく。
「魔物がいなくて良かったですね!」
「いや、油断はできない。今のところはいないが、どこから来るかわからないから警戒しておけよ?」
「はぁい」
気の抜けた返事をしながら車をとばす知友。
「おーい? こんなにとばして大丈夫なんすか?」
「だいじょぶだいじょぶー」
後ろからの不安の声を聞きとばして走る知友。
なんなら鼻歌を歌いながら運転している。
円鬼が静かなのを気にして声をかけようとする。
「円鬼は────」
「────前方に敵です!」
車のスピードを緩める。
よく見るとこちらの車線に広がって突っ込んでくる。
目を凝らすと、ダークホースだ。
闇を身にまとって走る馬の魔物で体当たりされると体の力と魔力を奪われるのだ。
車を止めて迎え撃つ。
「アレには極力触れないように!」
「了解っす!」
「りょう……っうっぷ」
振り返ると円鬼が口を抑えてしゃがんでいた。
「もしかして、車酔いか!?」
「うぅ。すみません……」
静かだと思ったら車酔いかよ。スピード出してたからなぁ。デコボコ大丈夫なのにな。
走行しているうちにダークホース三体が近付いてきた。刀を構える。
「俺がやる!」
刀を鞘に収めたまま居合の構えをとる。
魔力を刀に込めていく。
鞘から青い炎が溢れ出す。
「ふぅぅぅ。
渾身の踏み込みから放たれた居合は青い横一閃の斬撃を飛ばす。
迫って来ていたダークホースは胴を真っ二つにされて崩れ落ちた。
魔石を取り除き活動できないようにする。
「よし。進もう。だが、円鬼をどうするかな」
「だ、大丈夫ですわ。う、うっぷ」
「無理するな。前は大丈夫だっただろ?」
「は、はい。スピードが出るとなんでか酔ってしまうんですわ」
それが原因だとはっきりしているなら話は早い。
知友を見ると頷いていたからどうして欲しいのかはわかってくれたのだろう。
「じゃあ、酔いなんて起きないほどぶっとばしましょう!」
「違うだろ?」
知友がふざけるので睨むと「わかってますよぉ」と頬を膨らませた。
「申し訳ないですわ……」
円鬼は罰が悪そうに俯く。
人それぞれ得意不得意があるから仕方がないことだ。
円鬼は戦闘で活躍する為にきたんだからな。具合悪くなられたら困る。
「気にしなくてもいいさ。安全運転するだけだ」
極力笑顔でそう伝える。ここで暗くなっては可哀想だと思ったからだ。
「いいな? 知友?」
「わかりましたよぉ!」
口を尖らせると車をゆっくり発進させた。
「おそらく60キロくらいまでは大丈夫だと思う。前回はそのくらいで一般道を走っていたが、円鬼はなんともなかった」
「了解!」
そこからは一定の速度で走っていた。
「隊長。大丈夫みたいですわ! 有難う御座います」
「そうか。ならよかった」
「あーぁ。自分の魔法試したかったっすねぇ」
そう愚痴りだしたのは地雷だ。
「まだまだ活躍の場はあるぞ?」
「そうっすかね!?」
「あぁ。さっそく、空からお出ましだ」
車を止めて下りると上空を旋回する魔物が。
黒くてカラスのようなのだが、身体は二メートルほどあり、目が四つに口には牙が生えそろっていて強烈な見た目をしている。
「あれはマラスだな。あれは闇の波動のようなものを放ってくる。くらわないように気を付けるんだ。受ければしばらく動けなくなるぞ!」
「「「はっ!」」」
「ガァァァァ!」
早速闇の波動を連続して放ってきた。
「散開! タイミングをみて地雷が魔法で仕留めろ!」
「うっす!」
牽制として炎の斬撃を飛ばす。
こっちを嘲笑う様にヒラリと避けてガァガァとないて小バカにしている。
今度は急降下してきた。
迎え撃つ体勢に入る。
「来るぞ!」
魔法銃のレーザーが翼を掠めるが、そのまま突っ込んでくる。
俺が構えていると丁度刀の間合いを避けるように手前で旋回した。
それを追うように身体を回転させて追う。
その先には知友がいた。
「まずい! 避けろ!」
「えっ!?」
反応が遅れた知友に黒々とした波動が当たった。
「うっ!」
膝から崩れ落ちた知友。
こうなっては今すぐには動けない。
(くそっ! 俺の判断ミスだ。すぐに始末していれば……)
「くっそぉ! ライジングネット!」
手から放たれた雷のネットにマラスが捕らえられた。
「ライジングボルト!」
雷のネット内で雷が爆ぜた。
物凄い音を立ててマラスを消し炭にした。
「よくやった。すまない。俺のミスだ」
「違うっす! 自分の判断が遅かったからです! すみませんでした! 知友、ごめんっす!」
「ううん。いいよ」
俺が頭を下げると、首を振って地雷も頭を下げてきた。知友にも頭を下げている。すると知友は力が入らないながらもなんとか口だけ動かして答えた。
「乗るぞ! 近くで休もう。俺が運転する!」
後ろの長椅子に知友を寝かせその向かいに地雷と円鬼が座る。
────ブォォォォ
車は重低音を響かせて走り出した。
やはりこの道中、楽ではなさそうだ。
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