第9話 討伐隊合同訓練
討伐隊のメンバーが決まったとの報告を受け、集合場所の訓練場にやってきた。
そこにズラリと並ぶ面々。
みなギラギラとした目をしている。
自分達がやってやると意気込んでいるのが見て取れる。
「今日は集まってくれて感謝する。俺は今回リーダーをすることになった刃だ。刀剣部隊隊長と刀剣班長を兼任している。誰か不満がある者はいるか?」
すると手を挙げた者が一人。魔法銃部隊のようだ。
「不満があれば交代してくれるんですか?」
「検討する」
「ふーん。刀剣部隊ってこの前の隊長は使えなかったらしいじゃないっすかぁ? 今回は大丈夫なんですかぁ?」
話し方はどこかのヤンキーのようだが、言っていることはごもっともだろう。
「今から合同訓練を行うから見極めてくれればいいさ」
「了解っすぅ」
不満がないことの方が少ないだろう。
刀剣部隊の皆は俺が戦っている所を見ているから納得できる部分も多いかもしれないが。
「ではこれより合同訓練を行う! 敵はあの藁人形を想定とする!」
「「「はっ!」」」
広がって包囲網を展開する。ここまではみんないつもの訓練で行っているので手馴れている。配置も問題ない。
「攻撃開始!」
「アタイがいくよ!」
まずは速王が切り込んでいく。そして切り刻んでいく。そこに鎖那も遊撃し、金剛は控えて様子見だ。
サッと三人が引くと魔法部隊が遅れて雷を落とし火の玉が飛んでくる。
そこにレーザーのような魔法銃部隊からの一撃。
「魔法銃部隊はもう少し早く攻撃してください! 我々が引いたらすぐにです」
「なぁんだとぉ? 俺達はあのタイミングが最適だとおもったがぁ?」
鎖那が不満だったことを口にする。言っていることは間違ってはいない。シビアだとは思うが、そのシビアさが今回は必要かもしれない。
なんでタイムラグが起きたのかはわかる。これは一応生産部隊だからだ。刀剣班だとしても魔法銃に関して無知というわけではない。
「魔法銃の改善すべき点だとは思うが、あれは魔力を込めてから発射されるまで三秒ほどのタイムラグがあるんだ。だから少し遅れるんだ」
「なるほど。それは仕方がないですね」
俺が魔法銃に関しての欠点を話すと鎖那は納得してくれた。本当に話が分かる奴で助かる。
「どうすればいいと思う?」
「離脱するタイミングが分かればいいんですね?」
魔法銃部隊の者に視線を向けて問いかける。
「そうだわなぁ。合図を貰えりゃぁ、合わせるさなぁ」
「わかりました。では、我々が「せいっ」って言ったらそこからタイミングを合わせて三秒後に散開します」
鎖那がそう言うと魔法銃部隊員はコクリと頷いた。
「わぁったよ。そのタイミングでやってみようやぁ」
また配置に着いた。
そのタイミングで開始の合図を送る。
「開始!」
「次はボクが行きます!」
鎖那が飛び出して藁人形へと襲いかかる。素早い斬撃と立ち振る舞いで実際の牛鬼相手でも問題なさそうだ。
「せいっ!」
一、二、三のタイミングで散開し。
────ビィィィィィッ
魔法銃のレーザーが放たれる。
藁人形の反対側へと抜けていき致命傷を与えたことになる。そこに炎の玉と稲妻が追撃で放たれた。
終わった藁人形は無惨にもボロボロになっていた。これだけ動ければ大丈夫だろう。
「いい感じじゃないか!」
「はい! ありがとうございます!」
鎖那が敬礼をするのを見て魔法銃部隊の隊員がまた口を開いた。
「刀剣部隊がまともなのはわかったがよぉ。隊長がまともかはわからねぇよなぁ?」
「たしかにそうだな。では、藁人形を相手に俺の刀捌きを見てもらうか。それでいいか?」
「あぁ。いいぜぇ」
隊員がそういうので俺はもう一つ近くにあった藁人形の少し離れた所に佇む。
「ふぅぅぅぅ。はっ!」
発声のタイミングで体に炎の魔力を纏う。
俺の体は青い炎で包まれた。そして自分の刀、『
「ふっ!」
一、二、三、四、五、六、七、八。
刀を振るうが藁人形には届かない間合いだ。だが、刀から放たれた炎の斬撃が藁人形を切り刻み、仕舞いには消し炭にした。
これがこの体で今できる限界の斬撃だ。これで満足できなかったら俺は退くしかないな。そう思い魔法銃部隊員の顔を見ると、目を見開き口をあんぐりと開けて呆然としていた。
「どうだろうか? 少しは認めてくれるだろうか?」
「はっ! はいっ! 生意気言ってすみませんでしたぁ! 精一杯働かせて頂きますっ!」
直立になり敬礼で答えてくれた。
(なんだか、かなり恐縮してくれたみたいだな。まぁ、やりやすくなるならいいか)
「では、連携の確認をもう何パターンかしておこうか!」
「「「はい!」」」
これでこの面子の仲がよりいっそう深まったのであった。
合同練習が終わったあとは親睦会と称してお食事会を開いた。開いたところが食堂だったので酒は飲めず、談笑して終わったのであった。
ただ、意外だったのが魔法銃のヤンキーは天地を慕っていたことが判明し、親友だと言ったら余計に恐縮しだしたのは驚いた。
この討伐隊がなんとか上手く行きそうで少し胸をなでおろしたのであった。
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