第5話脅迫状は本物か

真優「冬樹さん、今回依頼があったのは、女優の美倉茉奈美(みくらさなみ)さんからです」。


冬樹「内容は?」。


真優「美倉さんのポストに、脅迫状が届いたそうです」。


冬樹「わかった」。「瞬は?」。


真優「別の捜査で所長と出払っています」。


冬樹「そうか、じゃあ一人で行ってくる」。「場所は?」。


真優「それが、マネージャーさんが話をしたいそうなんです」。


冬樹「マネージャーの連絡先は?」。


真優「これです。それとメールに脅迫状の写真が添付されていました」。


冬樹「今見れるか?」。


真優「はい、これです」。


(写真を見ると脅迫状には)。


「おマ絵をコロす いいカ 今度 テレビ ニ 出たら 間違い ナク コロス」

(新聞や雑誌の文字を切り抜いて貼られた文章が書かれていた)。


冬樹「それにしても古いやり方だな」。


真優「そうですね。足がつかないようにようにしたんでしょうか?」。


冬樹「あぁ、間違いない。俺はそのマネージャーに会って話を聞いてくる」。


真優「わかりました。いってらっしゃい」。


(冬樹はマネージャーと連絡を取り、喫茶店で待ち合わせた)。


冬樹「はじめまして、白雪冬樹と申します」。(名刺を渡す)。


マネージャー「はじめまして、茉奈美のマネージャーをしています、

岸田正ともうします」。(名刺を差し出される)。


岸田「今回の脅迫状の事は内密に捜査していただけないでしょうか?」。


冬樹「というと?」。


岸田「はい、彼女は今、うちの事務所の看板女優です。ファンの多くから脅迫めいた手紙やメール、インスタやX(Twitter)にもそれらしい書き込みはありました」。


冬樹「人気女優の宿命というか、妬みなんかが表れてもおかしくない」。

「で、その脅迫状を見せて頂けませんか?」。


岸田「それが、彼女が破って捨ててしまったんです」。

「なので現物はありません」。


冬樹「なるほど、だから写真に撮っておいた。そういうことですか」。


岸田「はい、そうです。いつものいたずらよって」。


冬樹「ちなみに、その手紙には切手は貼られていましたか?」。


岸田「いいぇ、ありませんでした」。「なので直接彼女のマンションのポストに投函されたんだと思います」。


冬樹「そうですか、わかりました。マンションの住所を教えて頂けますか?」。


岸田「こちらが住所と彼女の携帯番号です。仕事用なのでいつかけてもらってもかまいません。彼女が出るかどうかはわかりませんが」。


冬樹「わかりました。調査を開始したいと思います」。


岸田「どうか、よろしくお願いします」。


(岸田と別れたあと、彼女のマンションに向かった)。

(さすがに大女優の住むマンションということだけあって立派だ)。

(セキュリティーも万全だな)。


冬樹「あたりを散策してみるか」。

(マンションの周辺を重点的に調べ、盗撮や、彼女を連れ去ろうとするなら人通りの

少なくなるこの辺りがベストかな)。

(冬樹は満遍なく調べていった)。


冬樹「さて、TV局に向かおう」。

(今日はドラマの撮影でF局にいると、マネージャーの岸田が言っていた)。



(TV局に到着、受付にて)。


冬樹「あのー、すみません。美倉茉奈美の控室はどちらですか?」。


受付嬢「どちら様でいらっしゃいますか?」。


冬樹「申し遅れました。私しこういうものです」。

(名刺を差し出す)。

冬樹「彼女に頼まれて、やって参りました」。


受付嬢「わかりました。(探偵…)」。

「今、確認いたしますので、お待ちください」。


受付嬢「美倉茉奈美様の控室は、5階でエレベーターにあがっていただいて、

左に曲がった後、真っ直ぐ進むと控室が並んでおります」。


冬樹「ありがとう」。

(控室に向かおう)。


祥子「信兄ちゃん」。


(彼女は俺の姪で木下祥奈、アイドル目指して活動中とは言ったいたが、

まさか、こんなところで出会うとは)。


祥子「こんなところでどうしたの?」。


冬樹「実は今、探偵をしていて、(名刺を渡す)。」


祥子「へー、何で偽名なの?」。


冬樹「何かあった時、自分に関係ある人が巻き込まれないようにするためだよ」。


祥子「なるほどね」。


冬樹「お前は今日、ここに何しにきたんだ?」。


祥子「ドラマの撮影で、でもちょっとした出番しかなくて、でもセリフもあるんだよ」。


冬樹「前に、ネット配信のCMの仕事や、バラエティー番組の後ろに座ってたこともあったな。姉から連絡あったから見てたよ」。


祥子「でも、もうこの仕事辞めようと思ってるんだ」。


冬樹「何で?」。


祥子「私、才能ないし、好きな人ができたの。だから結婚しようと思っていて」。


冬樹「それも選択肢のひとつだな」。「後悔はしてないか?」。


祥子「ううん、全然。楽しいけど、彼といる時間のほうが大切だから…」。


祥子「あっ、でも、力抜いたりしないから」。


冬樹「わかってるよ。じゃあ、時間ないから」。「またな」。


祥子「お仕事がんばってね」。




冬樹「ここか」。(コンコン)。


岸田「はい」。(ガチャ)。

「白雪さん、お一人ですか?」。


冬樹「ええ、岸田さんだけですか?」。


岸田「いえ、彼女は今、トイレに行っています」。


冬樹「付いていなくて大丈夫ですか?」。


岸田「TV局にはそう簡単に入ることはできません」。

「逆にここにいるほうが安全といえるでしょう」。


冬樹「ついさっき、彼女のマンション周辺を調べてきました」。


岸田「何かわかりましたか?」。


冬樹「セキュリティーも万全で周辺も当たりましたが…」。

「ところで岸田さん、あの手紙は彼女が持って来たのですか?」。


岸田「いえ、私が彼女を迎えに行った時にポストに入っていたものを

持ってきて、彼女に見せました」。


冬樹「そうですか」。「で、彼女は捨ててしまったと」。


岸田「はい、いつものことだから心配ないと」。


冬樹「あなたは証拠として、スマホで撮っておいた」。


岸田「彼女のことが心配なんです。何かあってからでは遅い」。


岸田「冬樹さん、このことは内密にという事でおねがいしたんですが」。


冬樹「わかっています」。「でも、一刻も解決を望むのなら直接会って確かめるほうが、より、確実かと」。


岸田「わかりました。そこまでおっしゃるんでしたら…」。



(ガチャ)。


茉奈美「あら、この方は?」。


冬樹「初めまして」。(名刺を差し出す)。


茉奈美「ふーん、さしずめ、岸田さんが心配になって依頼したってとこかしら」。


冬樹「その通りです。彼はあなたのことを凄く心配していらっしゃる」。

「ですから、何か起こる前に防ぎたいのです」。

「協力していただけますか?」。


茉奈美「別に構わないど。邪魔だけはしないでね、探偵さん」。


冬樹「はい、では2,3質問したいのですが、よろしいですか?」。

「まず、脅迫状を見たのはどこですか?」。


茉奈美「控室よ、別のTV局だけど」。


冬樹「では、その脅迫状を持って来たのは誰ですか?」。


茉奈美「彼よ」。(岸田さんを指指した)。


冬樹「では。最後の質問です。その脅迫状は封筒に入っていましたか?」。


茉奈美「ええ、白い封筒に入っていたわ」。


冬樹「わかりました。ありがとうございます」。

「それでは失礼いたします」。

「岸田さん、何かあったら連絡ください」。


岸田「ええ、わかりました」。

「そろそろ時間なのでこちらも部屋を出ます」。


冬樹「では、途中までご一緒に」。


(二人と別れたあと、事務所に戻った)。




真優「冬樹さん、帰りですか」。


冬樹「ああ」。


真優「コーヒー飲みます?」。


冬樹「入れてくれるかな?」。「もちろん、ブラックで」。


真優「ところで、事件は解決したんですか?」。


冬樹「ああ、あれはマネージャーが仕組んだ事だよ」。


真優「そうなんですか?」。


冬樹「最初に脅迫状がメールで送られてきた事で、彼がやった事だとわかった」。


真優「でも、なんでうちに依頼しにきたんです?」。


冬樹「それは、あの脅迫状が本物だと思わせるためさ」。

「これから先は、俺の推測だが、彼は彼女の事が好きなんだと思う」。

「だから、危険な芸能界での仕事を辞めてもらいたかったんだと思う」。


真優「だったら、ほかの脅迫文や、書き込みもあの人がやったんですか?」。


冬樹「いや、あれはアンチファンの人達からの本当の嫌がらせだ」。

「それを利用して今回の計画を思いついた」。

「探偵が調査してるとなると、彼女も少しは警戒するだろう」。

「ただ、彼がいるかぎる心配ないさ」。


真優「愛情表現のひとつですか?」。


冬樹「そうかもしれん」。


真優「私はもっとストレートに来て欲しいです」。


冬樹「君の場合、自分からアタックするタイプじゃないのかな?」。


真優「確かに」。


冬樹「まぁ、なんにせよ、解決だ」。(コーヒーが美味い)。






               調査報告書


今回の依頼は、彼女を思うばかりに行き過ぎた行動だと思うが、

彼が、彼女を愛してる気持ちは本物だろう。

二人が幸せに暮らして行く選択肢が見つかるといいんだが。

女優である彼女も、素である彼女も両方好きな彼にとって、どちらか選ぶのは

難しいかもしれな。


(自分も夏樹とやり直せたら…)。


所長と瞬はある容疑者を追って新潟へ

三日間徹夜だったらしい


俺は別の依頼で出払ってたおかげでひどい目に遭わずに済んだ

瞬には悪いが今日は早く帰って寝るとしよう


     

                                   完  

















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る