籠城

 どれくらいは知っていたか。

 何時間も走っていたようにそう感じる。


「……本当に、こっちが外なの?」


 そう呟いたその時、目の前に光が見えた。


 ――ッ! 出口っ!


 俺は、左腕を抑えて、外へと飛び出す。


「外だ~」

「ゴブゴ―」


 外へ飛び出すと、そこは開けた場所だった。


 鉱山として使っていた時は、このあたりは殺風景な土地だったんだろうが、時間が経つことによって草木が生えていた。

 

 少し遠くに目をやると、そこには小さな小屋があり、それ以外は特に建物と言ったものは見えない。


「……とりあえずこっち」

「ゴブゴ」


 俺は、キプロスを連れて、鉱夫たちが使っていたであろう小屋へと駆け込む。


「ゴブゴ~?」

「ん、別に隠れるために来たんじゃない」


 そう言って俺は、中にあるものを物色していく。


「……ゴブ?」

「簡単に言えば、迎え撃つ……いっ」


 そう言って肩を抑える。


「ゴブゴブゴ?」

「ん、大丈夫……ただ痛むだけだから」


 そう言うが、ヤバイ。たぶん骨をやられてる気がする。

 さっきまでずっと動いてたからアドレナリンが出てたんだろうけど、少し落ち着いたらこれだ。


「……取り合えず準備を済ませないと」


 そう言って小屋を物色していくと、いくつかの武器を見つけた。


「……あれ? これって弓に……これは斧?」


 そう言って持ってみると、手になじむ。

 まるで俺に合わせて作られたかのような……と、そこでふと森の中で動く影が見えた。

 ゴブリンではない。もっと大きな人影だ。


「……ああ、そう言う事」


 俺はそう言うと、弓を手に取り小屋の扉付近に腰掛ける。


「……最悪何とかなりそうだけど……ここは俺達だけで切り抜けて見ろってことかな」


 そう言うと、俺はキプロスにもう一つあった弓を投げ渡した。


「弓の打ち方って知ってる?」

「ゴブ? ……ゴブっ!」

「そう、だったら用意して。多分もうすぐあいつらが……出てきた」


 壁に空いた穴から、坑道の出口を監視していた俺はそう短く鋭い声を上げた。

 

「全部で七か……いけるかな?」

「ゴブゥ……」


 ゴブリンたちは、しゃがみ込んで何かをしている。


「……たぶん足跡の確認をしてるんだろうね。だとしたら……ここもバレるのは時間の問題か」

「ゴブゥ……」

「まあ、戦うっていう想定はしてるけどさ……できればやっぱり戦いたくはないよ。腕痛いし」


 そう言ってじっと見つめていると、ゴブリンたちはこちらに向かって歩き始めた。


 戦いを回避することはもう出来なさそうだ。


 そう悟った俺は、弓に矢をつがえ……痛みに顔を歪ませて引き絞った。

 

「さあ……今までのお返しをさせて貰うよ」






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読んでくれてありがとうなのです!

作者からの少しの宣伝なのです。

新作を始めましたのですよ!


タイトルは『転生したら幽霊船だったので、この世のお宝すべて手に入れてやろうと思います。』

https://kakuyomu.jp/works/16817330665162212961


……知ってます? 船って彼女なのですよ。

是非読んで……コメントいただけたら最高に嬉しいのです!


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悪役の息子に転生してしまったっぽいですが、俺が死ななきゃ物語が始まらないのでは? ~まあ、死ぬ気ないのでハーレム作って別の物語を始めようと思います~ 青薔薇の魔女 @aomazyosama

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